2010年5月30日日曜日

新しい顕微鏡を試す・10[総括]

Leica M320F 12D、ライカが満を持して発売しただけあって、今の歯科用顕微鏡市場をかき回す存在になる事は確実です。まず見た目のカッコ良さ、そしてブランドイメージで買う先生は多いのではないかと思います。

また超明るいツインLEDや内蔵HDカメラは、ケーブルレスのすっきりとしたデザインと相まって先進性を大きくアピールしています。

私は撮影の関係でハロゲン球を最大輝度で使うことが多いのですが、そうすると早いと一ヶ月で球切れしてしまいます。LEDの寿命が60,000時間というのはうらやまし話です。

レンズ性能は言うまでもなく文句なし、しかもアポクロマートになりました。

伝統の前面グリップの良好な操作感は現存するどの顕微鏡をも寄せ付けません。これからの顕微鏡のベンチマークが誕生したと言っても良いかも知れません。

しかししかし、それだけに弱点も目立ってしまいます。ざっと挙げますと、
  • 支柱部の回転が悪く、出し入れが不便
  • フォーカスリングの滅菌ができなく、輪ゴムで対応するしかない
  • 撮像範囲が狭く、記録には気を使う
  • HDと言うわりに、カメラ性能が貧弱
特に撮像範囲の狭さはこれから患者さんと情報共有をしようとうする歯科医院では役不足、早急な改善を望みたいものです。

本機のカメラはハイビジョンではなく、HDと表示されています。HDとはHeigh Definition、つまり高画質という意味です。どの程度高画質ならそう名乗れるのかは知りませんが、ハイビジョンの時代においてはもの足りない存在です。SDと呼ばれる640×480に対し左右に40ずつ伸ばしただけ、これをHDと呼ぶのもどうかと思います。

720×480というサイズはよくDVDに用いられてきたサイズで、日米のNTSCと欧州のPALの両者に対応しやすいという利点があったのだそうです。そういう意味で採用されたのなら、ちょっと時代遅れという感が否めません。

しかし総じて秀逸、CarlZeissもうかうかしていられません。新製品ですから、これから改良もどんどん進む事でしょう。期待してます!

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さて、今回カタログやメーカーの説明だけでは解らない、重箱の隅をつっつくようなマニアックな記事を書いてしまいました。もちろんそれにはワケがあります。

私もそうでしたが、初めて顕微鏡を導入するにはそこそこの覚悟が必要です。数百万円の投資、経営的に大きなリスクが伴います。せっかく買ったのに、オブジェになっている事もけっこうある、つまり使いこなせない先生が少なからずおられるという事です(そういう方が「ルーペの方が便利だしそれで充分だ」とおっしゃる傾向にあるのは誠に残念ですが)。それは無駄なことです。

私の所は異なる種類の3台の顕微鏡が稼動しており、設置や操作には一通り慣れているつもり、今回お借りしたM320もすぐに使えるだろうと思っていました。

ところが実際に持ってきてもらうと、設置場所・視度調整・モニターの接続などに思いの外てこずり、当初充分な検証ができませんでした。

実は顕微鏡を借りるのは無料ではありません。数万円の試用・設置料がかかる事が多いのです(そのまま購入すれば試用・設置料はかかりません)。また試用期間は充分とは言えず、設置で迷っているだけで期間が過ぎてしまいます。もちろん初めて導入する先生に、最初から使いこなせるはずはありません。評価までするにはあまりに遠いのです。まして、都市部以外の先生には実機に触れる機会は限られています。

またM320は対物レンズが200mmと250mmの二種類が用意されています。購入をご検討の先生は見え方や使用感に注意して選択する必要があります。

「あれこれ迷って無駄な時間を過ごさずに、できるだけじっくり患者さんと向き合ってほしい、そのためにも細かい情報まで発信したい」というのが今回の掲載の趣旨です。安い買物ではありませんので、充分検討していただきたいのです。オブジェにならなければ、一生使い続ける相棒なのですから。ご購入を検討なさっている先生の参考になれば幸です。

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