2014年8月28日木曜日

インプラント周囲炎はなぜおきる?

診療後は週末に行われる鹿児島での研修会の準備でバタバタしておりますが、ちょっとコレだけは今書いておきたい、インプラント周囲炎が多すぎると。





私たちの所は自由診療専門ですので、初診でいらっしゃる方の数は健康保険併用の時代からは少なくなり、またいらっしゃる方の目的(主訴)はいわゆる難しいムシ歯の治療が主体になっていました。

ところがここ数ヶ月、急にインプラント周囲炎の相談が増えてきました。初診の件数が少ない私たちの所でこのようになっているという事は、一般の診療所さんではもっと多いことでしょう。

インプラント周囲炎が増えているという話はもちろんアチコチで聞く話です。学会や勉強会でもその話題が頻繁にあがります。しかし個人的にはあまり実感がありませんでした。が、、、ついに私たちの所でも。。。

患者さんに経緯を訊いてみると、やはりメンテナンス(歯ブラシ)の話をまったく聞いてない、だから歯ブラシの練習なんてしていません。また歯周病の知識がまったくなく、もちろん定期検診もありません。これではインプラント周囲炎は増える一方です。

歯が無くなったのには原因があります。原因が解決していない所でインプラント治療をやってもうまく行きません。だから私たちは一番最初にその原因を除去する方法を患者さんといっしょになって考えます。そのために、スタッフは全員が歯科衛生士です。

日本で施術されているインプラントはそのほとんどが保健医療機関でのものだと思いますが、もしそこの先生が健康保険でできる範囲内のメンテナンスでインプラントを考えているとしたら、インプラント周囲炎を防ぐ事は難しいかもしれません。赤字を覚悟で、またはインプラント料金に上乗せしてでもメンテナンスに時間とコストをかけなくてはなりません。

またいわゆる激安インプラントを謳っている専門の診療所さんはどうなのでしょう。説明やメンテナンスのコストはどこから出ているのでしょう?

あまりこのような事は書きたくなかったのですが、患者さんのガッカリした顔を見て説明するのはたいへん辛いものです。しかし患者さんにも責任があり、治療を医者任せではいけません。原因は自分が造ってしまったのですから。

厳しい話かもしれませんが、病気や健康について勉強し、再発を防ぐのも患者さんの義務だし、歯科医師はそれをお伝えする立場にあります。ですから耳をかさない患者さんには、残念ですが積極的な治療は控えるような姿勢が必要です。でなければ、マスコミに金儲けのためにインプラント治療をしていると言われてもしかたがないのではないでしょうか。健康保険制度が良い悪いではなく、きちんとした健康文化を造ってこなかったツケが廻って来ているように思います。

解りきっている事をもっと大事にしてほしいものです。


【関連サイト】

2014年8月19日火曜日

歯科医師は内向的すぎるのではないか!?

こちらからの続きです。

Act or Die !? in Tokyo では大阪とはコンセプトを替え、最近私が特に強く感じている事を前提でお話させていただきました。

詳しくは以下をご覧いただきたいのですが、これは当日会場で配布した資料の一部で、前日に書き上げたものです。



内容には一部裏付けがない部分があり公開はどうかと思ったのですが、やはりすべての同業者に考えてもらいたい事なのでアップしました。

ここでいう「内向的」とは個人の性格の事ではなく、「業界内向き」という意味です。

とにかく歯科医師は内輪で群れるのが好きだ。その中での自慢大会もけっこうだが、そればかりではますます生活者から離れて行ってしまうだろうという危機感があります。だからある程度治療内容の公開はやるべきだと考えています。YouTubeで症例を公開しているのは、そういう思いからも来ています。

ここで言う識者とは先頃某大学を退官された先生なのですが、政治的に強い繋がりを持っていた方だけに間違いない話ではないかと思います。しかし先の「裏付けが無い」とはこの部分ですので、信じる・信じないは各自の判断にお任せいたします。

歯医者の世界にはたいへん多くの学会があり、それとはまた別に多くの研修会もあります。私はそれを受ける立場にも、行う立場にもなります。これらは一般的に話もお金も歯医者の世界だけで動いており、患者さんに知識や技術が効率的に還元されているとはとても思えません。

そもそも健康保険制度が、研修会で行う高度(!?)な治療についてくる事はありえません。その「高度」というのも、諸外国では一般的な事ばかりなのですから、まずその事を生活者に周知させなくてはなりません。でなくては世の中の優先順位は金融や経済ばかりで、健康や環境は忘れ去られた存在に成り下がったままです。

「そんな事はない」と思った方こそ考えていただきたい、あなたも「健康にはなりたいが、今有る何かを犠牲にしてまでも健康にはなりたくはない」という人なのではありませんか?

歯科医師がこれからとるべき行動は、外向きのベクトルではないか。歯科医師からお金を貰うのは上手だが、患者さんからお金を貰うのは苦手、、、価値を伝える力がないから評価が低いのではないでしょうか。



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平成26年8月8日 日本酒歯科医師会生涯研修
顕微鏡が明らかにした現実に応える

東京都中央区開業 吉田 格

昔から思っていた事だが、最近さらに強く感じる事がある。「歯科医師は歯科界という狭い範囲だけで活動しすぎていないか」と。どういう事か例を挙げる。

とある講演会で勇気ある質問者がおられた。「たいへんきれいな症例写真でしたが、それは患者さんから治療費をいただいたものでしょうか?」、答えは歯切れの悪いものであった。後で訊けば患者さんからはほとんどお金はいただかず、症例発表のためにやり直しや頻繁な写真撮影をさせてもらいたい旨お願いしたものという。

私はそのような「症例造りのための症例」を必ずしも否定する者ではない。開業医にはある程度経済的な余裕は必要だが、大学などでは普通に行われている事ではある。なにより理想像やチャンピョンケースを掲げる事で、歯科界全体のレベルアップを図る事は重要だ。

しかしそこに患者さんは、いるようでいない。治療の意味や価値観は患者さんには共有されていない、だから次に繋がらない。喜んでいるのは歯医者と業者だけ、お金も歯科界の中だけで動いている。これで良いのだろうか。

もう一つ、いわゆる低医療費政策に苦言を呈しない歯科医師はほとんどいないが、それに対し学会などはいったい何をしてきたのか。外に発信せず内輪の自慢大会に終止していなかったか、国にきちんと要望を出してきてたのか。

識者に訊けば、チャンスは80年代初頭にあったという。しかし医科に比べ歯科はまったく消極的で、徹底的にアピールし予算をとり続けてきた医科とは対照的だったらしい。歯科はあまりに内向きすぎた。しかしその医科も今は非常に厳しい状況にある。歯科はあの時やっていたとしても結果は変わらなかったのか、そうとも思えない。

さて以上の二例によれば、日本の歯科界は自己満足的で内向的だと言われてもしかたがない。外に発信する力が無ければ、歯科界に必要な資金が運び込まれる事はないと考えるが、いかがだろう。

今歯科医師がとるべき行動は、外向きのベクトルではないか。そんな思いで新たなビジネスモデルを自分なりに構築してきた。それは顕微鏡が明らかにした現実を、患者や社会にも共有して行こうとするものでもある。そして本日供覧いただく症例は、その過程の一部である。目を奪われるような美しいものはないが、私の一挙手一投足を記録した、やり直しや隠し事のないリアルな日常である。

もちろんその路はいまだ険しく問題点も多い。しかし一つ手にできたことがあるとすれば、それは私が手がけるほとんどの治療はその意味や有効性を患者さんにご理解いただき、それに相応しい対価をいただけるようになったという事だろうか。 

さて、歯科界は行動するのか・死を選ぶのか、もはや決して大げさな話ではないのかもしれない。私がとった行動が吉か凶かはまだわからないが、皆様には一つの方法論として今日の話を参考にしていただき、いつの日かこの話を聴けて良かったと思い出していただけるよう、私も努力を惜しまない。

Act or Die !? in Tokyo をやりました


ちょっと遅くなってしまいました。既報のとおり、8月8日(金)に「Act or Die !? in Tokyo. 顕微鏡が明らかにした現実に応える」と題した講演会を行いました。

当日は予定を上回る54名の方にご参加いただき、その後の懇親会も含めて盛会となりました。皆様たいへんありがとうございました。(懇親会の出席率が異常に高い!)



本会は4月20日に行った日本臨床口腔外科医会での講演会を元ネタに構成するという企画でしたが、結局内容は大幅な変更…と言うよりほとんど造り直しをしました。

実は事前に参加者名簿を見せてもらったところ、顕微鏡のヘビーユザーがかなり多い事がわかり、ちょっとこのままではマズイかなという気がしていました。

それに対象者は口腔外科医ではなく一般開業医かその勤務医。またよくよく考えれば、元々5時間半あったプレゼンを2時間に削れるはずもありません。

という事で意を決してすべて造り直し!ついでにハイビジョンサイズにして、それ用のプロジェクターまで買ってしまいました。写真を見てお解りのように、それが功を奏しちょっと今までの講演会とは違う雰囲気です。

どういう事かと言うと、まずハイビジョンサイズですから、当然横長の16:9。しかも今回は特別に120インチという大きなスクリーンを用意してもらいました。これは横幅が2660mmもあるのに、投影高は1500mmしかありません。これを天井高3mの部屋に設置したので、後ろの席の方も無理なく画面の下まで観る事ができるようになったと言う訳です。

実は定員以上の参加希望があったため部屋の変更をしたのですが、その部屋は天井高が2.5m。会場下見の時にそこで試写すると画面下が見えない事が解り、さらに部屋の変更をし運良く天井高3mの部屋を借りられたのです。天井高は大切で、わずか50cmの差は大きいのです!


また会場側の配慮で部屋の蛍光灯を外してもらい、非常に良いライティングが可能となりました。こういう施設って、なかなかないのです。

さて肝心な講演内容ですが、臨床口腔外科医会の時から症例を替え、少しアドバンスな部分も加えてみました。半導体レーザーを併用した極端な歯肉縁下の形成〜印象(型取り)や、バーチカルアプローチのサイナスリフトで粘膜を穿孔してしまった場合のリカバリーなどはかなり注目してみていただけたと聞いています。

しかし今回の講演は、単なる症例提示ではありません。皆さんにどうしても考えていただきたい事があり、それとともにお話したものです。次にその事について書いてみましょう。

2014年8月18日月曜日

夏期休診


今週はちょっと遅い夏休みをいただいております。次回の診療は8月25日(月)9時より、平常通りの診療となります。緊急時の連絡はinfo@y-dc.orgまでお願いいたします。

各地で悪天候が続いておりますが、皆様気をつけてお過ごしください。

2014年8月3日日曜日

オープンセミナーvol.56 をやりました




オープンセミナー vol.56「本当のインプラント授業を受けてみよう!」を開催しました。参加者の方々には学生さながら資料を一項目ずつお読みいただいて、緊張の時間ではなかったかと思います。ありがとうございました!