2009年10月26日月曜日

出張手術@仙台

インプラント手術のため、仙台近郊まで出張してきました。



佐藤歯科医院の佐藤真奈美先生はよく海外の学会などでお会いする方なのですが、実は母校の一年先輩。学生時代には話しをした事はなかったのですが、ここ4年くらいは国内の学会や勉強会などでもお世話になっています。

そんな先生ですがインプラント外科はちょっとまだという事なので、お手伝いをしています。先生は3年ほど前から当時の日本橋の診療室にスタッフを連れて外科手術の見学に来られ、吉田歯科診療室独自の手術システムを自身の医院に応用しています。

実は今行っているインプラントセミナー「診療室を手術室に変えよう 1~3」は、佐藤先生とディスカッションしている時のアイディアがかなり入っています。その医院の機械配置や設備・スタッフの能力は様々ですので、それに合わせたシステムの構築が必要です。私も実際に他の医院で応用する事で、多くの事を学ぶ事ができました。佐藤先生は実に忠実に私のシステムを取り入れ、おかげで私も安心して手術に取り組む事ができるようになりました。

この日は上顎の狭い顎の骨に、骨を拡張しながらインプラントを3本埋入するという、最近あまり私が出会わなかったタイプの患者さんの手術がメイン、そのほか二次手術などを用意していただきました。

出張手術と言えばかっこよく聞こえるかもしれませんが、事前の打合せや器具の準備〜搬入〜後片付けはとってもたいへんです。近隣に良いCT撮影病院があるため条件は整っているのですが、顔を会わせた事がない患者さんの手術はやはり気を使います。

しかしNLPマスタープラクティッショナーでもある佐藤先生のマネージメント力はすばらしく、スタッフの皆さんの事前準備がすばらしく、患者さんも安心しておいでいただけます。そのためいつもスムースに手術を進める事ができるのはありがたい話しです。

東京とはちょっと違い、規模の大きな歯の欠損形態の方が多く、いつもたいへん勉強になります。このような連携をすることで臨床の幅が広がる事をたいへんありがたく思っています。佐藤歯科医院の皆様、またよろしくお願いいたします。

2009年10月18日日曜日

国民医療会議

長妻厚労大臣は「国民医療会議(仮称)」を設置し、政治主導で医療改革を進めるという。


私は今までの厚労省の方針には全く賛成できないために期待は大きいのですが、はたしてこの会議に歯科関係や健康教育に関する話しはどれほど盛り込まれるのでしょう?

おそらくこれらの会議で論議されるのは医師不足や高齢者医療関係、誤解を恐れずに言えば準備不足からくる目先の問題の解決でしょう。長い目で見た健康を議論する事はあっても、実行にはほど遠い感があります。それ以前に、いわゆる有識者が歯科治療や健康教育の効果に理解があるかどうかです。

健康日本21が提唱されたとき、私には淡い期待があったのですが、今やそれどころではありません。医療には緊急の課題が山積みで、歯など忘れられた存在になりそうです。

だから!です、今必要なのは予防。「悪くなっても治してもらえる」という発想は捨て、自分で自分を守る方法を誰もが知らねばなりません。

私達はそのような情報をこれからも発信して行こうと思います。

オープンセミナー Vol.34

10月17日(土)、予定通りオープンセミナーを行いました。雰囲気はいつもと同じなので、ここではこの日使ったちょっと変った資料をお見せいたしましょう。


これは何かと言うと、Google Analyticsと言うウェブサービスの画面で、うちのホームページのアクセス状況を解析した結果です。

このグラフを見ると、9月30日だけアクセスがいきなり増えている事がわかります。実はこれ、フジテレビ「得ダネ」に顕微鏡歯科が紹介された日なのです。

また「検索キーワード」を調べてみると、この日に限らず「根管治療」がなぜか上位に来ています。

これはとても不思議な話しで、正直申しましてウチのホームページの根管治療のページはまだぜんぜん未完成です。それなのにアクセス数や問い合せが多いのはなぜなのでしょう?同じような事がコンポジットレジンのページにも言えます。すみません、これもまだぜんぜんでして。。。

一方インプラントのページ、これもまったくの未完成でアクセス数が少ない、これはまぁ納得行くわけです。

で考えたのですが、おそらくインプラントというキーワードで検索エンジン対策をしているホームページが極端に多いのだろう、一方根管治療やコンポジットレジンはまだまだ少ない、ある意味軽視されているのだろうなと思うのです。

歯科は今、説明がしやすくお金になりやすいインプラントにフォーカスした医院がたいへん増えています。根管治療は地味で説明がしにくく、まともにやれば(世界標準でやれば)絶対に赤字になります。大学教育も旧国立系が率先して縮小しているような状況では、まじめに考える先生が少なくなるのも当然でしょう。だからウチのような未完成ホームページでもヒットするのだと思います。

しかしGoogle Analytics の結果を見る限りでは、根管治療の潜在需要はものすごい多いと思うのです。いかがでしょう?

で、この日は「そんなバカな!?根管治療(根っこの治療)」と題して、日本が世界から最も遅れている・行政が軽視している根管治療にスポットを当てたお話をしました。

木曜日のインプラントセミナーの直後だったので準備がたいへんでしたが、苦労の甲斐あっていろいろ資料をまとめる事ができました。できるだけ早く根管治療のページも整備したいと思います。

なお次回のオープンセミナーは11月28日、土曜診療の後の17時30分から、テーマは「歯周病とインプラント」です。お楽しみに!


インプラントセミナー 2回目



9月17日に引き続いて、インプラントセミナーの2回目です。この日は全員に手術着と手袋を着用していただき、実際の使用感を確認していただきながら実習を進めました。

このセミナーのテーマは、普段の歯科診療室をインプラントの時だけ手術室仕様に変える具体的な手法をお伝えし体感していただくものです。手術着を着ていつもとは違う手術用の手袋をしただけで、普段できる事ができなくなってしまいます。

特に手袋は普段着用しているものとは滑りが違い、器具の扱いが難しくなってしまいます。ですからここで体験していってもらおうというものです。

この実習は縫合(傷口を縫う事)の実習を毎回行う事も特徴になっています。残念ながらどこの歯科大学でも、学生に縫合の具体的な手技実習は行っていないようです。試験もありません。ですからぶっつけ本番にならないように予め練習していただくのです。

私は縫合とはとても重要な事だと思っています。大学に始めてインプラント手術の見学に行った時、私が最も自分との違いを感じたのがこの縫合です。

だいたいどこのインプラントセミナーに行っても、インプラントを入れる所までの話しで終わってしまい、縫合もその後の話しもほとんどありません。これはとてもおかしな話しだと思うのです。

外科に入りたての先生は、毎日縫合の練習をしているといいます。いったい開業歯科医の中で、どれだけの方がきちんとした縫合の知識を持ってインプラント外科をやっているのか疑問です。

歯科医向けの雑誌にはインプラントの症例が華々しく掲載されるのですが、その影には必ず繊細で確実な縫合のテクニックが隠されています。しかしそれが表に出ず、うわべだけ綴った記事が紹介されるのは、ある意味仕方がない事かもしれません。

しかしなかなか真意が伝わらないもどかしさが、このセミナーの原動力となっています。逆に言えば、それができていないまま行われているインプラントも多いだろうと言う事で、週刊朝日にいろいろ言われてしまうのもある面無理からぬ事だと思うのです。

次回は最終回、またあらたなネタを加えてがんばろうと思います。

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さて実はこの日はインプラント手術が1件あり、見学の先生がお見えになりました。文京区千駄木のゆりの木歯科医院の竹末寿子先生です。


先生はインプラント手術は行わないません。しかしインプラントの知識は不可欠ということで、勉強のためいらっしゃいました。それはそうでしょう、いまや初診時に既にインプラントが入っている方がいっぱいいらっしゃる時代です。

また、自分がインプラント治療をしないからといって、患者さんに入歯やブリッジを勧める事はあってはなりません。ですからどんな歯科医師であろうとも、インプラントとは実際どんなものであるのかを知らなくてはなりません。

先生にはもちろんこの後のセミナーにもご参加いただきました。見学があるという事はそれなりに緊張するのですが、自分も大学でさんざん手術を見せてもらった事もあり、自分が周りに発信や恩返しのような事もしなくてはならないのだなと思います。

最近は少しずつ依頼で出張手術も行う身にもなりました。一般診療同様に、さらに邁進しなくてはなりませんね。だけど、引越の荷物も片づけないと・・・です。

2009年10月13日火曜日

印税は忘れた頃にやってくる(僅かだが)

ずいぶん前に執筆に参加した本ですが、ようやく規定部数に達したために印税が入りました。3,000円ちょっとですけどね。


この本は根管治療の問題点を真正面から捉えた実践本です。詳しくはまた後で書きますが、「チェアーサイド嫌気培養」という画期的な細菌検査システムについて、ユーザーと研究者の分担執筆になっています。以下がその研究会です。


私がこのシステムの研修を受けたのは2000年の春、最近こそ顕微鏡の導入で細菌検査の出番は減りましたが、こじれた根管治療にはまだまだ細菌検査はかかせません。歯科はもっと細菌の存在に注目しなくてはならないと思うのですが、残念ながらこの本が今ごろ規定部数に達したという事は、あんまり売れてないんでしょうね。。。

新型インフルエンザやO-157など、細菌は遺伝子を変え新たな脅威となって社会に広がっています。すでに人類は新たな細菌との戦いに入っています。そうでなくても歯科界は根本的な原因である細菌にもっと注目してほしい物だと思います。

そうすればもう少し印税が入るんですがね。。。

ミーティング@米蔵(武蔵新城)

これは酒の席ではありません。10日(土)のランチタイム、グラスはビールではなくウーロン茶です。

さてこの写真左手前の彼女、実は患者さんです。見た目は今風のお嬢さんですが、彼女の仕事は人工透析外来専門の管理栄養士さん、学会でも発表をしている強者です。

でその彼女、食のエキスパートである事から歯の重要性に気がついてくれた訳でして、いろいろ話が聞きたいとの事、こちらも透析の話やらいろいろ聞きたいので、ならばと言う事でこちらのお店へ集合。

伺ってみると、やはり栄養士さんも歯の知識はほぼゼロ。つまり「食べ物」の話しはできても「食べ方」の指導はできません。食べ物は与えられるものですが、食べ方とは自分で行動するものです。日本人は「モノ」に頼る傾向がとても強いのですが、そのためか食べ物さえ良ければ健康になれるとほとんどの方が勘違いしています。

けどそれだけではだめなのです。食べ方が問題なのです。そしてその後片付け、つまり歯磨きも。それを無視してモノにこだわり続けてきた結果が今の高齢社会だと思うんです。この栄養士の患者さんはそれに気がつき私に相談してきたんですね。ならばという事でランチしながら2時間くらい、アッと言う間に過ぎてしまったのでした。。。

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さてこのお店、実はウチの非常勤衛生士の阿部文歌さんのご主人が切り盛りする小料理屋「米蔵」、場所はJR南武線武蔵新城駅すぐ近くです。ダンナは数々の修羅場をくぐり抜けてきた、玄人好みの料理人です。遠くの方もぜひ行ってみよう!

2009年10月11日日曜日

鮫の歯

「これは何ですか?」

私たちの診療室の受付には、この写真のネックレスと、あともう2つほぼ同様なものの計3点が置いてあります。これを見つけた患者さんはちょっと不思議そうな顔をしてこのように訪ねます。

コレ、実は鮫(サメ)の歯なんです。2年ほど前にサンフランシスコに寄ったときにお土産で買ってきたものです。少し余計に買って来て余った物なのですが、面白いので飾ってあります。

鮫の歯はとても特殊で、実は何回も生え変わります。一定期間でどんどん後ろから出て来、その構造はピストルのリボルバーの様だと言われます。鮫にピストルとはずいぶんお似合いです。

さて神様は何故鮫の歯をこのように造ったのでしょう。あまりに歯が消耗するので、どんどん交換するようにしたのでしょうか。では人間は?

人間は鮫のように激しく歯を消耗するわけではありません。しかし虫歯や歯周病で歯が人生の最後まで有る事は困難です。だから人間も鮫のようにどんどん後ろから新しい歯が生えて来たら良いなと思いませんか?しかしそうは行きませんね。

鮫の歯が連続して生えてくるのは生きて行く必然、一方人間は自らの文明で造り出した「代償」であるむし歯や歯周病で歯が無くなります。勝手な事をして自分で自分の首を締めるような人間に、神様は60歳くらいで新たに生える歯など与えてくるはずありません。

もし鮫が文明を持ち甘いものを好むとしても、後から歯がどんどん生えてくるのでむし歯で困る事は絶対にないでしょう。けどその代わりに神様はきっと他の罰を鮫に与えるのではないでしょうか。

たかがお土産の鮫の歯ですが、自然と文明のバランスを考えてしまいます。

2009年10月9日金曜日

「半」と「30分」

今週は一つ失敗をしてしまいました。

お昼休みにメーカーさんが挨拶に来るというので待っていたのですが、約束の1時になっても来ない!?10分過ぎても連絡の一つもなく、この日は朝抜きだった私はたまりかねて昼ご飯に出て行きました。

「一流メーカーなのにしょうがないなぁ」と思い食事をしていると1時半に携帯が鳴りました。もちろん件のメーカーさんの営業担当者さんで、私は「遅れるなら電話くださいよね」と言い、ゆっくり食事をして診療室に戻りました。

ところが聞くと「先生、アポは1時半ですが、メールにそう書いたのですが。。。」

「え〜!?」と私。後でメールを確認すると、確かに1時半と書いてあります。「半」を見逃していたのです。私はお昼休みは外に出る事が多い関係で1時半にアポをとる事は絶対にありませんので、最初からそのつもりでいたのかもしれません。

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時刻を表現する時「半」と「30分」は同じ意味で使われます。確かに「半」と言った方が早くて簡単です。しかし「半」は聞き逃しや書き間違いがとても多いのです。

私たちも診療の予約を毎日たくさん承るのですが、特に電話での診療予約の時には絶対に「半」は使わず「30分」と言うように受付に指示しています。それはもちろん過去間違いがたくさん発生したからです。こういう話は信用問題になるだけでなく言った言わないの水掛け論になり、無用な神経を使う事になります。

今回の件はメールという形に残っているもので、私の一方的な不注意で発生した事です。このメーカーさんには、お忙しいのにたいへん悪い事をしてしまいました。言葉の伝達の難しさと大切さを感じた日でした。