2010年5月11日火曜日

孤高のメス


堤真一さんが握っているのはたぶんクーパーというハサミなのですが、「孤高のメス(東映)」です。試写会に行ってきました。

実は最近わけあって、いろんな本を読んでいます。理由はまた後で明らかにするのですが、読んでいる本のほとんどは「医療問題系」です。

でこの映画、私にとって非常にタイムリーです。

これは前々から思っているのですが、日本の医療とは、現場で働く医師や看護士などの「やりがい」と「使命感」のみで支えられています。

現実は信じられないほど過酷な労働環境と、これまた信じられないくらいの低賃金です。すべては国の「低医療費政策」と、マスコミの命に関する認識違いから来るものです。そしてそれを助長してしまったのが、大学の医局制度や自慢大会に終始する学会のあり方です。

最近読んで来た本にはこれらの問題点が明確に述べられています。日本の医療は金融と同じような「護送船団形式」です。皆が公平になるように、最も低いレベルに基準が設定されます。これでは治る人も治りません。日本の医療は先進国では最も遅れた存在になっていると言われます。

しかし、それでも日本は「世界一安心して病気になれる国」である事は間違いないでしょう。レベルがどうあれ、保険証一枚あれば、誰もがほぼいつでも医療機関にかかる事ができます。しかしそれに甘えきってしまった結果が、今日言われる「医療崩壊」というものです。


この映画、美術さんが相当がんばって、医療の現場をしっかり造っています。内臓など「おー、ここまで出来るのか!」というくらいリアルです。

時代設定は1989年ですが、その当時としても古めかしい手術室で、壁のうぐいす色のタイルが何とも良い味です(?)。手術室ってホントにこんななのと思われる方は多いでしょう。今はもっと洗練された感じですが、20年前はこんな感じの所も多かったと思います。

肝心の内容は、ただ「命に対し、真摯である」事を貫き通す事の厳しさ・はかなさ・美しさをよく表現しています。医療の現場では命が第一であり、法律やしがらみ・お金は関係ありません。本当は誰もがそれを知っているはずです。

しかし現実は許認可問題や資金難、さらにはマスコミが医療ミスを格好のエサとしてとりあげる不道徳さ、それによりつけあがる患者に医療現場は疲弊しきっています。

今まで医療をここまで真正面からリアルにとらえた作品はなかったと思います。みなさんもぜひご覧いただき、あなたはどうしたら安心して医療を受けられるようになるのかを考えてみてください。それは決して自分の我がままを押し通そうとする事ではない事に気がつかれると思います。

しかし移植の問題は本当に深刻で、じゃぁ自分がその立場であったらどうかと言われると言葉に詰まってしまいます。

「孤高のメス」は6月5日より、東映系映画館で上映されます。実は試写券がもう二枚ございます。ご希望の方は下記よりメールでお知らせください。

PS:伊藤さん、試写券ありがとうございました。