2010年5月3日月曜日

仮骨延長(ディストラクション)

4月下旬にちょっと風変わりな手術を行いました。当日は患者さんをご紹介いただいた先生にもお手伝いに入っていただいたのですが、その様子が先生のblogにアップされています。


ご紹介くださったのは、以前このblogでもご紹介した文京区でご開業の竹末寿子先生。先生のblogにも書いてあるように、患者さんは交通事故にあわれた方です。


実は事故で失なったのは「歯」だけでなく「骨」もです。CTを撮影するとこのままでは明らかに骨がたりなく、無理にインプラントを入れようとすると変な形にしかならない事がわかりました。

こういう場合は骨を移植して土台を造るのが普通です。しかし骨移植は幅を造るのは簡単でも、高さを造るのはなかなか難しいものです。もちろん骨を覆う歯肉も増やさなくてはならず、そこそこめんどうな手術になってしまいます。

そこで今回は「仮骨延長(ディストラクション Distraction Osteogenesis)」という方法で骨を造る事にしました。

この方法は元はというと、交通事故で片足だけ短くなってしまった人に対し、骨を伸ばして揃えましょうという事で始まったと聞いています。

伸ばしたい骨を2つに分け、その隙間に骨が再生して行く途中、まだ完全に骨が固まらないうちに両者を少しずつ引き離して行きます。そうすると必要量の骨が確保できるんですね。うーん、面白い事を考えつくものです。

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さてそれを顎の骨に適応するには、こんな「トンボ」のような装置を使います。ちょっと面白いですね。

Vertical Alveolar Distraction (Type Cologne)

いろんなサイズがありますが、今回は写真左上の一番小さなタイプ(Micro TRACK)を使いました。 上の六角ネジを廻すと間が開いて行きます。

↓ ↓ ↓

この方法のいい所は移植がいらないところ、増やす量がコントロールしやすいところ、そして歯肉もいっしょに増やせるところです。特に高さのコントロールが容易なのはいいですね。今回は歯と歯の間の歯肉(歯間乳頭っていいます)も造らなくてならないので、そこそこ多めに増やさなくてはなりません。

欠点はちょっとカッコ悪い事。六角ネジが前歯の歯肉から顔を出しますので、女性には勧めにくいです。もちろん骨ができたら撤去するのですが、それまで辛抱です。それからこの装置自体の価格が高い事。14万円ちょっとしてしまいます。これでもこの4月に値下げしたのだそうですが。。。

実際にこれを取り付けたところは、患者さんの同意をもらっていないのでここに掲載できませんが、許可がおりればご紹介したいと思います。

竹末先生、ご紹介ならびにお手伝い、ありがとうございました。それから「どらやき」おいしかったですヨ!(←結局また甘いものシリーズに戻ってる)

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PS:この手術は竹末先生の他、以下の方々のご協力で行われました。この場を借りてお礼申し上げます。