2009年3月30日月曜日

今週の映画 ミヨリの森

吉田歯科診療室にいらっしゃった方はご存知でしょうが、ここではいつも映画を流しています。受付と二つの診療ユニットの計三ヶ所で、週代替りでお贈りしています。

元はと言えば患者さんへの説明のため、ユニット脇にコンピューターを置いたのが始まりです。使っていない時間の方が長いので、当時はいろんなスクリーンセイバーを試していました。

しかしどうも趣味が合わないというか、いかにもコンピューターが好きな人が造ったというか、診療室の雰囲気ではないなと思っていました。

そこで目を付けたのが、好きな写真を流してゆくタイプのスクリーンセイバー。これならいいだろうと思い、いろんな写真CDを買ってきました。クジラや犬・風景・建築物とずいぶんいろいろやってみました。うん、これでだいぶ和みます。

これはそれなりに良かったのですが、だんだんDVDが普及してきたので、映画を流せないかという事になりました。すると今度はムービーをスクリーンセイバーにするソフトというものがあって、これがなかなかよろしい。ただし音声は流せません。そこで日本語字幕を入れてみました。これでなんとか完成形かなというところまでたどり着けました。

という事でこのblogでは、これから今週上映(?)の映画もご紹介して行くことにいたしましょう。診療の合間や待ち時間に、ちょっと心和む映画をお楽しみください。

さて今週の映画は表題のとおり、「ミヨリの森」です。実はこれ、自称犬と自然に弱い和田衛生士の持ち物、彼女のお気に入りです。今までいろいろな映画を流してきましたが、実はアニメは初めてです。

それから皆様にお願いです。診療室で上映するのにふさわしい映画がございましたらぜひご紹介いただきたいのです。私が「これなんかどうかな?」と思って借りてきても、とてもここで上映できないヤバいシーンが出てくるモノも多く、けっこう困っています。

2009年3月29日日曜日

持ってますか?「三面鏡」

皆さんは「三面鏡」ってお持ちですか?

最近は住宅事情もあり、持っている人は少ないんじゃないかと思います。家具屋さんでも化粧台の鏡は1枚物が多いですね。三面鏡自体を知らない人も多いんじゃないでしょうか。辞書をひくとこうあります。

「正面の鏡の左右に,角度を変えられる鏡を一面ずつ取り付けた鏡台」
大辞林より

我家に三面鏡はありません。しかし実家にはありました。たぶん今も母が使っていると思います。

子供の頃、鏡とは何と不思議なものなのだろうと思いながら、あれこれ角度を変えて遊んでいたものでした。あー、自分の横顔はこんななってるんだなぁ、って。

で、その三面鏡を買いました。東急ハンズで¥3,990。アルミ枠の無骨な物ですが実用上は充分です。なんでこんなものを買ったのかと言うと、もちろん仕事で使うからです。ご自分の横顔を見てほしいのです。

自分の顔って、本当に正面からしかわからないですよね。けど顔は真正面より、少し横から見られる事が多いのです。他人からの印象は斜横からの顔で決まります。

さて問題は、その時に歯がどういう風に見えるかです。小臼歯という、前から4番目と5番目の歯がどういう風に見えるかは治療上気になる所です。

例えば健康保険では小臼歯に被せもの(クラウン・冠)をしようとすると、金属になってしまいます。小さめの詰め物(インレー)でも、横からは見えてしまいます。ところが「奥歯だから見えないから保健の金属でもいいです」と言われる方がけっこう多いんです。

しかし4番目の歯は絶対に見えます。6番目(第一大臼歯)まで見える方は4割くらいおられると思います。つまり自分の横顔がわかっていない人が多いんです。みなさんは朝身だしなみを整える時、どんな角度でどんな顔つきで鏡を見ていますか?ほとんどの方は正面からの口を結んだ状態の顔しか見ておられないと思いますす。それって証明写真ですよね。

他人が見るあなたとは、斜横からの動いている顔です。つまり歯は見えています。これを客観的に見るには写真やビデオか、この三面鏡のような合わせ鏡しかありません。美容院で最後に後ろ頭を確認するとき、やりますよね。

私は顔とは自分のためにあるものではなく、他人のためにあるものだと思います。他人が見て「あっ、いい感じだな!」と思わせる顔でなくてはいけないと思うのです。それはやはり笑顔でなくてはならないでしょう。勝負事かグラビア撮影でもなければ威圧感のある顔は必要ありません。

さてみなさんは自分がどんな顔で笑っているかわかりますか?見た事がありますか?ちょっと気持ち悪いかもしれませんが、明日の朝は鏡の前で笑った顔の自分を見てください。それから横顔も見てください。爽やかな笑顔になっていますか?その笑顔はきっと他人に良い影響を与え、廻り廻ってあなたに帰ってくる事でしょう。

2009年3月27日金曜日

ディズニーランドにある歯科医院とは!?

3月15日掲載の「無痛治療ってホントかな? 痛みを和らげる私たちの挑戦」を編集して、iSpotのコラムに掲載いたしました。これでだいぶ読みやすくなったと思いますがいかがでしょう?

iSpot ドクターコラム 歯の健康について



☆メインホームページへ☆

追記:iSpotとの契約満了につき、上記リンクを変更いたしました。[2010-11-10]

2009年3月24日火曜日

きれいな歯になりたい! 携帯サイト更新中!

携帯サイトを更新しています。

というのもiSpotへのアクセスがけっこうあるのですが、携帯でiSpotを見ている方はリンク先がメインホームページではなく、携帯用ホームページに張ってあるのですね。そっちはちょっと手薄だったので、手を入れているというわけです。

でそちらに先行してアップしたコンテンツを下にご紹介いたします。といってもこれも以前メインホームページに掲載されていたものの再掲載ですが。

吉田歯科診療室 携帯用サイト

00・きれいな歯になりたい!
01・ポリッシング(表面研磨)
02・ホワイトニング ブリーチング
03・コンポジットレジン
04・審美的でない治療とは

で、この後はこのように続きくのですが、まだ流し込んでいません。
05・ラミネートベニヤ
06・オールセラミックスクラウン-1
07・オールセラミックスクラウン-2
08・セラミックスインレー
09・白い歯が割れたら
10・歯列矯正
11・インプラント
12・歯肉形成、メラニン除去
13・たいせつな総合力

写真が多いので、これからちょっと削減しなくてはなりません。重すぎたり、見れないなどの情報をお待ちしています。

連絡先 info@y-dc.org

それから「診療の流れ」もアップしました。私達はじっくり治療するタイプなので、ちょっと他の歯科医院さんと流れがちがうかもしれません。これも早くメインホームページに載せて行きたいと思っています。

診療の流れ・1
診療の流れ・2

なお文面の「撮影した写真とレントゲンにコメントが入った資料」とはこんなものです。

これは吉田歯科診療室に来た人全員にプレゼント(?)されるものです。ちょっと凄いですよ。自分を知る事はとっても大切ですし、これが解っていないと、話が噛み合ないんです。

2009年3月18日水曜日

iSpot Dr.インタビュー


そう言えばこんなインタビュー記事が掲載されていますのでご紹介します。


iSpot は au や soft bank の公式ページです。その中に吉田歯科診療室のページがあり、現在2件のコラムも掲載されています。

割れるボタン、壊れる前歯
発表!間違った歯磨きTop3

こちらのコンテンツや携帯ホームページもこれから充実させて行きますのでお楽しみに。

それから携帯でご覧の方にお願いです。携帯はキャリアや機種により表示できる内容に差があります。表示できない部分を発見された方はぜひ教えてください。ご連絡は、

info@y-dc.org

まで、よろしくお願いいたします。

2009年3月16日月曜日

VideoCast.11 歯科衛生士の仕事の重要性を知ろう

YouTubeにVideoCastの11本目をアップしました。



今回が高山さんとのお話の最終回です。実は彼女は歯科衛生士なのですが、今までそうではない素人のふりをしていてもらっていました。ゴメンナサイ。

今回は彼女の最後を飾るのにふさわしく、歯科衛生士が行うメンテナンスの重要性を確認します。合っていないクラウンや歯肉が萎縮して歯根が露出した所など、ご自身ではなかなか磨ききれない所はたくさんあります。歯科衛生士はこれらに的確に対処できる想像力と技術力が求められます。そしてそれが患者さんの明るい未来に直結するわけです。

高山さんはこれから某有名歯科医院に修業に出ます。今後の彼女の活躍に期待しましょう。

2009年3月15日日曜日

無痛治療ってホントかな?を再掲載

以下の文章は以前メインホームページにアップされていたっものですが、2年ほど前にデザインを新しくしたのを機に削除したものです。過日再掲載の依頼がありましたので、まずはこちらにアップしました。けっこうな長文ですが、読み応えがあると思います。無痛治療なんて、よく言えますね。私には言えません。

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無痛治療ってホントかな?
〜痛みを和らげる、私達の挑戦〜

東京ディズニーランドの中に歯科医院がある事をご存知だろうか? その名を"Painless Dentist"つまり「痛くない歯医者」といい、Dr.I Teetheさんという方がやっておられるとか。場所は入り口のワールドバザールからビッグサンダーマウンテンに行く途中のウェスタンランドにあったと思う。痛くないのだから歯医者嫌いでなくとも是非訪れたいものであるが、残念なことにそれはもちろん架空の歯科医院である。

「先生の治療はうまいかもしれんが、それにしても痛いな」と言われたのは私がまだ銀座で勤務医をしていたころ、とある地方企業の社長さんの弁である。当時の私は歯周外科の研修を一通り終え、多くの患者さんに対し得意になってメスを振るっていた(!?)ように思う。週に4~5件の手術を、また大学でなくてはやらないような完全に骨の中に埋まっている親知らずの抜歯も含めるとそうとうな数をこなしていた。しかしそこには若かったがゆえ自己の技術に溺れ、患者さんの事をあまり深く考えていなかった私がいたことを認めなくてはならない。そんな私に貴重な忠告を与えてくれた社長さんがいなければ今日の私の診療スタイルはなかっただろう。



とはいうものの治療効果を狙う以上、患者さんにはある程度の我慢はしてもらわなくてはならない。針をさすのだから麻酔注射は痛くてあたりまえ、麻酔が効いてしまえば術中はもちろん痛くはないが問題はその麻酔が切れた後、すなわち術後疼痛だ。それはそうだ、歯茎を切り、それを骨から剥がし、骨を削り、歯を抜き、縫い、または神経をとり、聞いただけで身の毛もよだつ恐るべき残酷物語が歯科医院では日常的に展開されている。痛くないほうがよほどおかしい。

過去、歯科治療で痛い目にあった人はなかなか次の治療に向かうのが難しい。初診の時に「私、痛いのダメなんです...」とおっしゃる方は男女を問わずたいへん多い。また子供のころのトラウマをひきずる大人は後を絶たない。そんな方のために歯科医院はなんの努力もしていないかと言えばもちろんそんなことはない。例えば「表面麻酔」という塗り薬がある。注射の前にこれを塗っておけば痛みがなく注射が完了するという夢のような薬!...ではもちろんない。注射針が歯肉を刺す瞬間の痛みだけが減少するのだが完全に効くわけではなく、麻酔液を注入するときの組織破壊に伴う痛みは変わらない。が、無いより有ったほうがよい。

麻酔の打ち方にもいろいろ工夫がある。例えば麻酔液の注入をゆっくりやったらどうだろう。先に入った薬液が浸みわたり、後から入る麻酔に多くの痛みは生じない。歯茎ではなく歯と骨の間の歯根膜と呼ばれる所に打つ方法もある。

「笑気ガス」という吸入麻酔もある。鼻にマスクを装着し、亜酸化窒素と酸素の混合気を吸入するのだが、いわゆる全身麻酔ではない。吸うと5分くらいで酒に酔ったような感覚になり、痛みを感じなくなるわけではないのだが痛くても「ハハハ、まぁいいか~」という感覚になる。酒に酔って転んでけがをしても気が付かないのと同様である。朝起きたら血だらけだったという話しは学生の頃良く聞いたものだが。しかし本法は歯科医師であればだれもが知っている方法でありながら普及率はいがいに低い。理由はその煩雑さと赤字覚悟の採算性の悪さだが、それ以外にも鼻マスクが手術の障害となる場合があることも大きい。

また、かなり特殊な方法だが静脈内鎮静法という点滴によるものもあるが麻酔の専門医がついていなくては難しい。

「痛いし恐いから全身麻酔でやりたいのですが...」と本当に希望する方もたくさんおられる。しかし全身麻酔が痛くないかといえばぜんぜん違い、術前に注射もあるし麻酔から覚醒するときの気持悪さは受けたことのある方でなければわからないものだそうだ。口の中を扱う歯科・口腔外科ではマスクによる麻酔吸入はできず気管内挿管と呼ばれ鼻からのどを経由して気管にチューブを入れ麻酔ガスを導入する。したがって麻酔後に気管が腫れ呼吸困難が起こることもあり安全のため入院が必要な場合もある。難しいインプラント手術など90分以上かかる手術でなければ全身麻酔は必要ない。

**

以上が大学や一般歯科医院で行われる鎮痛テクニックの概略だが、いずれもかんじんな術後疼痛の緩和の決め手になるものではない。ただ鎮痛剤に頼るのみである。こんなに痛みを伴うのはやはり歯科疾患の特殊性と多発性によるものだが、その中でも歯周囲の構造と歯科麻酔液の特殊性による所が大きい。

例えば虫歯の時だが、歯が痛いんだから歯に注射をすれば...とはいえ歯は硬くて歯がたたない、ではなく針がささらない。歯茎経由で麻酔を歯の神経に効かせるのだが注入した量の僅かしか届かない。これが頬や鼻まで麻酔が廻ってしまう理由なのだがこれはもうしかたがない。この時ただ歯茎に注射すればいいかというと必ずしもそうではなく、下の奥歯など骨がとても厚く硬い場合は骨膜という所を貫通して直接骨に針を当て(!!)強圧で注入しなくてはならない。したがって歯科用の注射器はまるで握力計のような構造をしており、麻酔液は強圧に耐えられるようカートリッジに封入されている。

また一般的な歯科用麻酔液は1/80000と極微量だが血管収縮剤が入っている。これにより血流が減少し麻酔液の滞留性がよくなり、少量の薬液で有効な持続時間が実現する。もしこれがなければ大量の麻酔薬が必要でたちまち許容量をオーバーし治療は不可能だし、手術は出血が多くて何も見えなくなってしまう。だが問題がないわけではない。血流が減少するとは、手術による損傷から組織が直ちに修復行程に入れない事を意味する。そればかりか炎症を起こさせる物質が蓄積する一方である。実は痛みの原因はここにもあり、我々は避けようのない交換条件を飲む以外に術はない。

***

さてここまでさんざん重苦しい話しで申し訳なかったのだが、最新医療技術を持ってしても手術後の痛みを抑えることはなかなか難しい事が少しご理解いただけたのではないかと思う。では我々の取り組みはどうであろう? 手前味噌だがご紹介したい。キーワードは治療技術・鍼・レーザー・そして笑顔である。

治療技術とは読んでそのままだがこれが何の関係があるかといえば、要するに無駄な事はせずに短時間で終わらせるという手術の基本である。例えば歯茎の手術で無駄な切開や剥離をすれば痛みや腫れは増える。逆に必要な切開を行わなければ手術部位が良く見えなく結果時間がかたり、また不要に粘膜を引っ張ってしまうだろう。また感染の危険も増す。要するにうまくて早ければ痛くないわけだ。

外科の世界ではatraumatic(アトラウマチック=非侵襲的)という言葉が古くから使われておりこれが出来きる外科医が名医であるわけだ。歯科でも同様なはずだが、なぜか使われていないばかりか意識する人がどれほどおられるかも疑問だ。またatraumaticを実現するには優れた医療技術を持った医師の存在だけでなくチームワークが重要になるが、さて吉田歯科診療室はどうであろう。70点はいただけるとは思うが名医と呼ばれるほど優れてはいないだろう。

そこで鍼(針)の登場である。鍼麻酔という言葉が前々から気になっていた私に前出の社長さんの一言が東洋医学の道へと誘った。当時通っていたスポーツクラブの担当インストラクターが鍼灸師であった事もありその後ずいぶんいろんな方の鍼の打ち方を見せていただいたが、その打ち方はまさに千差万別で自分のスタイルをある程度造るのに苦労はしたがその効果は驚くべきものだ。鍼麻酔がセンセーショナルに伝えられたのは1970年頃であるが、鍼だけで大手術をこなすというたいへんな事であった。ただし成功率は以外に低かったと聞くが術後の痛みはなく、傷の治りも驚くほど早く患者さんは数日後には歩きだしたという。

この技術を歯科でもということで多くの先人が並々ならぬ努力で研鑽を積み重ねてきたのだが、ごく簡単な抜歯ならともかくとても従来法(薬液による麻酔)にとって変わるものではなかった。しかしその除痛効果は確かにあり、例えば合谷と呼ばれる手のツボに鍼を適用することにより歯科治療の6割はなんらかの除痛効果が見られる。また短時間の手術であれば麻酔の使用料を半分程度にまで減らせる場合があり、これは前述の血管収縮剤を減らすことにもなり治りや痛みを減らす有効な手段となる。

他にも有効なツボは数多く、まさに温故知新で願ったりかなったりだ。しかし鍼にも問題はある。顔への適用が難しいことだ。できるにはできるのだがやはりちょっと痛い(実は手足はまず痛くない)。また鍼の存在自体が手術の障害になることがあるし、内出血の心配もある。

そんな悩みにレーザーは期待以上の効果をもたらす。レーザーを極めて微量に照射すると治癒促進作用と軽度麻酔作用があることは古くから知られている。我々はまず単純に手術部位にこれを適用するのだが、これだけで実は前述の表面麻酔以上の効果がある。

レーザーは表面だけではなく深部まで効果があるのがその理由だが、これによりいつ麻酔が入ったのかわからない人もいる程だ。このレーザーを鍼の変わりに使う事もできる。私はレーザー鍼という言葉は好まないのだがイメージとしては間違っていない。内出血や痛みの心配が全くないため顔面のツボに最適だ。

私達の診療ではもはや鍼とレーザーの応用はかかせないものとなってしまった。この方法でずいぶん多くの手術を行ってきたが約3割の方は術後も痛みは全く生じなかった。また6割の方から痛みはあったがたいしたことはないという評価をいただいた。

残念ながら1割程の方からはご評価いただけなかったのだが、もし本法を用いなければ痛みはもっとあったのではないかと推察する。しかしこの鍼とレーザー療法を成功させるためには1つ条件がある。緊張しているとだめなのだ。

決め手は診療室の雰囲気である。豪華な内装や過剰なサービスの事ではない。そこで働く者の患者さんに対する心と表現力の事だ。それはそのまま「笑顔」と言い換えてよいと思う。それだけが患者さんのより所である。

もちろん我々は神でも天使でもないが、笑顔だけは神にも天使にも近づけるはずである。そして鍼もレーザーも笑顔のない緊張感いっぱいの張りつめた雰囲気では効果は少ない。緊張すればそれだけ痛みは感じやすく、筋肉はひきつり手術後の疲れはそうとうなものだ。このような事で歯医者は痛いものと思われたらその人の一生の口腔衛生のモチベーションは下がったままだろう。

緊張を取るためのツボはもちろん存在する。私は風池と呼ばれるツボを好んで用いるが、人の心を解きほぐすほどの鍼の技術は持ちあわせていない。今更だが手術以前の基本がここに凝集されている。笑う門に福来るとはまさにそうで、実は私達が患者さんの笑顔に救われることもある。お互いの信頼関係がなければ治療技術など無意味なものだ。

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医療技術の進歩は麻酔技術の進歩のおかげであるという話しを聞いたことがある。手術で命を救われた私を含む数多くの人々はもとより、歯科治療は麻酔なしでは考えられない。しかしその反面、医療従事者は麻酔により生体をあたかも物を扱うかのような錯覚に陥る。こと歯科に関しては治してやってるのだから痛いのは当たり前という驕りはなかったか? 反省しきりである。

実際に無痛はありえない。しかし「無痛治療」と称しあたかも全く痛みがないような治療を実践しているような施設は存在する。例えばレーザーを無痛治療の主軸に据える所は多いがそれはメーカーの誘い文句に騙された被害者で、過去に無痛を謳っていた業者も最近では「無痛を心がける方のために」とか「無痛に最も近い」とトーンダウンしている。

もちろんレーザー治療は従来法に比べて痛みはずいぶん少ないが決して無痛を保証するものではない。最も重要なのは「痛くても許してあげる・がまんしよう」というやる気を引きだし治療に積極的に参加できるような環境を患者さんとともに創ることだろう。これさえできれば治療は半分終わったようなものだ。しかし実際治療が完了しメンテナンスに移行できる人は案外少ない事を考えると私達がやらなくてはならないことはまだまだたくさんあるのだなと思うのです。


※ 本稿は2002年6月27日より行われた世界レーザー治療学会(WALT2002)にて歯科における痛みに関するワークショップを担当させていただいた事を期に、あらためて感じたことを記させていただきました。一介の開業医にチャンスを与え、大会を運営してくださった多くの方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。

(平成14年6月28日 エポカルつくば にて)

2009年3月9日月曜日

インプラントは頭部MRIに影響いたしません

ご注意:以下は執筆時点の情報であり、1.5テスラの装置での場合です。最新の3テスラの装置では、インプラントが発熱する可能性が指摘されており、医療機関の判断で撮影できない場合があります。1.5テスラの装置ではインプラントが入っていても問題はありません。

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突然すごい画像で申し訳ないのですが、この画像を公開したのには訳があります。(患者さんの許可は得てあります)

これは頭部MRI検査の画像ですが、実はこの方にはインプラントが既に入っています。上顎に3本、下顎に2本です。

ところがこの患者さん、つい最近新たにMRIを受けようとしたところ、インプラントが入っている事を理由に拒否されてしまったのです。それはおかしい、事実ここに一年前の写真があるというのにどういう事なのでしょう?






患者さんは「以前は撮影できたのに、今回初めて拒否された。どういうことなんでしょう?」と困り顔です。話しを聞くと今までとは違う病院だそうです。問診表を見せてもらうと、なんと口腔インプラントを入れている方は撮影できないとはっきり書いてあるではありませんか!しかも一番最初に。

これはおかしいと思いその病院に電話をしてみると、放射線技師さんが出てきて言いました。「そのような事がインターネットに書いてあったので、とりあえずインプラントは除外したんだけど、いや、別におたくさんが許可してくれれば撮影してあげてもいいんだけどね」と、なんだコイツは!と怒りたくなるような応対ではありませんか。それを差し引いたとしても、この程度の知識で命に携わる仕事をしているのかと思うと、まったく情けない話しです。


実はインプラントに限らず、歯科用金属はMRIに影響があります。ただしそれは撮影する位置が歯の高さであった場合で、良く行われる頭部の検査は歯と離れていますので、上の写真のように問題はまったくありません。

MRIのMはマグネットの意味です。したがって磁力がある金属ほど画像に影響が出ます。一番問題になるのはマグネットつきの入歯を入れっぱなしで撮影してしまう事です。ただしその場合でも入歯を外せば問題ありません。マグネットは入歯の方についているからです。

またインプラントに使われるチタンは磁性体ではありませんから、影響が出にくいものです。むしろ普通の歯科用金属の方が問題になってきます。であれば歯に金属を入れている人は昔から全員MRIができない事になってしまいますが、そんな事はありません。ただしインプラントは普通の歯の治療よりも深い所まで金属が入りますから、それを心配する人もいるのかもしれません。

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結局私は「患者さんは以前同様の検査をして問題はおきていないので安心して撮影してください」との旨依頼書のような物を書き、無事撮影してもらえたのだそうです。

しかしこの放射線技師さんのように専門的立場の人でさえ何の知識も持たず、いいかげんな情報に左右されているのです。インプラントに限らず、歯の事・健康の事はまだまだ情報不足や誤解が多いなと思わされた一件でした。

2009年3月6日金曜日

12年前の洗濯機が教える、日欧の考え方の違い

吉田歯科診療室で動いている洗濯機は、今はやりのドラム型です。と言っても買ったのは12年前の1997年、その当時はまだ市場にドラム型洗濯機はほとんどなく、珍しい買い物だったようです。

開業当日から毎日大量のタオルや白衣をさばいているこの働き者が、先日突如乾燥がまったくできなくなりました。「マズイ、今度こそダメか・・・」

実はこの洗濯機が壊れたのはこれで4回目。またまた修理屋さんのお世話になったわけですが、その修理屋さんと話をしているとどうやらこの洗濯機、成り立ちにワケがあり、いろいろ考えさせられます。



今なぜドラム型洗濯機が売れているのかはわかりませんが、当時の私にはこれでなくてはならない理由がありました。

都心の診療室とはどうしても手狭で、レイアウトに苦労します。普通の洗濯機は上にモノは置けず、デッドスペースになるか乾燥機が占めてしまいます。

そこで目を付けたのがドラム型洗濯機。おかげで上には別の機械を置く事ができ、省スペース化に大いに役立ったのです。しかしこの洗濯機がキッチリ収まるスペースで周囲を造作したのが後々仇となってしまいました。

実は2回目の壊れた時に買い替えを決め、新機種を搬入までした事がありました。ところがいざ設置してみると場所の関係で排水管が入らず、泣く泣くキャンセルし電気屋さんに持って返っていただいた事がありました(電気屋さんゴメンナサイ)。つまり吉田歯科診療室にはこの洗濯機しか設置できないことが判明したのでした。しまった!

こうなったらもう意地でも直すしかありません。けっこうな金額を払い修理し続けて現在に至っています。何か損しているな〜

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さて12年物ともなると、部品在庫がなければさすがに買い替えです。ということは周囲の造作を全部壊して作り直し、、、それはやりたくないなぁと心配しつつ修理屋さんに聞くと「あぁ、この機種は大丈夫です。部品は無くなりませんョ」。エッ、どういう意味ですか?

この洗濯機はシャープの ES-E60 という国産なのですが、実は中身はスウェーデンのエレクトロラックスのもので、国産なのは外側だけなのだそうです。

しかもその中身となった製品は今も販売し続けており、部品はまだ暫くはなくならないのだそうです。

エレクトロラックス社は大型洗濯機メーカーとしては老舗で、コインランドリーなどに行くとここの製品が多いそうです。12年前、日本のメーカーはどこもドラム型洗濯機のノウハウがなく、当時シャープがエレクトロラックス社の中身を利用し発売したのが私が使っているものなのだそうです。

修理中に中身を見せてもらうと、なんと骨組みにコンクリートが使われていたりと尋常ではありません。そのせいで重さが100Kgを超えているのだそうです。

その後シャープはこの製品からいろいろな事を学び、今日の製品に活かしているのだそうです。私は「なるほどなぁ」と修理屋さんの話しにしばし感心していたのでした。

***

それにしてもこの日欧の考え方の差は何でしょう?頻繁にモデルチェンジを繰り返し買い替えを促す日本型と、武骨なまでに作り込み修理しながら長い間使い続けてもらおうとするヨーロッパ型。

日本の新しい機種は確かに静かで省エネで、最近は除菌やシワとりまでやってのけます。エレクトロラックス社の製品にはそんなものはありません。

今まで修理代はそこそこかかってしまいましたが、廃棄ゴミも出さず愛着を持って長い間使って行く事の価値を感じる事ができます。12年間使え、まだこの先も使えるようで良かったなと安心します。

その一方で日本製品はすごく進化しています。今新しく買おうとするとエレクトロラックス社の優位性は、ブランド力やデザイン以外に何があるのかは解りません。家電とは日本人にとって技術を追求しつづけるものなのでしょう。そして日本人はすべての基準がそこにあるように感じているように思います。新しい物は良いと。

歯の治療はある意味物造りと似ています。吉田歯科診療室の考え方は、良い物を時間をかけて造り、メンテナンスしながら長い時間使って行くというものです。これをヨーロッパの古い街並みなぞらえて患者さんにお話しています。しかし皆様最初はピンと来ないようです。

新しい歯の治療技術が登場しても、それは洗濯機のような静かさも省エネも関係ありません。除菌能力などあればいいなと思いますが、まず実現しないでしょう。エレクトロラックスの洗濯機のように武骨なまでに造り上げて行き、メンテをしっかりし壊れても直し何十年と使って行くべきでなのです。

私にはこのあたりの感覚の違いが、日本人が歯の治療を安易に考えている事ととてもよくリンクしているなと思うのです。あとどれくらいこの洗濯機を使うかは解りませんが、買い替えをしなくて良かったなと思うのです。もう少しこの洗濯機とつきあって行こうと思います。

2009年3月3日火曜日

EOS 5D MkⅡ を顕微鏡に繋いでみました

ちょっとぎょうぎょうしいのですが、顕微鏡Canon EOS-5D MkⅡを繋いで試写しています。HD動画も撮れるで期待しているのですが、なかなか使いこなしは難しそうです。

かなりの高感度で、従来のようにストロボやキセノンランプを使う必要がありません。

しかし完全なマニュアル撮影なので、適正露出や被写界深度の設定に苦慮しています。また周辺光量不足の補正もしなくてはならず、お見せできる写真に仕上がるのはまだまだ先のようです。

これが常用できるようになると、患者さんに苦労をおかけせずに口の中の実態をご説明できるようになります。早く実用化できるようにがんばっています。

2009年3月1日日曜日

Link をアップ!

もう一つ、メインホームページのLinkページもアップしてあります。

いやぁ、けっこうな数ですね。本当はまだあるのですが、ちょっとこのへんで勘弁してください。

吉田歯科診療室 デンタルメンテナンスクリニックは、このリンク先の皆様のご協力・助言・情報源のもとに成り立っています。いつもありがとうございます。

「インプラントのすべてがわかる本」を読もう!

メインホームページ(製作中)と赤文字がついていた部分を造っています。

今日は2007年7月に刊行された「インプラントのすべてがわかる本〜正しくケアして長持ちさせるために〜」のご紹介ページをアップしました。


出版の経緯・裏話・編集段階で泣く泣くカットされた原稿・補足、書評・誤植のお詫びと訂正・出版記念会の模様、そして少しだけ立ち読みができるようにしています。

メインテーマはインプラントを正しく長持ちさせるためのメンテナンスが中心ですが、実はインプラントをお考えでない方にもたいへん有益な内容になっています。特に第4章の歯磨きの話しは、これだけで一冊の本でも良かったのではないかというくらい充実しています。

このBlogの右に、出版社とAmazonへのリンクが貼ってあります。自分で言うのもなんですが、とってもためになる本です。是非お読みくださいね!