LeicaM-320 の静止画と動画の画質について見てみましょう。サンプルは典型的なムシ歯治療で、部位は左下の前歯です。
基本的には以前と撮像範囲は変わりませんが、対物レンズ焦点距離が250mmになった事で若干視野が変わったようです。それでも常に視野の中央に治療対象がなくてはならない事には変わりなく、ちょっと神経を使います。
これはもうどうしようもない事なのですが、動画用のセンサーで静止画を撮るこのような眠たい画像にしかなりません。一眼レフなどの専用カメラからの画像を見慣れた我々から見れば、写りはぜんぜんパッとしません。
しかし患者さんにお見せするのにそこまでの画質が必要かと言えばそんな事はなく、まったく見えず解らなかった事が目前に現れるだけで驚きです。
上の一枚目はムシ歯の存在と不完全な詰め物(コンポジットレジン)を写したもの、二枚目はムシ歯を取りきりラバーダムを装着したものです。
この二枚の写真だけでただムシ歯の存在を示しただけでなく、一枚目からは予想もつかなかった実際のムシ歯の大きさ・ムシ歯を取りきったという証拠・コンポジットレジンを使う治療の難しさ・ラバーダムを装着する事の重要性を簡単に説明する事ができます。
それから顕微鏡からの撮影は、患者さんに負担をかける事がまったくない事も重要です。一眼レフカメラなどでの撮影は、診療を中断して患者さんに口角鉤(口を引っ張る器具)を持っていただき、口に排唾管と鏡を入れて、アーダコーダ言いながら何枚も気に入った写真が撮れるまでシャッターを切り続けます。これは患者さんにはとっても迷惑です。少なくとも私には手術中はできません。
しかし顕微鏡からの撮影は、治療を中断する事なく誰かにリモコンボタンを押してもらうだけです。今自分が見ている像がほぼそのまま記録されますので、ごまかしや撮り直しのきかない一発勝負の世界、信憑性は抜群です。
歯科界では患者さんの存在を無視したかのような、アートのための写真を撮る方が少なからずおります。私はそのような写真の存在を否定する者ではありませんが、どうも行き過ぎているのではと懸念しています。少なくとも医科ではそのような事はないと聞いています。顕微鏡からの撮影は患者さんの迷惑にはならないため、とても良い方法なのではと思います。
次にこの治療の動画サンプルをご覧いただきましょう。