2009年6月12日金曜日

VideoCast13 見えない所こそ大切に、歯肉圧排とは?

一度録音を失敗したVideoCastの13作目ですが、昨日再録音し公開しました。収録場所がCafeなので、周囲の雑踏が聴こえてきますが、実は私はこんな雰囲気が大好きです。



さて「歯肉圧排」とはVideoCastの3回目の最後でお見せしたものです。歯肉の中に「糸」を入れて行くこの地味な行程、実は保健診療と自由診療の質を別ける決定的要因かもしれない、それほど重要な行程です。

これにより歯肉は歯から離れ、歯の削りシロ(マージンといいます)が見えてきます。そして糸を入れる事でできた僅かな空間に型取り材を流し込みます。これではじめて過不足の無い、ピッタリ合った人工物(冠など)を造る事ができます。いくら材料が良くてもこの行程が無ければ、境目にプラークが簡単に溜まる治療しかできません。

歯肉に炎症が無ければ簡単ですが、ちょっとでも炎症があったり、歯肉の中まで進行してしまった深い虫歯の修復では難しくなり、省略されてしまう事が多いようです。しかしそれでは決して信頼性のある治療はできません。

そこで私達は糸の他に半導体レーザーも応用し、すべてのケースで確実にこの削りシロが出てくるようにしています。このビデオでレーザーを使っているのは、深い虫歯があったところです。

さてこの削りシロの型取り材はたいへん薄くちぎれやすいので、必ずシリコン製の型取り材を使います。このビデオにも出てくる黄色いやつです。

保健診療ではコストダウンが優先されますので、普通は寒天製の型取り材が使われます。寒天は精度は優れているもののちぎれやすいので、薄いところには使えないんですね。

ビデオの最後には奇麗に装着された冠が映っていますが、歯肉の中で歯と人工物がピッタリ合っているかはもうわかりません。ごまかしはいくらでもきくのです。しかし結果は数年後に現れます。

歯肉圧排は省略しても患者さんにはわかりません。むしろやらない方が早く簡単に終わるので、患者さんには喜ばれるかもしれません。しかしそのために失うものは「信頼」です。合っていない冠がどういう事になるかはVideoCast312でお届けしたとおりです。

良く、保険診療と自由診療(自費診療)の違いは材料だと説明される事が多いようですが、私はそれだけでは無いと考えています。一番重要なのはそのためにどのようなテクニックが使われるかだと思います。これは5月22日投稿のモノから行動の時代への考えと全く一致します。

今まではテクニックの大切さを皆様に説明する事は困難でした。だから解りやすい材料の差だけが語られてきて、それだけが一人歩きをしてしまったのでしょう。

しかし今は違います。顕微鏡で細かい部分を拡大しながら確実に治療かでき、しかもそれをビデオで記録し、Webにあげる事もできるようになりました。だれにでも解る説明ができる時代になった、本当にすごい事ですね。

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ところで、現在作成中の自由診療Q&A:7には、図解でこれらを掲載する予定です。すでに診療室では手作りのパンフレットを皆様にお配りしているのですが、これをWeb用に編集してアップする事にしています。パンフレットもそのままPDFにしてダウンロードできるようにいたします。