2010年8月30日月曜日

口腔インプラント学会・学術シンポジウム


インプラント学会の視点での歯の保存、これは見逃せません。なんでもかんでもインプランにしてしまおうという昨今の風潮に、学会が自問自答するすばらしい企画です。場所は東京国際フォーラム、歩いて10分、私は恵まれています。


副題として「〜インプラントは天然歯を超えられるか〜」という無茶なタイトルがついていますが、そんなはずはありませんよね。天然(自分のという意味)の歯を人工物であるインプラントが超えられるはずはありません。

ただしそれは「健全な天然歯」と比べたらという意味。抜歯するべきかどうか迷うような病的な歯と比べたら、インプラントにはるかに分があります。

例えば感染源がとりきれない歯周病が進行した場合、根管治療ができない場合、歯自体が薄く割れそうな場合などが考えられます。これらを無理を承知で使うのが得策なのか、それともさっさとインプラントに置き換えるのか、シンポジストの先生方も悩み続けます。

けど結局は患者さんとよく話をして、どうするか決めるしかない、答えってきっとないんだと思います。

けど日本の傾向として、インプラント優先で考えられているのは間違いないと思います。日本は健康保険に技術評価がまったくないために(物売りとまったく同じと考えられている)、保険の範囲を超えてまでして歯の保存をいっしょうけんめいする先生が非常に少ないからです。

信じられないかもしれませんが、例えば根管治療の費用は諸外国のたった1/8の金額ででしか行う事ができないのが日本です。まともな治療ができるはずはありません、日本がインプラントに偏重する大きな理由の一つです。

だから私のところには再治療の依頼が多く、根管治療が手遅れでできなくともたとえば歯根尖切除(歯根端切除)という手術で助かる歯はたくさんあるのです(詳しくはコチラ)。

いずれにせよ、この歪な現状を再認識しようと言う今回の企画はとても意義深いものだと思いました。

ただ主催者は壇上から「多くの方に集まっていただきありがとうございました」と言っていましたが、会場が広かったとはいえけっこう空席があり、学会員は無料という太っ腹にもかかわらず参加者が少ないなというのが私の感想です。やはり日本では歯の保存に真剣に取り組む人が少ないのだなと思わざるをえない、考えさせられる一日でした。