【医療ルネサンス 読売新聞】
歯がなくなるにはそれなりに原因があります。それが歯周病であった場合は、原因が解決していない事には同じ理由でインプラントも感染してしまいます。そのような話しが患者さんには伝わっていなかったのだと思います。
歯のメンテナンスは簡単に行かない場合が多いものです。自分ではうまくやっているつもりでも、私達からみるとまったく手が届いていない部分がたくさん発見されます。
私達はそれらが解決していないうちは、インプラントであろうと入れ歯であろう治療に入る事はありません。ですから多少の時間が必要ですし、患者さんはその時間を利用して自分自身を見直していただく事になります。そこまで慎重なのは、いろんなトラブルを見聞きしているからに他なりません。新聞はようやくそれを捉えたという事です。
しかし間違っていただきたくないのですが、メンテナンスがたいへそうだからインプラントはやめて入れ歯やブリッジにするというのはたいへんな誤りです。入れ歯もブリッジもメンテナンスをしなければ同じようにトラブルに巻き込まれます。インプラントだけがメンテナンスが必要なわけではないのです。
この記事ではインプラントだけがトラブルメーカーのような印象ですが、決してそうではありません。
それからこの記事の患者さんが大学で受けた治療は、インプラント周囲炎だけではないはずです。残っている他の歯にもそれに準じた治療があったはずです。インプラントだけが特別なわけではないのですが、インプラントだけが悪者扱いにされかねない内容ではあります。
「インプラントがぐらつく」という記載がありますが、インプラントは歯と違い「ぐらつく=骨とインプラントが完全に離れている」事を意味します。したがって本当にぐらついた時には治療はできず、撤去するしかありません。歯のようにぐらつきに気がついてからでは完全に手遅れです。
インプラント周囲炎の治療は非常に難しく、感染源をインプラント本体から取り除く事はたいへん困難です。まずはそうならないように注意する、たとえなったとしても初期の異常を見逃さず、適切な治療ができる歯科医院を選択する事が重要です。