「長命から長寿時代へ ◆医がくと健こうの泉◆」というこの本、実は亡き父の著書であります。
労働衛生や環境医学が専門の父らしく現代病に対し平易な文章で綴られており、既に出版から10年が経とうとしていますが今読んでも「なるほどな〜」と思う所がたくさんあります。
項目だけざっとみても、老化・脳梗塞・鬱・高血圧・肥満・心筋梗塞・不眠・癌・白内障・アトピー・肝炎・脳死・寄生虫・環境ホルモン・エイズ・糖尿病、、、とコレデモカと言わんばかりに解説されています。
それもそのはず、本書は新潟県の社会保険の機関誌に昭和50年から延々と連載されていた内容を加筆修正したもの、時節的な内容が多く、その膨大な原稿を一冊にまとめたものなのです。
タイトルからしてだた命が長くあるだけではなく、長く「寿」が続く事がたいせつという事ですね。今日ますます重要さを増す話です。
父は人前で話す事も多く、専門家に対してだけでなく一般市民への講演も多かったようです。残念ながら私は一度も聞いた事はなかったのですが、そのおかげで誰にでも解りやすい話の方法を得たのではないかと思います。
しかしあれだけ話をしていて、一般向けに上梓したのはこれ一冊だけ、もっと書いておいてくれればヨカッタノニ………
父は50歳過ぎで大学教授を辞めてまでして開業したバリバリの現場主義の人でした。あくまで臨床にこだわり、患者と接する事が何より大切と肌で解っている人でした。ですから本の内容も非常に親身になっているのでしょう。
私は父に何を教えられてきたわけではありませんが、「病気は外からやって来た時代から、知らず知らずのうちに自分で勝手に造っている時代に変わった、その事に気がつかなければ政治も経済も良くならない」という意見で完全に一致しています。
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本書の冒頭にはこのようにあります。
「健康が私どもの最大の財産であることは何も今更申すまでもありません。
健康を損じたとき初めてその有難みがわかるといわれますが、これは恰も空気や水あるいは親の恩にもたとえる事ができましょう。
なかには『健康が幸福のすべてではない』などと反論される人もいます。たしかにその通りです。
然し、よく考えてみますと『健康なくしてあらゆる幸福もすべて無に帰してしまう』ことに気がつきます。
どんなに財産があろうと出世しようと、悉くが健康という大基盤の上にポツポツ咲いた幸福の花に過ぎぬ事が理解できます」
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この本は既に絶版となっており出版元の考古堂にも在庫は無いようですが、以下のネットショップにはまだあるようです。皆様にもぜひお読みいただきたい一冊です。
PS:本書の表紙と挿絵はすべて母が書いたもの、表紙は今は父が眠る小針浜から新潟市の中心街方面を観た絵、右上に遠く見える尖ったビルはラフォーレ原宿・新潟があるNEXT21タワーです。
なぜこの絵を表紙に選んだのかは解りませんが、もしかしたら新潟の経済の発展を願っていたからなのかもしれません。父は今もこれと同じ景色を見続けている事でしょう。