2010年11月14日日曜日

TNF-α(ちょっと難しいと思うんだが…)

とくダネ!で歯周病と糖尿病をとりもつ悪い奴として紹介された「TNF-α」、うーん、難しいです。こんなに難しいものが朝の番組で取り上げられるとは思ってもいませんでした。あまりに難しいので、アナウンサーの山本さんも一瞬つっかえてしまいました。

あの短い時間でコレを理解できた方はおられないでしょうね。そこで前回のオープンセミナーでその解説をしました。ここではその内容をちょっとだけご紹介いたしましょう。


TNF、英語の「Tumor Necrosis Factor」の頭文字をとったものです。日本語訳では「腫瘍壊死因子」、え、読み方がわからない?「しゅよう えし いんし」と読みます。

腫瘍、まぁ平たく言えば癌なんかだと思ってください。それを壊死させる(破壊しちゃう)因子です。具体的には白血球から出てくる特殊なタンパク質(サイトカインていうカッコいい名前がついています)の一種です。

「腫瘍を壊死させるんだから、これはいい奴だ」と思いますよね!?そう、これが発見された頃(1975年らしい)はそうだったらしいです。ところがいろいろ調べてみるとどうもいい事だけではない、つまりTNFの働きは腫瘍を破壊するだけではない事がわかってきました。

具体的には高脂血症・動脈硬化・間接リウマチなどの膠原病(これもちょっと難しい病気ですが)、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とかほんとうにいっぱいあります。

そしてテレビでも紹介されたように、インシュリンの活動を妨害して、糖尿病をさらに悪化させてしまいます。糖尿病は全身の蛋白質を砂糖漬けにしてしまいますので、白血球の動きも悪くなり、歯周病菌に対抗できなくなる悪循環に陥ります。

けどTNFにはまだいい面もいっぱいあって、腫瘍を壊死させる以外にもケガを治したり免疫の重要なステップの一部分でもあります。つまりTNFとは人間が生きて行く上で必要なものなんですね。最初からこんな名前つけなきゃ良かったと思いますが、今更変えられないんでしょう。

ちなみにTNFのうちαとはマクロファージという種類の白血球から出るサイトカインで、リンパ球という種類の白血球から出るTNFは、TNF-βといいます。


さてそれではTNF-αが増えすぎたら妨害する薬があればいいと考えますよね。それが実はあるんです。しかもかなり昔から。それがサリドマイドです。

「え〜ッ!」と思われた方もいるでしょう。あのサリドマイドですよ!若い方はご存知ないと思いますが、1960年頃に睡眠薬や胃腸薬に配合され、手足のない子供が産まれるというたいへんな薬害となった薬です。もちろん即販売中止です。

サリドマイドがTNF-αをたたく事が解ったのはその後で、現在は抗がん剤として、また糖尿病・リウマチ・エイズの治療に有効である事が解ってきました。薬とはホント、両刃の剣です。


さて、一般にTNF-αとは悪玉と捉えられているようです。しかしこれは人間が生きて行く上で必要なものであることは上で書いてきた通りです。

似たような考え方で活性酸素というのもあります。共にこれがないと人間は生きて行けません。

つまりどんなものでもそうですが、適量というものがあります。それからタイミングも大切ですね。病気でTNFのバランスが崩れて、それがずーっと続いているから悪いんです。自然なバランスを崩す生活をしている人間が一番悪い、決してTNF-αが悪いんじゃないんです。

皆さんもぜひTNF-αをへんに増やさないような生活を考えてみましょう。

それから脂肪が多い方、脂肪細胞が多いだけでTNF-αは増えてしまいます。見た目に太っているというのではなく、内蔵脂肪が多い隠れ肥満方、要注意です。