2016年10月11日火曜日

「血糖値スパイクが危ない!」を観て、どうでしたか?



知らない人は超オドロキ、知ってる人はぜんぜん物足りな〜い、あるいはそれは違うだろう?…そういう番組だったのでは。両者のギャップは激しく、これが情報格差というものです。

すでに糖質制限を実行し成果を出している人たちが不満の声を上げるのは当然なのですが、しかしここはNHKという立場を考えると、当たり障りのない無難な落としどころではなかったかと思います。

10月8日に放送された「NHKスペシャル 血糖値スパイクが危ない〜見えた!糖尿病・心筋梗塞の新対策〜」、患者さん全員に観るように勧めた立場上、ちょっと感想と補足を。


まず驚いたのは、生番組であったこと…あ、これはどうでもいいですね。

次に驚いたのは、別所哲也さんが意外に太っていたこと… 私は毎朝 J-WAVE を聴いているので親しみがあるのですが、血糖値と直接結びつく話ですから、これを機に少し絞れるか?などと期待してしまいます。

さて、やっと本題に。。。

私の空腹時血糖値


まず、血糖値が鋭いピークでビシッと上がることがある!これは事実です。このような急激な変化は、普通の検診で判ることはありません。検診の項目とは「空腹時で安定している時(空腹時血糖)」と「2ヶ月くらいの平均(HbA1c)」だけです。

血糖値が150を超えると「活性酸素」が一気に増えて、血管の内側(血管内皮)が炎症を起こします。そこにLDLコレステロールが修復のために集まってきて、それが積もりに積もって…簡単に言うとそれが動脈硬化や梗塞です。これは当然歯肉や歯髄にも起きているはずなのですが、研究はほとんど進んでいないようです。

ちなみにLDLコレステロールは昔「悪玉コレステロール」と呼ばれていましたが、これはひどい間違いで、本当に悪いのは血糖値スパイクによる活性酸素の発生(酸化ストレスって言います)で、LDLコレステロールが血管を修復してくれなかったら、その人の命は無いわけです。

で、この鋭いピークはなぜ起きるのか、肝心なその言及がありませんでした。これでは予防ができません。原因は大まかに言うと、

  1. 白米や精製糖など純化した糖質が一般化しており、これは吸収が早すぎてインスリン分泌が追いつかない
  2. 糖尿病でなくても、インスリンの反応が鈍い人がけっこういる
  3. リーキーガット(腸管浸漏)症候群で、腸のフィルターが破綻しており、糖が勝手に血流に乗る
と言ったところでしょうか。


血糖値が上がってしまった後の対策として、血糖を直ちに消費するために「ちょこちょこ動きましょう」というのがありました。それは間違いではないのですが、根本的に「糖質を抑えれば良いだけ」ということは伏せられていました。

つまりNHKとしては「糖質を制限しましょう」と言ってしまうと、それで不調を訴えられしまっては大責任問題となるわけです。たった73分の番組で誤解なく説明するのは確かに無理です。

糖質制限ダイエットを中途半端な知識で自己流でやった結果、フラフラになって失敗するかたが多いことが分かっています。これはエネルギーを糖質に依存していた人が、いきなりケトン体に切り替えられるわけではないからです。

よくある誤解で「脳のエネルギーは糖質だけ」というものがあります。実際には「脳のエネルギーはケトン体(脂肪の代謝物)と糖質」なのですが、従来の常識をひっくり返すような見解を公共放送がいきなり言うことは難しかったようです。

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番組で最も問題があると感じたのが、血糖値スパイクの「下のピーク」はナイように伏せられていたことです。

番組で出てきた折れ線グラフはには急上昇のスパイクしかなく、2時間後には平常時に戻っていました。これは大きな間違いです。

急上昇した後には必ず急降下がある、すなわち下にもスパイクが出ます。そしてまた急上昇が始まります。これを「反応性の低血糖」と言い、低血糖から離脱するために急に出てくる血糖値を上げるホルモン(アドレナリンやコルチゾル)の影響が無視されていました。

また、この反応性低血糖から離脱できない方も多く、慢性疲労や精神障害など、実に様々な不定愁訴の原因となり、歯科治療時にも問題となっています。

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今回の番組は血糖値の上のスパイクによる、活性酸素の害にフォーカスしたものでした。

すでに糖質制限食を実行し栄養に詳しい人には、なんとも物足りない番組ではあったと思います。

しかし何も知らなかった人が良い意味で危機感を持ち、これから自助努力で変わって行くきっかけとなったことは、たいへん良かったと思います。

物足りないと感じた方も多いでしょうが、あまり怒りを露わにせず、自分が駆け出しのころを思い出し、多くの時間を使って自己防衛の手段を学んできたことを思いだしてみましょう。そうすれば、その努力が、たかだか73分の番組で万人に誤解なく伝えられるはずがないことがわかると思います。

そんな方も、いつかこの番組をきっかけに「気がついた」って人に会ったら、優し解りやすく教えられるスキルを今から身につけておくことが大切でしょう。

私はこの番組の評価を80点としたいと思います。ただしそれは条件付きで、第二弾・三段をしっかりやることが前提です。

民放も二番煎じ番組を考えるかもしれませんが、ぜひNHKが率先して、異常な食文化に切り込んでいってもらいたいものですね。

参考サイト:血糖スパイク《DentalNutrtion.jp》