2016年4月12日火曜日

日本顕微鏡歯科学会オリジナルスクラブ


いよいよ来週末と迫ってきました、第13回 日本顕微鏡歯科学会ですが、なんと大会を記念して、オリジナルスクラブが作成されました。


学会オリジナルグッズというものは海外ではよくあるのですが、日本ではほとんど見かけないですね。先日のサテライトセミナーで初披露となったのですが、販促用に送られてきた製品を試着して撮影してみました。


私は白衣派なので、スクラブって初めて着ました。ま、Tシャツ感覚で軽いですね。


スクラブは本来は手術着の下着なので、この上に何かを着るのですが、なぜかこのまま診療をする先生が増えています。歯科ではあまりに無防備だと思うのですが、どうなのでしょう。しかし実際着てみると新鮮ですね。




1着¥4,500ですが、2着以上だと1着あたり¥4,000+オリジナルエコバッグ付きと、お得になります。国境なき医師団とのコラボレーションで、1着につき¥300の寄付となります。もちろん学会側に収益は一切ありません。


海外製品なのでサイズはS~4Lまで6種類もあります。サイズが不安な方は事前発注はせず、当日会場で試着したほうがよろしいでしょう。

色は7種類と豊富で、全色揃えたくなる人もおられることでしょう。


胸にはもちろんポケットがありますが、首の左下にも小さなポケットがあり、iPhone 6 がちょうど収まります。

大会側では30着も売れればということだったそですが、10日の段階ですでに80着を超える受注が入っているそうです。やっぱりスクラブって人気あるんだなぁ…

このスクラブは大会参加者限定販売で、本日12日までの申し込みであれば大会当日の受け取りが可能だそうです。

第13回 日本顕微鏡歯科学会学術大会は、ニューオータニイン札幌にて4月23,24日開催です。みなさん、札幌でお会いいたしましょう!








2016年4月2日土曜日

医療の大前提


食べ物がどんどんおかしくなっている、その結果、人も社会もおかしくなっている、そこに気がついた人が増えています。

しかし医療人でそこに気がつき、実際に診療に活かしている人は、まだまだ少数です。そのような教育システムがなく、また健康保険にそのような考え方がないからでしょう。

栄養と健康に関する正しい知識は、医療人よりも一般人の方が持っているのではないか、そんな場面にさえ出会います。医療はたいへん遅れています。

ほとんどの医療は、患者さんは普段から問題ない食事をしており、栄養が摂れている事を前提で進められています。

内科・外科・歯科という医療だけでなく、漢方・鍼灸・整体などの東洋医学も、エステ・酸素カプセル・水素療法などの健康法も、そして女性が喜んで使う高級化粧品・雑誌の広告を賑わす健康補助食品などなど、みんな栄養の欠如や過多を無視して進めようとしています。いったいどれほどの効果があるのでしょう。

医療は、重大な見落としをしてきました。それが栄養です。

何か手術をする前に、副作用もある薬に頼る前に、まず自分の体に足りない栄養や、邪魔しているものを見つけてみませんか?

隠れ栄養失調が解決していれば、あなたが受ける医療は最大の効果を発揮するでしょう。

オープンセミナー vol.60 隠れ栄養失調から身を守る は5月18日(水)11時から、参加は無料です。



2016年4月1日金曜日

5月18日(水)オープンセミナは11時より!



栄養療法も、だいぶ浸透してまいりました。二回目の検査の方も増えてきて、改善傾向が見えてきました。

歯科はもちろん、医科でも、そして社会全体が、栄養の問題に気がついてきました。しかしまだまだ「なんとなく肉食」「なんちゃって糖質制限」という感じで、誤った知識でかえって調子を崩す方がたくさんおられます。

次回のオープンセミナーも歯科口腔外科からの栄養医学療法に特化したお話しをいたします。

初の試みとして平日11時からの開催です。主婦の方には来やすい時間ですので、この機会をお見逃しなく!もちろん無料ですよ。




Open Seminar Vol.60 

隠れ栄養失調から身を守る

昨年より開始した栄養医学療法は、すでに50人 近い方がお受けになりました。初回の検査 だけでは解らない事も多いのですが、 それでも様々な栄養の過不足が浮き彫りになり、驚いています。

医療は、皆様が普段から栄養を問題なく摂れている事を前提で進められてきました。

しかしいつも「Blog:歯界 良好」にも書いているよう に、今私たちの所でも不定 愁訴で治療が中断したり歯 ギシリで歯を壊す方や歯周 病やインプラント治療に難 渋する方がたいへん多く、そ のような方に栄養に重大な問 題がある事が解ってきたのです。

オープンセミナーでは、最近よく聴く糖質制限オーソモレキュラー療法=分子整合栄養医学などの栄養の話をベースに歯科特有の 話を交え、薬に頼らない健康の考え方と、すでに始まっている栄養 医学療法の概要と、結果についてもお話いたします。

また今回も栄養カウンセラーとしてご活躍のあかすともみさんをお招きして、最前線について伺います。 今回は初めての試みとして、主婦の方にも参加しやすい平日の昼の開催です。

518(水)11:00 スタート

場所:吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック
   東京都中央区銀座3-11-16 銀座Saliceビルディング2F 
   地図を見る

参加無料

2016年3月21日月曜日

隠れ栄養失調の読み方・ 3 BUN(尿素窒素)


AST と ALT」からのつづきです。

BUN(またはUN=尿素窒素)という項目も、よくある検査の一つです。一般的には腎臓のフィルター機能がうまく働いているかを診る指標で、フィルターが詰まっているような状況では血液中のBUNが上昇します。

だいたい22以上になると、ウーーーームという事になるのですが、こちらも前項のAST ALTと同様に「それ自体が何なのか」という使われ方がされていません。ということで、栄養医学療法はそこに着目します。

総蛋白のところで書いたように、私たちの体は新陳代謝により、常に新旧が入れ替わっています。古いタンパク質が分解され、同時に新しいものが造られ、置き換わります。

その過程で最終的に「BUN=尿素窒素」というものが造られ、腎臓から排出されます。

腎臓の機能が正常ならば、BUNはフィルターで分別されてオシッコになって出て行きます。フィルターがおかしければ(腎臓の機能が低下していれば)血液中にいつまでもBUNが残っており、数値が上がったままになります。

すると腎臓の機能が正常ならば、BUNの数値はタンパク質をどれくらい動かしたか、つまり代謝量を反映することになります。数値が低ければ代謝量が少ない=活性が低い=不定愁訴が出やすい、という事になります。私たちはその原因がどこにあるのかを探します。

大きな病気がなければ、一般的にBUNが低い原因には以下のことが考えられます。

  1. 単純にタンパク質を食べる量が少ない
  2. 食べるタンパク質の種類が悪い(必須アミノ酸の欠如)
  3. 胃炎腸炎で吸収率が低下している
  4. 高齢で吸収率や利用率が低下している
  5. ビタミンB群不足

筆頭はそもそもの食べる量の不足ですが、では何でもいいからタンパク質を食べれば良いかというとそうではなく、必須アミノ酸が全て含まれている事が重要です。これについてはまた別に書く事にしましょう。

それから、せっかく良いタンパク質を食べているのに、胃炎や腸炎で消化吸収が悪かったり、高齢者で利用率が落ちているとBUNは上がりません。ですから高齢になるほどタンパク質は食べてくださいという事になります。

当然よく噛まなくては消化吸収は落ちますし、歯が悪い人は食べる量が少なかったりで、そのまま利用率の低下となります。

それから胃にピロリ菌がいると胃炎で消化が悪くなり、タンパク質が吸収されにくくなります。

そしてもちろん、前項で書いたビタミンB群の不足です。代謝が落ちるので、当然BUNも下がります。


BUNはだいたい18あると安心ですが、残念ながら低い方しか診たことがありません。私が今まで診た一番低い方は7で、さすがにいろいろな不定愁訴をお持ちで、結局通院が途絶えてしまいました。

7ということは腎機能を診るための基準値も下回っているのですが、内科では何も言われなかったそうで、さらに婦人科で不妊治療も受けておられました。栄養療法に詳しい婦人科の先生に言わせれば、無茶な話です。当然歯科治療も厳しいはずです。

では逆に高い方は、以下のような事が考えられます。
  1. 本当に腎臓が悪い
  2. 低栄養や過度なストレスで、体が筋肉などを分解してまでも必要なタンパク質を確保している
  3. 胃腸から微少な出血が持続している
  4. 甲状腺機能亢進症
  5. 脱水
  6. スポーツ選手などで意図的に高タンパク・高ビタミンにしている

たとえば、一見普通そうな方が初診で来て、BUNが22を越えていたら腎臓の機能を疑った方が良いでしょう。

本当に腎臓が悪いと困りますので、クレアチニンという項目と合わせてeGFRという数値を算出します。これが50以下だと確かに腎臓の機能障害が強く疑われますが、そうでなければBUNはそのままタンパク質の代謝量の指標としていいようです。

タンパク質を食べる量が少なすぎると、体は筋肉を分解してまでしてタンパク量を確保しますので、BUNが上がってきます。ですから食事内容を知る必要があるのです。

また意外なのは、胃腸炎で出血が持続している方。出血した血液の良質なタンパク成分を腸で再吸収していますので、タンパク質を食べている以上の値が出てきます。

おもしろいのが6番目で、筋肉増量など意図的に栄養を入れている人は21くらいにまで上がります。私も意図的にビタミンB群を摂っておりますので、21まで上がった事があります。もちろん何の問題もございません。

タンパク質は体を作る原材料で、食いだめができないので、毎日きちんと摂る必要があります。だいたい体重1kgあたり1~1.5gは必要です。

誤ったダイエットや糖質制限でタンパク質量が不足している方はBUNが落ちてきますが、たとえばBUN が9の人は、体重1kgあたり0.5gのタンパク利用量なのだそうです。必要量は1.0~1.5gですから、これでは1/2~1/3という低栄養です。

牛肉の20%がタンパク質だと仮定すると、体重50kgの人は1日に250~375gの牛肉をたべないと十分な代謝量に達しない事になります。

歯科口腔外科においてタンパク質の代謝は、傷の治り・免疫・神経伝達などに直接影響します。BUNは総蛋白・AST ALT などと合わせ、隠れ栄養失調の状況を早めに掴む事に有効です。

特に歯周病治療やインプラントをご使用の方には、その長期維持の指標として、必ず把握しておきたい項目です。

もちろんBUNも上がる要因と下がる要因が同時にくるとマスクされますので、他の検査値と合わせて注意して読んでいく必要があります。

次回は意外な盲点である「鉄」について書いてみます。

追記:栄養療法に関するさらい詳しい情報は姉妹サイトDentalNutrition.jpに記載されています。

2016年3月20日日曜日

3月27日は札幌サテライトセミナーへ


来週の日曜日に迫ってまいりました、日本顕微鏡歯科学会の札幌サテライトセミナーの準備をしています。

サテライトセミナーは顕微鏡がまだ普及していない地域に講師を派遣し、顕微鏡を用いた治療の周知普及を目的に行われています。今まで青森・山形・鹿児島で行われてきましたが、第4回目となります。

今回のセミナーは、4月23日より開催される札幌での学術大会のプロモーションも兼ねています。いきなり大会に来てハイレベルな話を聞いても、初心者の先生にはちょっとハードルが高いかもしれませんので、イントロダクション的な話になります。

ちょうど4月より健康保険に顕微鏡使用による点数加算が一部に加わりますので、興味のある先生は多いのではないでしょうか。

当日はもちろん各社顕微鏡の展示がありますので、北海道の先生はビッグチャンスですね!

非会員は¥5,000ですが、会員は無料ですので、当日入会で聴講が無料となります。しかもスタッフ2名までが無料とは、なんと気の利いた学会なんでしょう!

今回も遠方からの参加登録があり、ありがたい話です。お申し込みは以下のパンフレットにご記入のうえFAXでお申し込みください。


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顕微鏡 一部保険導入決定!

日本顕微鏡歯科学会主催 サテライトセミナー

札幌での学術大会迫る!この機会に「顕微鏡歯科治療」について知ろう!


4 月 23、24 日に札幌で開催される日本顕微鏡歯科学会学術大会 に先立ち、顕微鏡歯科治療の魅力を地元北海道の皆様にお伝えし たいと思い、事前セミナーを開催することになりました。 顕微鏡がもたらす感動的な歯科治療を動画でご覧いただき、学術 大会参加をさらに有意義なものとしていただければ幸いです。

【内容】
 1. 顕微鏡歯科治療とは
 2. 高い成功率の歯内治療
 3. 確実な2級コンポジット レジン修復
 4. 安全なサイナスリフト・ インプラント周囲炎治療
 5. 顕微鏡と経営

【講師】
 北村 和夫 本会理事 日本歯科大学附属病院総合診療科教授 
 吉田 格  本会事務局長 東京都中央区開業

【日時】2016年3月27日(日)13:00~16:00

【場所】北海道医療大学 札幌サテライトキャンパス
   札幌市中央区北4条西5丁目 アスティ45 12F
   tel 011-223-0207

【受講料】会員:無料 非会員:5,000 ※当日入会の場合は入会金に充当します。
     歯科医師以外のスタッフ(歯科衛生士、助手)は2名まで無料

【協賛】札幌歯科器材株式会社 株式会社ジーシー 株式会社松風
    デンツプライ三金株式会社 白水貿易株式会社
    株式会社モリタ 株式会社ヨシダ

【申込・問合せ先】札幌歯科器材株式会社 (担当 中田) TEL:011-231-4033



2016年3月18日金曜日

隠れ栄養失調の読み方・ 2 ASTとALT


総蛋白」からの続きです。

血液検査で必ずと言ってよいほど測る項目に ASTとALT があります。昔は名前が違って GOT と GPT と呼ばれていましたが、同じものです。

両者とも、一般的には肝炎を診断するときの代表的な指標です(ほかにもいっぱいありますが)。肝臓の細胞が炎症をおこし壊れると、その中にあるASTとALT というものが血液中に漏れてくるので、通常よりも数値が上がります。だいたい40を超えると、ちょっとどうしようかなという事になりますが、それ以下で基準値に入っていれば機械的に異常ナシと言われるのが普通の検査の結果です。

しかし栄養医学療法はそうではなく、ASTとALT とは本来何をしているのかという点に着目します。他の検査項目や食事記録と照らし合わせ、それがきちんと働いているかを読むわけです。

では本来の働きとは何か。いくつかあるのですが、代表的なのは、肝臓でアミノ酸を他の形に変換する酵素(触媒)としての働きです。

ALTはアラニンというのをピルビン酸というものに造り変える酵素で、ASTはアスパラギン酸というものを同じくピルビン酸に造り変えます。ざっくり言えば、タンパク質をきちんと動かせるか(代謝っていいます)の指標となるわけで、これは生命活動の基本です。

このピルビン酸は連続して糖(グルコース)に変換され、血糖値(血液中の糖分)を一定量に維持します。これを「糖新生」と言いますが、AST ALT の動きが悪いと糖新生までうまくたどり着かず、食後4時間くらい経って血糖値が落ちてきても歯止めがきかずに下がりすぎたりします。ここで眠気やハギシリ・不定愁訴が出やすくなります。

おもしろいのは、ALTは筋肉の中ではピルビン酸をアラニンに造り変える酵素として働きます。つまり、さっきの肝臓とは逆です。そのアラニンは血流に乗って肝臓に戻り、またピルビン酸から糖へ変換…つまりグルグル廻っているのです。これを「グルコース アラニン サイクル」と呼んでいます。

ということは筋肉の量がある程度ないと、タンパク質はうまく廻らない=全身の代謝や活性が低い、すなわち不定愁訴が出やすいという事になります。

タンパク質がどれだけ動いているかを診る指標としては、ほかにBUN(尿素窒素)とか LDH(乳酸脱水素酵素)なども必要です。特にBUNは重要なので、また後でお話しいたします。


肝機能に異常がなく正常にタンパク質が動いているとすれば 、AST も ALT もだいたい20~25になることが経験的に知られています。



ところが調べてみると、かなり低い方が大勢いらっしゃいます。15以下ともなると、歯周病やインプラントの長期維持管理はちょっと難しいのではないかと思います。細菌からの攻撃に耐える力もだいぶ落ちているはずです。基準値には入っているとはいえ、それは肝炎の可能性を診るための指標ですので、タンパク質の代謝を考えれば明らかに低いのです。


さてほとんどの場合、ASTよりもALT の方が低い事に気がつきます。実はその理由が重要です。

採血をすると検査会社の営業マンがきて、採血した容器(採血菅)を会社に持って行きます。そこには自動測定器があって、多くの項目がすぐに出てきます(日数がかかる検査もありますが)。

ここで一つ疑問があります。採血〜測定には数時間のタイムラグがありますが、その時間内に血液が変質することはないのでしょうか。ナマ物ですから時間だけではなく、運搬中の振動や気温による影響はないのでしょうか。つまり、採血後にすぐ測るのと数時間後での違いはないのでしょうか?

実は「ある」のです。

特にALTは血液中のタンパク分解酵素の影響をモロに受けて、値がどんどん下がっていきます。これでは信憑性がありません。そこで分解されないように工夫した専用の採血菅があるのですが、なぜか日本だけはそれを使えません。理由は不明です。

ということで、日本の検査データーは国際的な研究や診断と比較もできない不思議な状況なのです。コマッタコマッタ(´・_・`)

で、さらに重要なのはここからです。

先ほどの採血菅の工夫とは何かと言うと、中にビタミンB6が入っています。ALTはこのビタミンB6があることで初めて働き安定し、タンパク質分解酵素の影響も受けにくくなります。つまり時間の影響を受けにくくなり、正確な値が出てきます。

すると、そうではない日本の検査においてASTとALTに差がある方は、最初からビタミンB6が不足していると予想がつきます。

事実そのような方に肉など十分なタンパク質食べていただきながらビタミンB6をサプリメントで補給していただくと、数値が20くらいで揃ってくる同時に、不定愁訴のいくつかは解決しています。

ビタミンB6はいろいろ理由があって、他のビタミンB群(1.2.12.ナイアシンなど)とセットで不足します。ですから市販のサプリメントのほとんどがセットになっています。

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ASTとALT の読み方が難しいのは、例えば何か薬を飲んでいると肝臓に負担がかかりそれだけで数値が上がる事です。隠れ栄養失調があるのに薬を飲んでいると、下がっているところに上がる要因が加わるので、見かけ上は良い値に見えることがあります。これを「マスクされている」と言い、マスクに騙されないようにするためにも他の検査データーや食事記録と照らし合わせる必要があります。

γ-GTPという検査項目があるのですが、これとAST ALT の数値が揃うと、だいたい正常でマスクもないと判断します。

また溶血傾向がある方や、ランニングなどの衝撃で足の底で赤血球を押しつぶしている方は、赤血球中のASTとALT が壊れて漏れてくるので、測定値が若干上昇します。

検査とはすべてそうなのですが、初回はマスクが多すぎて判らない項目が多いことを念頭に置かなくてはなりません。初回の結果を推理して食事改善などをしていただくと、二回目の検査でマスクが外れてきて本来の値が出ることがよくあります。

歯科口腔外科学では以上のようなことを勘案し、タンパク質の代謝が円滑なのかを推察します。特に歯周病・インプラント・顎関節など、骨や歯肉という代謝する細胞を扱う分野での栄養は重要で、治療や長期予後戦略に役立てます。

現在も低栄養やタンパク代謝低下の危険性はほとんど知られていません。手術や材料の技術が上がったこともあり治療成績は決して悪くないので、栄養はとりたてて重要ではないと思われています。

ただしそれは5年予後くらいの話で、例えばインプラント周囲炎が目立って増えていることを考えても、対策としてもはや栄養は無視できない存在です。

また、最近多いと感じるのですが、大きなムシ歯の治療でもないのに、神経が損傷して抜髄になってしまうこと。これはまだ測った事がないのですが、隠れ栄養失調が絡んでいるのではないかと思っています。

ビタミンB群を適正量に保ちタンパク代謝を正常に近づけることは、栄養医学療法の基本的なことなので、サプリメントの出番が増えています。診療室ではヘム鉄と共に、常に在庫を切らさないようにしているほど重要な位置付けです。

ASTとALTはよくある検査であるにもかかわらず、本来の意味として活用されていないのが現実です。検査データがお手元にある方は上記を参考に、気になることがあれば栄養医学療法に詳しい医療機関で診ていただくことをお勧めいたします。

次回は、BUNについて書いてみます。


2016年3月16日水曜日

ビタミンDの効果に期待する


インフルエンザが一段落し、花粉症の季節となりました。隠れ栄養失調に気づかないままの方には、まだまだ厳しい日が続きます。

こんな時に何か一つだけサプリメントを試してみたいという方に、私はまずビタミンDを1日あたり5000単位はどうかと話します。

以前、朝日新聞の記事を元ネタに「くる病」の話題をとりあげましたが、ビタミンD不足はけっこう深刻なのではないかと思います。

ビタミンDは日光に当たる事で皮膚内で合成されますが、冬場は日には当たりませんし、夏場でもUVカットを塗っている方では、合成量はたいへん少ない事が知られています。食材からの補給も十分には期待できず、サプリメントに頼らざるをえない状況です。

私のところでは血液検査で「25OH Vit-D」という項目を用いてビタミンDの不足を診るのですが、基準値7~41に対し、10~20の方が圧倒的に多い。しかもこの基準値自体が非常に低く、じつは50以上欲しいのです。



栄養不足の概念は「欠乏症」の発見から始まりました。だからその欠乏症が表面化しなければ、足りていると判断されてしまいます。もちろんそれでは遅すぎです。

ビタミンDは骨と腸に作用して血液中のカルシウム濃度を維持する働きがが知られていましたが、それ以外にも免疫系と心臓血管へもかなり関与している事が解ってきました。

歯科口腔外科では、歯周病やインプラント治療で骨の代謝は重要ですから、治療前もメンテナンス時も25OH Vit-D の値を追い続けます。副次的にアレルギーやウィルスからの問題が解決される事もあるようで、期待しています。

実は今お一人ビタミンDのサプリメントを始められた方がおられ、ブログにアップされていますのでご紹介いたします。

《美肌へのアンチエイジングマニア》

一般に栄養は、具体的に欠乏症がでなければ「不足ではない」と判断されます。貧血がなければ鉄は十分・壊血病でなければビタミンCも十分とか、機械的な判断をされる場合がほとんどではないでしょうか。

そういう表面的な話ではなく、体の奥底で何が起きているのかが解らなければ、病気から歯を守る事はできない、今はそういう時代です。くる病になる前に、特にお子様をおもちの女性は注意してほしいものです。

ちなみに私個人の25OH Vit-Dは夏には70くらいあったのですが、12月の測定では50ちょっとまで落ちてきました。夏場は河川敷を走ったりしてそこそこの紫外線に当たっていたのですが、冬はまったく日に当たらないからでしょう。食材で摂るのは無理なので、今はサプリを入れて様子を見ています。おかげさまでカゼもひかず、花粉症もありません。

絶対に病気で休めない小規模医療機関ですから、せめてこれくらいはやって患者さんのお手本とならねばならないという事情もありますが。

体調が悪く、せっかくの診療をキャンセルするってもったいないですよね。皆さんもぜひ栄養医学療法を取り入れて、細胞ができるだけ正常な状態で治療を受けてみてください。