2012年9月2日日曜日

医療とブランディング


ちょっと遅い夏休みをいただいておりました。といっても診療が休みだっただけで、資料整理や学会の仕事など、普段なかなかできない仕事をさせていただきました。

さて目を通していなかった資料やメールを仕分けして思ったのは「誇大評価した自己紹介文」が非常に増えて来た事。そして「そのような文章を書く事を教えるセミナー」がけっこう人を集めている、つまり「いかに自分をブランディングするか」が加熱していることが伺えます。

例えば、、、
  • 〇〇の分野で特異な能力を発揮し、次々と奇跡を起こし続けている
  • 数々の伝説を造り上げ、顧客から絶大な支持を得ている
  • 〇〇のカリスマと呼ばれている
と、歯が浮くような(?)文章が平気で並ぶのです。ちょっと長い文章になると、、、
  • ダメ社員だった私がなぜ年商5億円をあげる事に成功したのかを公開します
  • 劣等感の固まりだった私をここまで変えたある習慣を今だけお教えします
みたいな。おそらく過去と現在の落差を強調し共感を誘う手法だと思うのですが、たとえ本当だとしても私はこのような事を言う人達とは距離をおきたいと思うのです。

しかしそのような人、もしくはそのような文章を読んでも何も違和感を覚えない人が患者さんとしていらっしゃる時代に、自分はどうあればよいのか悩んでしまいます。

また困った事に、上のような文面に近い表現をしている歯科医院さんが本当におられます。これでは厚労省がホームページ規制をかけてきて当然です。

【厚生労働省】

【m3.com】

なぜ医療機関ではそのような表現をしてはいけないのか?おそらくこの問いには誰もが答えられると思います。上記の自己紹介文にはかなりウソが含まれているからです。

必要以上に自分を大きく見せたい、そうでなくてもそれくらいの事は許されるし、真に受ける方が悪いくらいにしか思っていないわけです。

私は一頃異業種交流会というものにずいぶん顔を出しており、いわゆる「自分プレゼン」というものをかなり体験してきました。コーチングや自己啓発・経営セミナーなどが急激に増えだした時期でもあり、そのような肩書きの名刺がたくさん集まったものです(今もそうですが‥‥‥)。

当時そういう集まりに顔を出す歯医者は珍しかったのか、私の職業を知るなりアプローチしてくる人が少なからずおられました。しかし話をしていると「付け焼き刃」の知識だけの人は、素人の私でもすぐ解ります。たとえ需要があったとしてもこの人には頼みたくないなというのがほとんど。

十数年の時を経て、今この状況はますます加速しています。その手のセミナーはだれかの二番煎じかもしれませんが、決して悪い事ではありません。しかし競争も激化している。だからこそ彼らにも「自分ならでは」のブランディングが必要となり、それが行き過ぎになっているのではと感じます。

それにしても嘘に近いセールストークが幅をきかせていることに危うさを感じます。「この前の講演会が大成功で!」と言っていながら、主催者から全然そんな事はなかったという話を聞く事があります。自分を大きく見せたいがために、そのような事を平気で言う人は確かに昔から存在するのですが。

よく考えるとそういう人達の仕事は、たとえうまく行かなくてもそれを他人のせいにする事ができる逃げ道が用意されています。そんな人が医療のブランディングの話を薦めて来る時代です。

医療には確実な話は一つもなく、不都合な真実も含めて真摯に可能性について話すしかありません。お互いに不本意な結果になる事は想定内。なのに周りからは完璧を求められる。結果患者欲しさに自分を大きく見せる人もいるのです。

医療機関を選ぶのも非常に難しい時代です。しかしあまりにブランディングされた臭さに溢れたホームページくらいは見抜けるよう、患者さんには冷静になっていただきたい。企画されたブランドではなく、当事者の熱意から来る実績と共に湧き上がって来たブランド以外、医療には不要だと思うのです。

医療はやはり特殊な商売(?)で、他業種との感覚は今まで以上に開いて来たと感じるのは私だけでしょうか?