2015年1月4日日曜日

ZOO 1


コチラからの続きで、ZOOを使った症例の一番目、いきなりピンボケで申し訳ないです、左下の一番奥の歯の頬側にできた大きな虫歯の治療です。このような場所の治療は頬の粘膜が迫って来るので、たいへん治療が難しい所になります。

顕微鏡を使うのは当然として、虫歯は歯肉の下まで及んでいますので、ラバーダムは無効です。そこでZOOの出番となります。なお今回は虫歯を露出させるために、高周波メスで手前側の歯肉を一部どかしています。

00:56の赤いインクのようなものはう蝕検知液と言って、虫歯を染め出す役割をします。一般的には虫歯は黒いようなイメージをお持ちの方がほとんどだと思いますが、そんな事はありません。普通の歯の色をした虫歯も多く、特に若年者に多い急速に進むタイプの虫歯は顕微鏡を使っても見分けができません。そこでこのように染めて判別を行います。1回では不安だったので2回やってますが、案の定2回目も染まって来ました。染まった部分だけを狙って削って行きます。またブラインドになっている部分も鏡で確認して削ります。なお 00:19に出てくる器具は音波切削器で、ヘッドがないのでブラインドにならず重宝しています。

01:59では歯肉に黒い糸を挿入しています。これを歯肉圧排というのですが、虫歯の際と歯肉をこの糸でわずかに離して行きます。でないと後で盛るコンポジットレジンに過不足や接着不良ができてグチャグチャになってしまいます。この行程はラバーダムができれば不要ですが、できない場合は非常に重要な行程です。

02:07では先に歯肉をどかした部分からの出血を吸引管で吸っています。エアをかけると出血が散ってしまい、これから接着しようとする面が汚染され接着力が落ちてしまいます。私はこの吸引管をかなり頻繁に使いますが、ちょっと特殊な設備になります。しかし幸いZOOにはこの吸引管を同時接続できるZOOαという製品もあります。

あとは頻繁に歯肉からの出血を吸引しながら、注意深くコンポジットレジンを流して行きます。最近のクリーム状の製品はとても性能が良いので安心して使えます。なお築盛には細い針金(ブローチ)で過不足なく流し込んで行きます。

02:50、最後はラバーカップという器具で全体を研磨し、終了です。

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以上、いかがでしょう?どのステップを省いても、この治療はうまく行きません。

コンポジットレジンはたいへん優れた材料でありながら、扱いが難しい材料です。予後には思わしくない症例が数多く存在しますが、それは何かを省いているからでしょう。

ご覧いただいたビデオは3分程ですが、実際には麻酔を含めて1時間程かかっています。すなわち良い治療とはそれを実行するための充分な時間も必要で、日本の保険診療ではなかなか実現しづらい所ではないかと思います。

今回ZOOを使う事で良好な視界を得る事ができたと同時に、強力な全周吸引による防湿効果で接着剤メーカーさんが実験室で達成する理想に近い接着力が、口の中という悪条件下でも達成していると思います。