2015年4月12日日曜日

栄養療法 ただいま準備中・2 血液検査ってヘンだ?



こちらからの続きです。

以前にも書きましたが、私たちは歯科では珍しく昔から採血を行っています。少なくともインプラントや歯周外科を行うの予定の患者さんからは、直近の血液検査データーを取り寄せ、内科的な異常の有無を調べます。運良く会社で検診があった方はそれをお持ちいただき、主婦の方など検診をほとんど受けない方は、私が採血します。

検査結果で一番気にしていたのが先の糖尿病で、これは本にも書きましたが「隠れ糖尿病」を発見するためです。主にHbA1cという項目を見て、あとは肝機能を代表する項目などが基準値内にあれば、まぁそれで良し程度にしか考えていませんでした。今思うと幼稚な内容ではありましたが、それでも異常を見つけたことは何度かあり、昨今問題になっている安易なインプラント治療は本当に怖いなと思うのです。

普通の検査以外にも、採取した血液を遠心分離機にかけて、血液中の有効成分を濃縮し、傷を早く治すための材料を造るためにも行います。これはPRPとかPRF・CGFなどと呼ばれ、たいへん重宝しています。これについてはまたいつか書く事に。

で、検査の話に戻りますが、検査結果の右にはだいたい「基準値」というのが書いてあり、その範囲内であれはOKと思っていました。ところが、その決め方というのがけっこういいかげんであることを知りました。

まず、検査会社はたくさんあるのですが、会社によって基準値がだいぶ違います。中にはA社に出した検査は正常範囲内でも、B社では異常と判断されるものがあるほどバラツキが多い。

なんでそんな事になるか調べた先生がおりまして、「御社では基準値はどうやって設定したのか」と会社に訊いてみたそうです。すると、健康そうな自社員を集めて作ったのだそう…すごい大きな会社でもたったの40人程度、小さな会社では10人程度…で決めたのだそうです。基準値は男女で違いますから、その半数で決めたことになります。そんな決め方で良いのかと思ってしまいます。男女だけでなく年齢でも基準値は変わるはずなので、母集団はせめて1000人くらいは要る気がします。

本来なら基準値は会社任せにせず、学会などの学術団体が決めれば良いように思えます。しかし検査とは方法や試薬の違いで、確かに数値は一致しません。会社ごとに基準値が異なるのはもう仕方がない、ならばせめて母集団だけでも増やせればと思います。

しかし、以上はそれほど重要な事ではないかもしれません。こういう事もあるという事実を知っていればいいだけで、疑わしければ、別会社で再検査すれば良いだけです。本当に問題なのは、基準値の「読み方」があまりに単純すぎる事です。

私もおかしいとは思っていたのですが、基準の範囲内に入っていれば正常なのでしょうか?そんな事なら子供でもできますし、少なくとも医者の仕事とは思えません。と言いながら上に書いたような事しかできませんでしたが、本当はもっと深い意味があるはずです。基準値はあくまで基準であり、誰も正常とは言ってません。

普通は検査結果が基準値の範囲内にあれば、「問題なし」と言われます。ところが、実は数値を「上げる要因」と「下げる要因」があり、片方だけならともかく、両方同時に来たらプラスマイナスで相殺され、値は基準値内で正常と判断されてしまいます(これを「マスクされている」と言います)。

内科というのは膨大な検査データーはもちろん、患者さんの顔色や訴えなどを総合して判断する壮大な推理ゲームのような所があるのです。

また、大学で習ってきた画一的な判断は、現実を反映していない事も知りました。例えば有名なところで「AST」と「ALT」という項目があります。ちょっと前まで「GOT」と「GPT」と呼ばれていたいもので、どちらも肝臓がやられると肝細胞から漏れ出してくるので、単純に肝臓病の指標であると習いました。

ところがこのAST,ALPは、本来はタンパク質を別の形に変換する(代謝って言います)酵素のことで、肝臓にだけではなく身体中に広く分布しています。ですから肝機能が正常な人では、タンパク質が足りてるか・機能しているかの指標になります。もちろんそれにはBUN(尿素窒素)など他の検査結果と突き合わせて判断するのですが、だいたいALTが低いと肝臓で糖をうまく造れず安定した血糖値が維持ができなく、極端な眠気に襲われるなど様々な不定愁訴が出てきます(ここでチョコなどを食べては本末転倒です)。ALTの低下はビタミンB6不足で起きやすいので、その補給を考えたりします。



以上はちょっと難しい話になってしまいましたが、血液検査とは単純な数値に一喜一憂できるものではないのです。そしてそこまで読んでくれる内科の先生も意外に少ない事も知りました。私の父も内科医でしたが、はたしてそこまで読んでいたかどうか?もう訊く事はできませんが。

さて歯科はどうする?以上のような診断をする事はほとんどありませんでしたが、前項で書いた症状が無視できなくなった今日、内科の先生に協力してもらいながら対策を積極的に行わざるをえない状況にあります。

という事で、次に具体的に今準備している事をご紹介いたしましょう。