多くの非難を浴びなかがらも、今年もこの本が発刊されました。
【朝日新聞出版社】
世の動向を知るために今年も買いました。確かに内容は充実しており、年々厚くなっています。しかも的を射た記事が並ぶところはさすがです!
しかし来年も、そして再来年も出すつもりなのでしょうか?オリジナルである読売は既に問題を重要視し、辞めました。
私はこの手の本の存在を完全に否定する訳ではありません。しかし問題も多い。理由は以下の通り、すでに3度に渡って書いています。
2009年 7月30日木曜日 週刊朝日MOOK「いい歯医者」
2010年11月17日水曜日 マスメディアが注目する歯科医院になる
2011年 2月12日土曜日 マスメディアに望むこと
マスメディアが注目する歯科医院になる【あいぼりー 歯の相談室ブログ】
一度はお世話になった本、移転直前の慌ただしい時期に何度も取材においでいただいた記者さんには本当に感謝いたします。しかしあの「記事体広告」というのはどうにもいただけない。
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「おまえ、ブログにこんな事書いてどうするんだヨ」という声が上がるのは承知の上。しかし実際一昨年はこんな事がありました。
その患者さんは私の取材記事を見ていらっしゃいました。つまり顕微鏡を用いて治療をしてほしいという事です。
私は初日にアレやコレやと顕微鏡を用いて実況生中継でお口の中を説明して行きました。するとポツンと言われました、「あぁ、ちゃんと顕微鏡で診てくれるのね」と。
「え、と言いますと?」と私。
お訊きすると、実は「いい歯医者」を見て顕微鏡を使っているという歯科医院へ既に行ったのだそうです。ところがそこは確かに顕微鏡は置いてあったものの、頼んでもそれを使って治療をやってもらえなく、しかたなく転院してきたのだそうです。
確かに「記事体広告」の歯科医院さんの中には、顕微鏡の写真を掲載している所がたくさんあります。そして中にはあたかもいつも顕微鏡を使って高精度な治療を行っているようなフリをしている所があるのでしょう。客寄せパンダです。
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以前私はこう書きました。
「(記事体広告には)正しい情報を伝えようという意図がどれほどあるのでしょう?またこの手の記事と取材記事との見分け方をご存知の方がどれほどおられるでしょう。」
記事体広告には一応ページ下に小さく[AD]と入っており、申し訳程度に広告だと解りはします。
なのにこの手の本の使命は重要です。広告収入がなければ、これだけの情報を¥840で提供する事はできないからです。しかも前半のQ&Aの質はかなり高く、これだけを読んでいる限り誤解は少ないでしょう。
さらに今回も学会認定医や専門医を紹介し、一定の選択基準が示されています。しかしそれも「Q397 学会専門医なら信用できる?」にあるように「腕が保証されているわけではない」「基準を甘くして資格の欲しい歯科医を集める手段にしていると批判されている学会もある」と、実に的確な解答をしているわけです(注)。
結局必要なのは「個人の目利き」、本誌でも巻頭に「選ぶ際の一つの目安として」と記されています。
認定医ってなんだろう【歯界良好】
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これくらいの話を編集側が把握していないはずはありません。しかしそれでも造るのは、営業サイドからの強い要望があるからでしょう。「この本は儲かる」からと。
私の所に送られてきた資料によれば、最も大きな記事体広告の掲載料は1ページ¥1,650,000、小さな枠でも¥250,000です。(締め切り間際ではディスカウントもあったそうですが)そうとうおいしい商売である事でしょう。しかしすでに読売はそれを蹴った。
結局こういう事だと思うのです。
「いい歯医者」は患者さんにとってのいい歯医者ではなく
雑誌社にとっての「いい歯医者」だと言っても過言ではなかろう。
さて来年はどうなるのでしょう。やるなら曖昧な事はせず、広告は広告と堂々と出していただく時期なのではないでしょうか。
注 : 一つだけ認定医の信用度が高い所を知っています。詳しくはこちらへ。