2008年12月31日水曜日

忘年会ってヘンだな!?

ついに大晦日になってしまいました。26日の13時まで診療をし、午後は全員で大掃除、その後は一人で大片付け・年賀状書き・レセプト・月締めの事務処理をして、あっと言う間にこの時間になってしまいました。ほとんど孤独な作業で挫ける事数回。モチベーションを維持するのはたいへんです。

さて今年もまた、忘年会に翻弄されて体調を崩し、腫れてくる方がおられました。暴飲暴食に睡眠不足で免疫が落ちています。カラオケで咽を痛めたと思っていたら実は歯からの感染でリンパ節が腫れていたというのも良くある話です。腫れてくるのは事前に解っている事が多いものです。気をつけたいものです。

さて私はというと忘年会は4つくらいで、一般のサラリーマンの方に比べればはるかに楽な方です。ただし今年はその4つが連続していたため、時間と体調の管理に気を使いました。一晩に二つの忘年会掛け持ちはけっこうたいへんでした。

さてその忘年会ですが、ちょっと不思議な字を書きますよね。忘れる会とは、これいかに?悪い事は忘れましょうという意味かもしれませんが、これでは良い事も忘れましょうと言われているみたいです。

中国語に忘年会という言葉や習慣があるかはわかりませんが、日本独特の表現のような気がします。この「忘」という言葉を創った人はどうもマイナスな感じがします。悪い事・嫌な事を忘れたいのも解りますが、明日に生かすために忘れてはならない事も多いでしょう。

さて同じ「ぼうねんかい」でも「望年会」をやっている所に今年も行ってきました。6月に講演をさせていただいた六交会です。同じ「ぼう」でも意味が全く違って、前向きですよね。人生こうありたいものです。

確かに今年の経済はひどかったわけですが、毎年「今年は悪かった」と言い続けてきた人は、今年なんかどうしているのでしょう。良い事も悪い事も次の年の糧として生かす事が大切だと思うのですが。

しかし実際には忘年会で年を忘れている人などいるはずもなく、本当は酒を呑む理由が欲しいだけなんだと思います。それで体調を崩して医療費を増やして行くというのもどうなんでしょう。歯科の私が思うのですから、内科の先生はもっと痛感しているのではないでしょうか。

どうか皆様、体調など崩さずに、良い新年をおすごしください。

2008年大晦日
吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック
                代表:吉田格

2008年12月29日月曜日

待合室で騒ぎまくる子に、、、

12月22日の投稿に加えて、もう一つ例があるのでお話しましょう。知りあいの看護婦さんから聞いた話です。

病院の待合室での事です。子供が大声をあげて走り回って、周りの患者さんは皆迷惑しています。なのに母親は何も注意しません。たまりかねた看護婦さんが来て、その子と母親に注意しました。すると母親は子供に言いました。「ほら、看護婦さんに怒られるから静かにしなさい!」と。

これ、どう思いますか?看護婦さんに怒られるから騒いじゃいけないんでしょうか?違いますよね。周りに迷惑がかかるからですよね。ところがその母親はそうは言わないわけです。看護婦さんはこの親にしてこの子かと思い、診療に戻ったそうです。

こういう例って、けっこうあると思うんです。理由ではなく、脅しでもって押さえつけるだけの事。中身が理解できていなければ、決して長続きはしません。人間どうしても安易な方に流されるという一例だと思います。

けどこのお母さんは患者さんだったようですね。だるかったからこうなっただけで、普段はそうではないと思いたいです。教育はたいへんです。

2008年12月28日日曜日

新作 VideoCast をアップしました

みなさん、VideoCastはもうご覧になっていただけましたか?本日5本目と6本目の収録を行い、まずはYouTubeから公開しました。

吉田歯科診療室で行われている治療の実際をご覧いただくこの企画、さらに高画質の動画は近日中にホームページで公開します。また音声の補足もこのブログやホームページで行いますのでお楽しみに。

6・歯周ポケットを実際に見てみる
5・とっても小さなむし歯、と思っていたら実は中では、、、
4・大きすぎる虫歯 けど神経はとらない
3・合っていないクラウンをどうにかする

1と2は既にこのブログで補足解説をしています。合わせてごらんください!

2008年12月22日月曜日

タバコ増税は反対の賛成だ

ちょっと前の話になってしまいますが、タバコ税の話がボツになった事がありましたね。皆様はこれをどうお感じになりましたでしょう?

タバコを¥1,000にすると、喫煙者が減る分を差し引いても増収になる見込みだそうです。どのような計算かはわかりませんが、それはそれで良いでしょう。一方、タバコは高いからもう吸わないという人は健康になるから良いではないかというのですが、これがおかしい。禁煙の動機付けとしては、医学的にはとってもおかしいのです。

本人はタバコを吸いたくて吸いたくてしかたがないのに、お金がかかるのでやむなく禁煙する、これはとても後ろ向きです。一方タバコの有害性を実感し、禁断症状から離脱した前向きの人は結果が違います。力ずくで禁煙させても、中身が本当に理解できていない事にはまた吸い出すでしょう。まぁ税収はあがるかもしれませんが。。。

同じ例はいくらでもあります。例えば、

”違反切符を切られるから路上駐車はしない”
  ↓  ↓  ↓
”周囲に迷惑がかかるから路上駐車はしない”

・・・であるはずですよね。罰金なんかは皆そうですが、他人が迷惑だからと考えられていないところが問題です。もちろん、それが解らない人にはお金を払ってもらいましょうというのもしかたがないかもしれません。

しかし医療の現場は違います。私は、健康になってほしいから禁煙してほしいと思っています。

タバコは歯周病を加速させ、インプラントをダメにするリスクを軽く押し上げます。歯は黄色くなりヤニが着き、ホワイトニングの効果は持続しない。百害あって一利なしとはタバコのためにあるような言葉です。だれもが良くないと思っている、しかしすでに文化として根付いているために「まぁいいじゃないか」で済まされてます。

私は一応タバコ増税には賛成です。しかしそこには医学的な視点があるようで、実は無いのです。医療の現場はそのような形での禁煙は全く望んでいません。お金が大切なのは百も承知ですが、経済的観点からだけではなく、医学的な観点で禁煙を考えてほしい、そして人の心の弱さと文化を考えてほしいと思っています。

ですから私は喫煙する患者さんにはいつも、次のように言っています。

「禁煙するとね、まずその分お金が浮きますよ。けどそれより健康になって、お金で換算できないものが手に入ります。そして何より、人から喜ばれます。こんなに都合がいい話しが他にありますか?」

2008年12月21日日曜日

PodCastと私・2

〜PodCastと私・1よりつづく

本年をもって終了するPodCastとは「伊藤洋一のRoundup Word Now」と「日経ビジネスOnLine 編集長のとれたての話し」の二つ。

「Roundup~」は、テレビでもご活躍の住信基礎研究所の伊藤洋一さんが10年以上続けてきたラジオ番組を配信しているもの。この年代の方には珍しく語尾が上がる「半疑問型」を多用し、「〜いうふうに思いますよね」で終わる独特の口調が真似しやすく印象的。

それはともかく自分の意見やマーケットの解析をこれほど解りやすく、しかも親しみを持って話せる人はそうはいません。私はいつも「あぁ、経済を中心に考えている人とはこういう価値観で動いているのか」と、たいへん勉強をさせてもらいました。

それとともに医療経済のあり方や、市場とは無関係に動く人の健康について度々考えさせられる事となりました。その一端は以前「経済という名の動物」と題して私のホームページにアップして、いろいろな方から意見をいただく事にもなりました。

長い間続いてきたこの番組も今年一杯。いずれ有料配信の番組として帰ってくるかもしれないようです。いままでタダを享受してきたのだから、ちょっとくらい払ってもいいかなとも思っています。今後の動向に期待です。

「〜とれたての話し」は、週間経済誌「日経ビジネス」編集長はじめスタッフが毎号編集にまつわる話しや雑誌に書ききれなかった事を紹介する番組でした。私は前任の井上豊編集長の「終わらない話し」からの愛聴者でしたが、前任の強烈な個性に対して物静かな佐藤編集長に当初物足りなさを感じたものでした。しかし聴けば聴くほど視点は確かで、氏の経済を見る目や編集方針にたいへん勉強させられたものです。

もう少し時間の余裕ができたら定期購読し受付に置きたいなと思っていましたが、ちょっと残念ですね。しかし後任の寺山編集長の実力と個性はすでに番組で実証済みであり、PodCastの復活を期待したいものです。やはり編集者の顔(この場合は声ですが)が見えるってのは良い事だし、医療もそうあるべきだと思うのです。生産者が見える農産物のように。

さてこれらの他にも良いPodCastはあるのですが、私が最も参考にし楽しみにしていた2大番組が同時に終わるのはなかなか寂しいものです。この場を借りて、伊藤洋一さんと佐藤吉哉編集長にお礼を申し上げたい。長い間ありがとうございました。

PMTC 歯科衛生士に磨いてもらいましょう

12月9日にYouTubeにアップしたもう一遍のVideoCast「PMTC 歯科衛生士に磨いてもらいましょう」です。



12月21日朝8時の時点で、既に1,500件の閲覧がありました。現在YouTubeに4編のビデオを公開していますが、同時にアップした「保健のインレーを外しコンポジットレジンで修復」の590件よりもぜんぜん多いのには驚きました。”歯科衛生士”が検索キーワードになっているからかもしれません。

さてこのように、歯を磨いてあげるサービスが普及しています。PMTCと呼ばれるこの方法、英語だと"Professional Mechanical Tooth Cleaning" 日本語だと”専門家による機械的な歯の清掃”となります。ここで言う専門家とは歯科衛生士の事です。

歯科衛生士についてはまたいつかお話するのですが、とにかく人材不足で困ります。しかし”メンテナンス”を正式に標榜する我々の女性スタッフ、実は全員が国家試験をパスした歯科衛生士です。

戦後誰もが歯を磨く習慣がついた言われていますが、ただガシャガシャ磨いているだけの人が多く、正しい知識や技術はまるで普及していません。しかしきちんと磨くのって意外に難しいのです。

では磨けない部分はどうするのか、ほったらかしにしておけばそこから悪くなる事はもう解っています。ならば磨いて差し上げましょうというのがPMTCです。

ただし私達のPMTCは、一般的なそれとは考え方もやる事も違います。ビデオ後半の柔かい尖ったゴムやカップを回転させて機械研磨する事がPMTCと思われていますが、これはあくまでオプションです。本当に大切なのはビデオ前半で出てくる緑色の柄の小さな筆状の歯ブラシを歯肉の境目に沿ってなぞるように磨いて行く事です。

また音声でも解説しているように、日本では1,000ppm以下のフッ素しか使えませんから、唾液で薄まらないようにブロックする事も必要です。それから"1:30"に出てくる歯間ブラシの方向も大切で、これはなかなか個人が実行できるものではありません。

しかし自分では難しい歯ブラシも、他人にやってもらえば簡単です。もちろん毎日やってあげる事は不可能ですので、できるだけ月に1回の施術をお奨めしています。磨き残しがプラークに変質し、病原性を本格的に発揮する前のギリギリのタイミングだと思うのです。

このPMTCはやってもらうと解るのですが、とにかくキモチイイ!だいたい普段使ってる歯ブラシと同じものを使っているのに、他人にしてもらうとこうも違うものかと誰もが実感します。自分で髪の毛を切る事が難しいのと同様、頭についている部分を自分でどうにかするのはかなり難しいものです。皆さんもぜひこのPMTCを体験してみてくださいね!

2008年12月20日土曜日

保険のインレーを外しコンポジットレジンで修復

12月10日の投稿・YouTubeにアップした動画の補足をしておきましょう。



タイトルは「保険のインレーを外しコンポジットレジンで修復」ですが、このように今問題があるわけではないのに「保険で治療した歯を再治療してほしい」という依頼はかなり増えています。それほど皆さん保険で行われた短時間の診療に不安を抱いているのでしょう。

実際に除去してみると内部にむし歯の取り残しがあり、手前の歯もむし歯になっていました。問題がないと思っていてもそれは自覚症状がないだけで、実は内部でこのような問題が残っている事は普通にあるのです。自覚症状が出た時には手遅れな事が多く、それに気がついている人はインレーなどの人工物を一度外してほしいと依頼してくるのです。

このケースでは運良く全ての修復をコンポジットレジンを詰める治療で、1日で済ませる事ができました。しかしたいていの場合もう一度型取りをしなおし、歯科技工師さんが造ってくれた金属やセラミックスなどを後日セメント着けする治療になります。

コンポジットレジンはたいへん優れた材料で、日本の製品は世界でもトップクラスです。しかし全ての操作を口の中で行わなくてはならないため、このビデオで紹介しているようなラバーダム(緑色のゴムシート)や、型枠をきれいにはめる技術が必要になります。

しかし残念ながら日本の保険制度ではこれらを行う事は事実上不可能で、どうしても自由診療になってしまいます。このあたりの詳しい事は既にホームページに記載されていますが、さらに年末年始には大幅なコンテンツの入れ替えを予定しています。楽しみ待っていてください。

《関連記事》
コンポジットレジン修復の進化(2017年11月23日掲載)
歯を拡大して見ることで根管治療などの治療のやり直しが正確にできる顕微鏡治療術
コンポジットレジン修復 
ピンを使った特殊なコンポジットレジン修復


PodCastと私・1

ようやくblogをスムースに更新できるようになった。まず何から書こうか?ではPodCastと共にある私の日常についてちょっとお話したい。

PodCastの説明はこのblogをご覧の方であれば説明はいらないだろうが、iPodにダウンロードしていつでも聞く事ができるラジオ番組のようなものである。詳しくはこちらをご参照いただきたい。

このPodCast、今や私の貴重な情報源としてなくてはならない存在である。今朝もなじみの番組を3件ダウンロードし、新潟までの新幹線で世の中の呆れた状況をチェックしていた。

私は社会人には自然科学系と社会科学系の2種類の人間が存在していると思っている。いわゆる理系/文系というやつである。私は歯科医師なので、もちろん自然科学系の人間である。常に自然と不自然(病気)の関係に興味をもって生きている。一方いわゆる文化や経済の事はどうもわからない事が多い。

しかし私の所に訪れる患者さんはほとんど社会科学系で、経済中心で物事を考えている人ばかりだ。医師たるもの、患者さんの気持ちや立場は常に考えていなくてはならないのだが、あまりに価値観が違ってはいけない。歯科医学もまた社会科学の一端でなくてはならないと思い、大学卒業後はできるだけ同業とは会わず、中学・高校の友人をつてにまったくの異業種の人達とばかり呑んでいた。医療とはただ技術を振るっていればよいわけではない所が難しいが、これにはずいぶん助けられたものだ。

しかし開業し診療が忙しくなると呑みに行く事も減り、テレビや新聞も見る時間もなくなる。いつの間にか情報に飢えている自分に気がついた時には、世間とのギャップはさらに広がっていた。満員電車の中で新聞を四つにたたみ、周囲の顰蹙を買いながら読破する図太さと器用さは私にない。

そこに現れたのがiPodであり、PodCastである。iTunesというソフト経由でダウンロードできる番組の数は膨大だ。私は迷わず新聞や経済関係の番組を選んだ。おかげで新聞やテレビに頼らずとも、そこそこの社会情勢や論評を手にする事ができた。これが無料で手に入るとは驚きだ。

さて本題はここからだ。なぜ今日PodCastの話題を選んだのかというと、私がかかさず聴いていた番組のうち2つが年内で終わってしまうからだ。これはイタイ!

続く

2008年12月18日木曜日

一年中師走の私の十二月とは・2

(12月5日より続く)

だいたい師走などという言葉があるという事は、12月は昔から特に忙しい月であったという事だろう。師が走りまわるという事は、当然弟子だって忙しいはずだ。そう考えると12月とは、すべての人にとって忙しい月であるようだ。

例えば年末商戦に明け暮れる人々は師でも弟子でもないかもしれないが、私と同じくらい忙しいはずだ。一件華やかな商業地区に一日中居れば、世間と自分の置かれた立場のギャップでイヤにもなるだろう。小さな店の主人なら私と同じ個人事業主である、お金の心配は絶えない。そうか、私一人ではなかったのだ、これに気がつくのに10年以上かかった。

私のように何でも一人でやりたがる人間は、一人で落ち込む傾向がある。追い込まれるとどんどん悪い方へと流され、自分一人が世の中から取り残されていると思いたくなる。

しかし経済や文化の裏側を読む習慣が少しずつ身に付いてきたこの1~2年は、いろいろ辛い状況でもそれは自分だけではないと思えるようになってきた。支払や経営は相変わらずキツイが、今の自動車産業の置かれた状況を見れば救われている。自分の立場で、自分の役割をキッチリやっていく、ブレない気持ちで仕事をやっていくだけである。

2008年12月10日水曜日

YouTubeに治療動画をアップ!

以前よりホームページに治療動画を公開していましたが、このたび新たに解説音声を載せてYouTubeに公開しました。まずは見てください。普通では絶対に見れない、ちょっとビックリするような光景です。歯科治療って、スゴイでしょ?



限られた時間では解説できない部分もこのblogやホームぺージでフォローして行きます。ホームぺージではYouTubeより高画質な動画も公開する予定です。ぜひにも訪れてください。お楽しみに!

2008年12月5日金曜日

一年中師走の私の十二月とは・1

さて12月になりました。出だしからマイナスな話で申し訳ないのだが、私は1年の中でこの12月を最も苦手としている。

もちろん12月と言えばクリスマス、お歳暮や年末年始イベントと相まって1年で最も商魂が逞しくなる時期だ。それに比例して街は華やかになり、すでに11月から始まった装飾に否でも応でも気分は盛り上げられる。

吉田歯科診療室も12月1日からクリスマスの装飾が始まった。大きなツリーでも置ければいいのだが、医療器具が林立する我が診療室にその余裕はない。小物が何点か飾られているに過ぎないが、ちょっと違った雰囲気を楽しむのは良い事だ。

しかしそれらの華やかさとは裏腹に、内情はたいへんである。まず通常の診療であるが、なんとか年内に完成させたい患者さんのスケジュールを調整しなくてはならない。ギリギリでは危険なので、クリスマス前には装着してあげられないものかと考えるのだが、人間のやることだからスケジュール通りには行かない。これには毎年頭を悩まさせられる。

そしてこの時期には年賀状の準備をしなくてはならない。最近はメールで代用する人も多いが、私は古い人間なのかやはり紙の年賀状を貰って嬉しい人種だ。しかしこれを出すのはやはりたいへんだ。

実は今日やっと年賀状と、デザインの本を買ってきた。本屋さんに行くと20種類くらい山積みになっているアレである。いつも買う前に悩むのだが、今年は違う。表紙を見てインスピレーションがあった一冊を手に取り、中身もたいしてみずにさっさとレジに走った。だいたいこの手の本は派手な子供っぽいキャラクターで埋め尽くされているものが多く、ウチの診療室のイメージにそぐわないデザインばかりだ。どれを買っても似たり寄ったりで、選んでいる時間がもったいないという事に最近気がついた。とは言う物の、実はお昼休みの短い時間での買い物だったので、選んでいる時間すらなかったというのが本音だ。しかし私がこれだと思った大人っぽいシンプルな表紙の本から選んだデザインの年賀状がお正月に届く事になる。

そして12月といえば、ほとんどの人が楽しみにしているのはボーナスであろう。卒後勤務医をしていた数年は私も普通の給与所得者だったのでボーナスを何回か受け取った事があるが、その後歩合給という半自営業状態となり、今は一診療室の経営者である。ボーナスは既に支払う側となっている。おそらく全ての個人事業主にとってボーナス支給は、経営の最難関ではなかろうか。お金の工面もあるが、それにより従業員や自身の経営を評価するのは辛い。私が苦手としている分野であるが、経営上避けて通る事はできない。診療の方がよほど簡単だ。

12月にはそれ以外にも忘年会や大掃除、これに月締めの保険請求事務(レセプト)が重なるのだからたまったものではない。以上のような事から、私は経営者になって何年かはこの12月を最悪の月と決めつけてきた。しかしそれはずいぶん甘えた考えである事に気がついた。

つづく