ウチは歯科ですが、手術が多いことと自由診療専門ということもあり、内科のような採血が月に数件あります。標準医療と栄養療法の二刀流でやっているので検査項目は多く、健康保険でカバーされない項目も多くあり、診療情報の大きな柱となっています。
実はこの血液検査ができなくなる!!!?という緊急事態に瀕し、9月中旬より裏で奔走しておりました。
何が起きたのかというと検査会社から連絡があり、採血した検体を集荷するのに新たに手数料を課すというのです。その額、なんと月に¥33,000!月に1人でも100人でも変わらないということですが、毎月何100人分の検体がでる大病院ならまだしも、小さなクリニックでは相当な痛手です。この¥33,000をどこかで捻出し赤字相殺しなくてはなりません。
自由診療だから価格は自由に設定をして良いのですが、1人に¥5,000上乗せしても赤字になりそうです。
実はこれは以前から想定されていた事態で、2年ほど前から各検査会社が、小規模医院との契約打ち切りや新規契約の停止を始めたのです。理由は赤字と人手不足です。
血液検体は宅急便で送ることができないので、検査会社の営業マンが車で医療機関を一軒一軒集荷に廻ります。当然そこには人件費や駐車場代が発生します。一般の物流コストから考えるとかなりのコスト高です。
しかし問題なのは、その検査料の異常な安さです。検査会社が医療機関に請求する検査料は健康保険で決められているわけではありませんが、保険の点数に見合った検査料しか請求できません。言い方は悪いかもしれんせんが、不当に安く値切られているのが現状です。
実は2年ほど前から私のところに「検査会社が契約をしてくれない・契約を打ち切られた、なんとかならないか」という相談がかなりありました。その後私と同じ検査会社を使っている人から「うちは契約を切られた、先生の所はどうか?」という質問が来るようになりました。
さすがに焦って、どういうことかと検査会社に電話をしたところ、業務効率化のために集荷ルートを限定した、うちは集荷ルートから外れていないとのことではありました。しかし近隣の小規模クリニックは契約を断られたなど、説明が本当なのか疑問ではありました。
まぁその時は一応ホッとはしましたが、うちもいつ切られるか分からないと思っていました。
そしてついに集荷手数料¥33,000の宣告です。他の検査会社に連絡をしてみましたが、やはり新規契約はしないできないの一点張り。これはもう検査してくれるだけでもありがたいことで、赤字を出してでもやるしかないか…
実はその後いろいろ交渉を重ね、大幅な譲歩案をつけた上で決着がつき、赤字を最小限にすることができるようになりました。条件については言えませんが、たぶんウチに限った話ではないかと思います。
問題なのは、契約が打ち切られ検査ができなくなった医療機関です。検査だけ大病院に依頼するか、検査自体を諦めるかのどちらかになります。しかし検査をしないで薬を処方したり手術をすることは、考えられません。歯科では検査をしないままインプラント手術が行われる、そんな事態が増えるという事です。
以上のように、一般の方に知られていない医療崩壊の足音が、検査会社の方からも聞こえてくるのです。先にも書いたように、根本的な原因は不当に安すぎる健康保険の点数です。低医療費政策を続け、他の産業を優先した結果です。
この項は打開策を述べるに至らず、現状報告だけとなりますが、多くの人に医療現場の窮地を知ってもらいたくて書きました。そしてこれはあなたの命に直結する事です。何を選択し、何を優先させるのか、考えるきっかけにしていただければ幸いです。









