2020年5月19日火曜日

新型コロナウィルス時代を生きる・後編


中編からの続きです

避けられない第二波

東京はまだ非常事態宣言が続いています。しかし新規感染者の数もだいぶ減り、緊急事態宣言解除の日は近いでしょう。

住宅街の人出はけっこう戻っており、そういう地域の歯科医院は普通に混雑しているそうです。今のうちに治してしまおうという人が多いのでしょうか。

銀座や新宿など都心部の繁華街はまだデパートが営業していないこともあり、人影はまばらです。しかし飲食店など、営業し始めたところがたいぶ増えてきました。

TULLY'sは営業を再開、STARBUCKSはまだ、経営判断って難しいですね。

さて今後気をつけるべきは、感染の第二波です。自粛疲れから解放され人と人との距離が近くなれば、潜在患者が感染源となり、一時的とはいえ感染者が増加傾向になることは避けられません。

冷房の季節になれば、今のように換気がしにくくなります。通勤電車は窓を開けて冷房でしょうか?

また、海外ではまだまだ感染が拡大中のところが多く、少なくとも年内は渡航に慎重にならざるをえません。

私は10月にアメリカで講演予定なのですが、これは未だに実施されるかどうかわからない状況で、チケットもホテルもとれません。

スウェーデン式の評価

非常事態宣言が解除されたとき、私たちが肝に命じておくべき言葉は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」です。

今までは逆に「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」でしたから、人の心はなかなか冷静で合理的な判断ができないものです。

新型コロナは、ただの風邪と同じ・インフルエンザで騒がないのだからコロナで自粛する必要などない、などどうも新型コロナをナメた話も聞くので心配です。

人類は新型コロナに初めて遭遇するわけですから、それ専用の免疫がありませんし、治療薬もありません。ですから最初はその影響をモロにくらい、大流行します。

日本は今自粛期間を通じて、抗体ができる人ができるだけ安全に増えるのを待っているわけです。集団免疫というものです。

スウェーデンは早期に集団免疫をつけるために、ロックダウンも行政による自粛勧告も行いませんでした。

最初これを評価する向きもあったのですが、新型コロナは無症状の健康保菌者の感染力がひじょうに強いために、結局は大量の感染者を出してしまい、見直しを迫られているようです。

ロックダウンを行わなかったおかげで経済は回っていたようでしたが、感染者が意外にも増えてしまったために経済の足を引っ張ってしまったそうです。

アメリカのようなロックダウン・日本の法的拘束力のない自粛・スウェーデンの自主的自粛、どれが正しいのかはまだわかりません。

もしかしたら多くの犠牲を払いながらも早期に集団免疫を獲得したスウェーデンが、来年の罹患者が0に近い…となったら、また評価が変わります。

私は日本式が良かったと思うのですが、みなさんはどうお考えでしょう?

予測不能社会

ウェブ上では、今回のコロナ騒動を予言していた人がいたことが話題になっていました。

予言にはさらに、2020年末にはまた新しいウィルスが出現して、さらにたいへんなことになると言っているそうです。

これを聞いて、皆様はどう思いますか?嘘だろう・たまたまだよ、という人。信じてしまいウェブ上で拡散する人、いろんなパターンがあります。

私はこうです。

「それはそれは、ご忠告ありがとうございます。新型コロナのおかげで、私たちは多くのことを学び、新しい秩序と社会構造を作るきっかけをもらいました。その予言は杞憂と化すでしょう」

一人一人が、ウィルスに対して適切な行動がとれるか、これは集団免疫とともに重要なことで、早期にそのような教育がなされるべきです。

予測不能な状態になったとき、人はどのような行動をとるのか、多くの理不尽な行動を見てきました。これは震災の時もそうでした。

人は自分では解決できない問題に直面すると、だれかを悪者に仕立て上げ注意をそちらに向けさせ、同意者を集めることで安心しようとします。またそれができなければ、黙ってじっとして何もしません。

そんな事をしても何も解決しないのに、脳はそういう動きをします。

コロナ騒ぎで真っ先に上がったのが、新型コロナは武漢の研究所で作られた人工ウィルスだという話でした。陰謀論が好きな人は、ここぞとばかりにまくしたてます。

なるほど話としては興味深いし、本当かもしれません。

しかし、だからどうしたというのでしょう?何が来ても、やることは変わりません。頼りになるのは、自分自身しかいないのですから。

価値観が変わった世界を楽しむ力

自粛期間が終わっても、それはアフターステイホームであって、新型コロナウィルスがいなくたった訳ではありません。新たにウィルスと共存する社会が訪れただけです。つまり「アフターコロナ」は無いのです。

ワクチンはいずれ開発され、誰の手にも渡る日が来るでしょう。ではそれまでどうするか?

答えは簡単です。手前味噌ですが、私がいつも患者さんに言っていることと同じです。

うちで採血などの検査をした人は、話が早いです。そのデーターから、栄養の過不足・ストレス・炎症・腸内環境など、病気を引き寄せる要因がいくつも見つかったはずです。

現代社会はそれらを無視し、経済活動を優先せよということでした。

健康の三大原則「運動・栄養・休養」が優先され、それが経済を牽引する、この価値観を楽しめる人が増えてくれればというのが、一医療者としての願いです。

経済とは病気を誘発するシステムの上に成り立っている事に気がついた人が増えたらなと思うのです。

そろそろそういう広報をしっかりやらなくては、という思いがさらに強くなりました。

良い事だっていっぱいあった


緊急事態宣言が発令される少し前、私は隅田川に散歩に行ったことがありました。

誰もいないだろうと思っていましたが、意外にも人が多くて驚きました。どう見ても普段ならば仕事でここにはいるはずがない人が、子供たちといっしょに遊んでいます。

これは在宅勤務で時間に余裕ができた人たちでしょう。子供たちは、お父さんが居るので大はしゃぎしています。私はそれを見て「なんだ、いいこともいっぱいあるじゃないか」と、ちょっとホっとした気分になりました。

マスコミは在宅勤務のたいへんさばかりクローズアップする傾向にあるようですが、一方で楽しいこともたくさん発見できたのではないでしょうか?

  • 家族と過ごす時間ができた
  • 通勤がなくなったことで睡眠時間がとれた
  • 空気がきれいになった
  • 読みたかった本が読めた
  • 断捨離ができた(←私はコレ)

などなど。みなさんはいかがでしたか?

そのような楽しみを発見する力、これも予測不能社会におけるたいせつな生きる力であるように思います。

自己防衛

最後に、3月5日に挙げたtwitterの投稿をご紹介します。
今回のCOVID19騒ぎで
いかに日本人が健康丸投げ主義かが
改めて露呈したと思う
・感染はマスクが守ってくれる
・治療薬がないから感染したら絶望的
・政府は何もやってくれない
そうではなく
感染は当たり前なので
発病させないよう免疫で自己防衛をしよう
そういう教育をする事こそ行政の仕事だと思う
https://mobile.twitter.com/ItaruyTwit/status/1235372119216672768

病気は医者が治してくれるものと思い違いしていませんか?

医者は病気を治すお手伝いをするだけです。治すための方法を教え、早く治るように適切な薬を処方し、時に手術をします。

そのうえで病気を治すのは、あくまで自分自身。(ムシ歯は治りませんが)

次はどんな感染症が来襲するか判りません。地震もいつかはまた来るでしょう。

予測不能な時に、どう行動すれば良いのか。震災を機にそのような教育がなされてこなかった事が残念でなりません。

そしてこの新型ウィルス騒ぎでも、そのような教育が必要であるとの声は聞かれません。

私自身が次の行動に出なくてはならない日も近い、ということになりそうです。

シリーズ「新型コロナウィルス時代を生きる」は以上です




tel:03-3248-0418