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2016年9月25日日曜日

患者には出すけど、医者が飲まないクスリ…歯科の場合

マスコミが医療を叩き医療不信を煽ることで売り上げアップを狙うのはもはや常套手段、とは言うものの、世の中にはこのような見方もあるのかと勉強になります。

古い記事ではありますが、この記事にも学ぶところがたくさんあります。もちろん記事を鵜呑みしてもらっては困ります。いや、困るのは私ではありません、アナタですから。

現役医師20人に聞いた「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」
糖尿病 高血圧 花粉症 インフルエンザ完全保存版一覧表
現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42507



保険医である以上は、従うしかない


ここに書いてある内容すべてが正しいわけではありませんが、何故このような記事が書かれなくてはならないのか、背景を読まなくてはなりません。

医療者が置かれた立場はたいへん微妙で、「保険医登録」をして「保健医療機関」として届けを出せば、国が決めた制度に無条件で賛同したことになります。収益のほとんどは健康保険からの支払いになりますので、たとえ制度が間違ってると思っても、絶対に従わなくてはなりません。そうしなくては医療者も生活して行くことができないからです。

記事に出てくる「胃酸の分泌を抑えるクスリ」や、最近見直しが叫ばれているスタチンなどの「高脂血症治療薬」は、法律で決まっているから処方しているという、患者個々人に合った選択ができない健康保険制度の欠陥を突いている部分です。

歯科医師が自分の治療に保険を選ぶことはない


歯科では薬を出すことは多くありませんが、それでも「患者にはするが、自分にはやらない治療」がたくさんあります。と言うより、ほとんどだがそうだと思います。

典型的なのは根管治療、そして詰め物(コンポジットレジンなど)や、被せ物(クラウン)です。

クラウンはほぼ全員の歯科医師が、健康保険ではできない材料や技術の治療を自身にしてもらうはずです。ご家族にも同様でしょう。

歯科医師が皆様に自由診療を勧める理由はたくさんありここでは説明いたしませんが、私が保健医療機関を辞退したのはそのためです。

解決できない制度疲労


間違ってもらっては困るのは、このような記事が書かれてしまうのは、医療者側だけが悪いからではないということです。行政・患者・医療者、三者が過去の慣習に囚われ、制度疲労を解決できないまま今日に至っているということです。

また歯科の場合は、保険で決められた治療が良いものではないと解っていても、予算の関係で自由診療を実行しにくいという問題が大きいのです。

医師会々員・歯科医師会々員はその改善のために多額の会費を払い運動をしていますが、一向に報われません。行政は低医療費政策の方針を崩そうとはしていないからです。

混合診療はもしかしたら将来TPPにより解禁になるかもしれません。しかし大きな混乱とともにスタートするのは確実です。健康保健でどんな医療も安心して受けられるようになるまで待つ時間はありません。

自衛策は徹底した「予防」


ですからみなさんには「とにかく予防を徹底していただきたい、そして健康・病気・栄養について興味を持ってください」と言っています。悪くなっても、治してもらえるわけではないのですから。

医療者や行政に丸投げの健康観ではなく、ぜひ多くの良質な情報に触れ、自衛手段を入手してください。そのための情報発信も、私たちのたいせつな仕事の一つだと思っています。

手前味噌ですが、よろしかったら下記からメールニュース配信にご登録ください。



2016年8月4日木曜日

予防はなぜ定着しないのか?


分かりきっていることほど実行できないもの、「予防」はその典型ではないでしょうか?

予め防ぐ、だからから「予防」と言います。予防が大切・予防に勝る治療はない・これからは予防の時代だ、日本歯科医師会でも「予防さん」というユルキャラを前面に出して予防のキャンペーンをしています(あんまり可愛くないのですが、努力は認めます…)。

しかし予防を前面に出したものの一向に定着しない、このような悩みを持つ歯科医院がほとんどだと思います。うまくいっているように見える所でも、実は独立採算としては成り立たっておらず、一般治療やその先生の講演料などで赤字を埋めているのが現状のようです。

予防はなぜ難しく、定着しないのでしょう?原因はいろいろあるとは思いますが、患者さんにしてみれば(本当はもう「患者」ではないのですが、ここでは便宜上患者とします)以下の事が考えられます。
  1. 痛くなってから歯医者に行っても間に合うと思っている
  2. 病気が発覚してから治す方が楽だ
  3. 予防にコストをかけるよりも悪くなってから健康保険で治療した方が低コスト
  4. もしかしたら予防なんてしなくても済むのではないかと思ってる
  5. 予防意識がそもそもない
とまぁ、当たり前といえばその通りです。一方歯科医院では、
  1. 健康保険での評価が低く、制度の縛りが多く使いにくい
  2. やる気のある歯科衛生士の雇用が難しい
  3. 保険診療継続期間中に自費で徴収するのは混合診療になる
  4. 予防を一生懸命やっても補綴(人工物)の寿命はたいして変わらないかも
  5. 病気が減ると困る歯医者がいる
などいろいろ考えられます。しかし以上はどれも表面的な事で、根本はこういうことではないでしょうか。

すなわち予防とは、まだ自覚症状がない状態で新たな行動を促すものです。しかし自覚がない事には人の心は動きません。たとえ脅してやっても長続きはしません。

私たち専門家から見れば、この先明らかに悪くなるだろうという事が解ります。それは予想でも占いでもなく、例えば顕微鏡からの画像をお見せすれば一応は理解してもらえます。しかし問題はそこからで、患者さんに危機感はないので、できれば避けたいと思うでしょう。いつになったら歯医者通いが終わるのかと怒る方もいるそうです。

結局予防を続けてもらえるのは、歯科医療の信頼力しだいと思うのです。この人の言う事なら信じてみようという、良い意味での詐欺的要素がどんな営業にも必要で、医療も例外ではありません。しかし今の日本の歯科界にはその力が決定的に不足している、個々の医療機関での裁量権がほとんど認められないからです。

そのためには院長が自分の考えをしっかりもち、スタッフが共鳴し、全員がそれを継続して発信し続ける力が必要だと思います。しかし残念ながらそれは健康保健制度の流れの中では混合診療の問題があり、意欲は削がれてしまいます。

歯の病気の予防が国力をアップさせることは間違いありません。そのためにも多くの歯科医院が健康保険制度から離れ、治療中から予防を徹底させるシステムに移行すべきと思います。これは私たちが保健医療機関を辞退した一番大きな理由です。