私たちの診療室の受付には、この写真のネックレスと、あともう2つほぼ同様なものの計3点が置いてあります。これを見つけた患者さんはちょっと不思議そうな顔をしてこのように訪ねます。
コレ、実は鮫(サメ)の歯なんです。2年ほど前にサンフランシスコに寄ったときにお土産で買ってきたものです。少し余計に買って来て余った物なのですが、面白いので飾ってあります。
鮫の歯はとても特殊で、実は何回も生え変わります。一定期間でどんどん後ろから出て来、その構造はピストルのリボルバーの様だと言われます。鮫にピストルとはずいぶんお似合いです。
さて神様は何故鮫の歯をこのように造ったのでしょう。あまりに歯が消耗するので、どんどん交換するようにしたのでしょうか。では人間は?
人間は鮫のように激しく歯を消耗するわけではありません。しかし虫歯や歯周病で歯が人生の最後まで有る事は困難です。だから人間も鮫のようにどんどん後ろから新しい歯が生えて来たら良いなと思いませんか?しかしそうは行きませんね。
鮫の歯が連続して生えてくるのは生きて行く必然、一方人間は自らの文明で造り出した「代償」であるむし歯や歯周病で歯が無くなります。勝手な事をして自分で自分の首を締めるような人間に、神様は60歳くらいで新たに生える歯など与えてくるはずありません。
もし鮫が文明を持ち甘いものを好むとしても、後から歯がどんどん生えてくるのでむし歯で困る事は絶対にないでしょう。けどその代わりに神様はきっと他の罰を鮫に与えるのではないでしょうか。
たかがお土産の鮫の歯ですが、自然と文明のバランスを考えてしまいます。