松風がお贈りする「SHOFU 歯メイトコラム 吉田格の歯界良好・5」が一般公開されました。「症例数の多さは自慢になるか?」と題し、偏った治療方針がもてはやされる現実に警鐘を鳴らしています。
このコラムは次回で最終回。会員には8/15に、非会員には9/15に公開されます。夏にふさわしい内容ですので、ぜひ会員登録(無料)をして早く読みましょう〜!
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吉田格の「歯界良好」 第5回 症例数の多さは自慢になるか?
突然ですが、あなたに命に関わる重大な病気が見つかり、早く手術をしなくてはならないとします。インターネットで調べてみると、手術症例数が多いという病院がいくつか上がってきます。そこにおられる経験が豊かな先生に執刀してほしい、あなたもそのように思うのではないでしょうか。
口腔インプラントにおいてもホームページや記事体広告誌には、症例数や埋入本数の多さをアピールしている医療機関がたくさんあります。経験値が高い先生はこれからもきっと素晴らしい手術をするに違いない、おそらくそう思う患者さんがほとんどではないでしょうか。しかし私は以前から、これはどうなのかと思っています。
前者はすでに確定診断がくだっており選択の余地がなく、しかも緊急性が高いことが前提で話が進んでいます。一方後者は選択の余地がまだあると思うのですが、インプラトしかないような状況で話が進んでいます。両者を同列に扱うのはいかがなものでしょう?
一般開業医で埋入本数が多いというのであれば、全体の来院者もそれなりに多いでしょう。だからインプラント以外の症例数も気になるところです。たとえば、欠損に至はらず保存された歯はいったい何本だったのでしょう。
症例数の多さは確かに大切です。ただしそれは最新の知見に基づいた正しい診断の元に行われていなくてはならず、施術者の好みや誘導によりそれ以外の選択肢が伏せられているとしたら問題です。インプラント症例の多さを広告(?)する場合、同時に「保存ができ、欠損にならずに済んだ症例数」が備わっていてほしい、それをもってして医療機関の評価になると思うのです。
今日顕微鏡の実用化により歯の保存限界は急激に高まり、抜髄や抜歯は明らかに減りました。それに呼応しインプラント補綴に移行する症例は激減しています。もちろん口腔外科専門で紹介患者ばかり診ている先生のところは違うでしょうが、それ以外のところであまりにインプラント症例数にこだわると、逆に信頼を損ねるような時代に移行しつつあるのではないでしょうか。
ところが逆に、近年「反インプラント」とでも言えそうな無理な保存を行う傾向もあり、どう見ても病変が変わっていない症例を「治った」と言っている発表を目にする事もあります。
無理なインプラントはいけませんが、無理な保存も、もちろん無理な義歯もいけません。オールラウンダーたるGPこそ中庸を旨に、特定の症例数の多さで集患(?)するのではなく、患者さんを幸せにした数で評価されたいものです。しかしそうすると今度は「患者満足度 No.1!」とか言うような人がたくさん出てくるのでしょうか?
【おまけ情報】6月28日(日)の日本顎咬合学会(東京国際フォーラム)にて「修復治療の限界を再考する」と題し、顕微鏡下での修復治療の実際についてデモと臨床動画を用いてプレゼンします。吉田の臨床をチラ見できますので、ぜひご来場ください!