しかしこれらの報道や論評をみていると、どうも納得が行かない事があります。それは耐性菌に焦点を当てているのではなく、ほとんど院内感染のみを報じているからです。とにかく人のせいにしたい、誰かを悪者にしたいというマスコミの悪しき習性が私には非常に不快です。
実際に「耐性菌て知ってますか?」と患者さんに訊いてみると、ほとんどの方が答えられません。なぜ細菌が耐性を持つのか、人間が何をしてきたのかを知らずにこの問題を論じるのはおかしいと思います。
もちろん帝京大学を擁護するつもりはありません。しかし院内感染が耐性菌ではなければ抗生物質が効き、不顕性で終わったはずです。ところが今回は弱毒性とはいえ耐性菌、免疫力が落ちた高齢者が標的となり解ったわけです。院内感染は実は知らない所で無数におきているはずです。
では病院が危険な場所なのかといえばそうではなく、病人が密集するという意味で危険性は高くても、逆に安全性はどこよりも高いのです。むしろ危険性だけが高い場所の方が多く、教室・電車・映画館などは新型インフルエンザや耐性結核菌の巣窟となりうる所です。それらが問題になる事がほとんどないのは、そこに居る人々は健康で通常の免疫力を持っているからにすぎません。
そして医療の現場はいたって冷静です。
監督責任がという事でしょうが、現場のジャマをするのではなく自ら身を挺して手伝いに行くぐらいでなくてはならないと思うのです。それに「原因究明と再発防止」をしなくてはならないのは、耐性菌そのものの出現防止のはずです。
増してや抗生物質を乱用するようなムシ歯治療なんて、私にはまったく理解できない話しです。耐性菌をいったい何だと思っているのでしょうか?