久しぶりにスラスラ読める、共感いっぱいの本でした。
著者である前刀禎明さんの事は以前から存じ上げており、面白そうな人だなと思っていましたが、めざましましテレビのレギュラーになった時は「ココまで来たか!」と思わず唸ってしまいました。
こういう本を読むと何となく自分と重ね合わせてしまいます。まあ人間の大きさや頭のできはだいぶ違いますが、なんとなく安心してしまう言葉が並び親近感がでてしまいます。自分自身も昔からどこか捻くれていて、あまり本は読まないとか、なぜか人と違う事をやってしまうとか、そのせいもあり今は良くも悪くも少しはオリジナリティのある仕事をしているのかもしれません。
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本書を一言で言い表せば「セルフイノベーション」の大切さと実行方法を解くものです。家電業界を例に今日の日本経済復活の処方箋を考えます。私もiPod mini を日本発売前にアメリカで買ってきたほどですので、氏の言う事は随所で共感します。
結局は氏が批判する「人と同じものを買えば安心というブランド志向」を加速させただけ、その方程式に乗っ取っただけの商売とは言えないでしょうか?大量製産の世界とはそういうものなのかもしれませんが。
この本を読んで思い出したのが、元HONDAのF1総監督だった櫻井淑敏さんの著書「ゼロからの挑戦」、もう20年くらい前の本になります。
櫻井さんもまた独創性を持って世界に挑んだ人、自由な発想の大切さや日本文化への警鐘について非常に共通した視点で書かれています。偶然ですが名前も似てるし、出身大学も(学部も?)同じです。
この国の将来を憂う一方、チャンスはいくらでもある。そのための方向性を示し、行動を起こす事が最も重要であるという意見で一致しています。
昨今、経営セミナーや自己啓発・コーチングなどの催しがひじょうに盛んに行われています。インプットするチャンスは多すぎるくらいあります。しかしそれを自分なりに解釈し、形にしてアウトプットしている人が少ないのではないか、私もそう思っています。
結局リスクをとらず人真似や後追いとなり、最後は価格競争の波に飲み込まれる。産業衰退の方程式なのでしょう。
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さて翻って日本の歯科医療は健康保険という枠でくくられ、表面的には品質の差や価格競争はありません。楽ですが、イノベーションの余地がありません。そのような状況で良い医療が提供できるのか、その答えは今の高齢者の窮状が物語っているわけです。
私自身、セルフイノベーションできているかどうかは解りません。しかし既存の医療でどうにもならない、あるいは問題を残しそうな人のためになりたいと思い、あえて自由診療専門の医療機関に変えました。経営的にはまだまだ非常に厳しいのですが、やりがいを持っています。この本を参考に自分がやるべき医療や発信すべき情報を整理し実行していかなくてならないと改めて思うのでした。
「何かを変えたい」とお思いの方でなくとも、是非お読みになってみていただきたい。ということで、この本はしばらく診療室のフロント置いておく事にしました。皆様のご意見もお聞かせいただけたらと思います。
なお以下は本書の発売に合わせて行われたインタビュー記事です。これだけでもかなり役に立つはずです。
【Business Media 誠】