日本再生戦略 フロンティアを築き、「共創の国」へ
【内閣官房 国家戦略室】
【内閣官房 国家戦略室】
国家戦略担当大臣なんて役職があったんですね。知りませんでした。野田首相も視察に熱心です。
【YOMIURI ONLINE】
この他にも医療を今後の成長分野として期待する声がたくさん聞かれます。それはそれでけっこうな事ですが、逆に見ればいかに今まで医療を軽視してきたかも良くわかります。
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日本の技術は確かにすばらしい。だから優れた医療機器も多い。にもかかわらずそれらの会社が経営的に苦しんでいたり、大企業ですら撤退するのはなぜでしょう?そこが解決していないと、いくら旗を振ってもまた「騙された」と思われてしまいます。
かつて国やリサーチ会社は介護を成長分野と位置づけた事がありました。高齢者が増えるという理由で入れ歯産業を有望株と持ち上げた大手証券会社もありました。しかし現状はどうでしょう?まったく逆の事が起きているわけです。
これは日本だけの特殊な話だと思うのですが、とにかく規制が多すぎる。海外で常識の機械や薬剤が使えない、特に日本の歯科医師はそのためにたいへんな苦労をしています。けど患者さんはそんな事は知らないし、歯科医師側もこんなもんだと諦めてかかる人が多い。
たとえば歯科で根管治療というものがあります。歯の神経があった部分の感染を取るこの治療は、のちに再治療になる可能性がたいへん高い事で知られています。理由は簡単で、国際的に標準の治療方法が日本では不可能だからです。
認可が降りないために使える器材が限られている、たとえあったとしても予算が極端に少ないために使いたくても使えません。さっさと抜歯してインプラントにしなければ経営できないシステムなのです。(詳しくはこちらへ)こんなおかしな話はありません。私が自由診療専門医になった大きな理由はこんな所にもあります。
企業も日本という狭い市場ででしか販路がないと非常に厳しい。保険により単価を極端に下げられた状態では、いくら良い製品を造っても元はとれません。今後は海外で評価されるようでなければやって行けないのではないでしょうか。
以前このBlog:歯界良好でとりあげた経済産業省の「課題解決型医療機器」の話題で触れたように、承認までのシステムを常識的な期間にしないことにはいくら有望な分野でも成長の余地がありません。
またリサーチ会社も医療システムや健康について、もっと勉強をしていただきたい。日本は健康に日常的に投資し健康的に生涯を過ごす人は、生活習慣病で医療財源を使い続ける人よりもコスト高になっているのではないかと思います。このあたりの試算をしっかりやり、低コストで生産性の高い社会のありかたをきちんと数字で示していただきたい。
日本の医療が携帯電話のようにガラパゴス化しないのは、海外の材料や技術が日本に入って来ないからです。そういう意味で医療は保護されています。しかしそのレベルは歯科に限ればそうとう低いと言わざるをえません。
医療を本気で成長分野にしたいのなら、まず行政は予算アップは当然の事、それ以前に本気でセルフイノベーションを行わなければ実現いたしません。増税の効果は本当に期待できるのか、今の政治を診ている限りそうと厳しいと言わざるをえません。
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オリンパス社の巨額損失隠し事件を発端に、SONYとテルモが買収争奪戦をしているそうです。SONY再建には医療分野への進出が望ましいという意見が多く、内視鏡で世界的なトップシェアを持つオリンパスの買収は好意的に捉えられているようです。
そのSONYの力を持ってして医療を変えてもらいたいと思う一方、SONYがPanasonicのように医療行政の閉塞性から撤退してしまう危険性も考えられます。であれば最初からその厳しさやノウハウを知るテルモが望ましいのか?
これから医療軽視の構造がどのように変わるのか、少なからず期待を寄せないわけにはまいりません。皆様はどのようにお考えになりますか?