2015年12月31日木曜日

2015年 大晦日


大晦日となりました。今年も一年間無事に過ごすことができ、ご支援いただいたすべての方に感謝いたします。

今年はというと、まず原稿の量がとっても多かった、、、診療以外はそれに振り回された一年でした。プライベートは元より、学会事務も思うように運ばず、ご迷惑をかけてしまった方もおられたと思います。この場を借りてお詫び申し上げます m(_ _)m

しかし、思いを形にするという作業はどこかでやらなくてはならず、それを集中して行う機会があったことは良かったと思っています。特に松風さんからご依頼いただいたコラム6本は後から続けて読んでみると、僭越ながらまずまずだなと思ってしまいます。

自分の原稿以外にも他人の原稿チェックや編集会議もあり、たいへんでしたが良い勉強もできました。しかし締め切りがある仕事って、イヤですね σ^_^;

そして大きな変化といえば、栄養医学療法が本格化したことです。ブログにもかなり挙げましたが「隠れ栄養失調」の状態を無視したままでは、もはや医療も経済も成り立たないことが解りました。来年はこれをいかに解りやすく伝え、診療に反映してゆくかが大きな課題です。

栄養医学療法はもちろん自分にもやっているのですが、不覚にも今年は二回も喉をやられ、また今現在肩を痛めており、ちょいと苦労しています。診療に影響はないのですが、年末の大掃除でいつも私がやっているエアコンのフィルター掃除ができず、スタッフが率先してやってくれた事が嬉しかったです。

そのスタッフは栄養医学療法をよく理解してくれており、患者さんへの説明もたいへんやりやすくなっています。よくついてきてくれているなと、感謝です。

大晦日となり、私は今もうすぐ86歳となる母と二人で福岡に来ています。こうやって年末年始に一泊旅行ができるのも、あと何年続けられるかはわかりません。母をはじめいろんな人を見ていると、どうやって人は年老いて問題を発症して行くのかが良く解りました。

解った次は対策です。医療は大きな見落としをして来ました。それを歯科・口腔外科の立場からどう社会還元するのか、幸い私達は保険医療機関ではありませんので、自由な方法でアプローチが可能です。来年はそんな新しいチャレンジが始まります。自分自身がワクワクしております。どうぞお楽しみに!

写真は私の家の前に今咲いている「ジュウガツザクラ」という、早咲きの桜です。しかしモタモタしていると、本当に桜が満開になってしまいます。救う人がいる以上は残された時間は少ないと言わざるをえません。来年はスピードアップしてまいります。どうかよろしくお願いします。

ではみなさま、酔い(?)新年をお迎えください!

2015年大晦日
吉田歯科診療室 デンタルメンテナンスクリニック
代表 吉田 格


2015年12月30日水曜日

栄養医学療法のご案内

栄養医学療法のご案内です。パンフレットと同一の文章です。


隠れ栄養失調とは
ほとんどの医療は「あなたは毎日問題ない食事をしており、栄養は十分摂れている」という事を前提で進められています。しかし調べてみるとほぼすべての方に、タンパク質不足・脂質異常・糖質過多・ビタミンミネラル不足・ストレスや煙草、飲酒による栄養の過剰消費など、何らかの異常が診られます。モノが溢れている時代なのに、まるで戦後の栄養不足の時代が再来したようで、私たちはこれを「隠れ栄養失調」と呼んでいます。このような状況を無視していては、最新の医療技術も薬剤も、十分な効果が期待できません。

内科的アプローチ
ふつう歯の治療というと、削って詰めて、型取りして人工物を入れ、汚れをとって見た目をキレイに…と、外側からカタチを変えることばかりでした。これを「外科的」と言い、それなりの効果を発揮してきました。しかしそれでも効果が十分でなかったり後遺症が出やすい患者さんが多数おり、さらには不定愁訴で治療が思うように進まない方も。その背景には隠れ栄養失調が潜んでいるかもしれません。このような状況を改善するために、血液検査と食事記録から栄養状態を解析し、細胞に最適な量の栄養を補給する「内科的」なアプローチが必要で、それが「栄養医学療法」です。

体の中からも支える
歯は骨に支えられ、歯肉に守られています。脳の指令で筋肉が動き、顎の関節が動きを制御します。隠れ栄養失調があると、骨は細菌に負け、歯は噛む重さに耐えられず、入れ歯もインプラントも長く使う事が難しくなってきます。骨や歯肉に十分な栄養を送り込み、本来あなたが持っている生命力を取り戻す、体の中からも支える新しい治療が必要です。従来からの外側からの治療と併用し、歯科治療に大きな効果をもたらします。

普通の検診とは違います
検診などで行われる血液検査は、主に重大な肝臓病や腎臓病などを発見するようにできており、基準値内に入っていれば何も言われることはありません。しかし基準値とはあくまで参考であり、誰も正常とは言っていません。検査値は様々な要因が複雑に絡み合って上下するもので、基準値内にあっても実は異常なことがよくあります。栄養医学療法は検査データーから体を構成するタンパク質や脂質の新陳代謝を調べ、不足や過剰を読み解き、細胞が要求する栄養量に届くような改善案を提示します。普通の検診とは検査項目や読み方がまったく異なるので、健康保険の適用も難しいのが現状です。


糖質は歯ギシリの原因にも
過剰な栄養の代表は糖質です。虫歯の原因になるだけでなく、実は歯ギシリの原因にも深く関わっています。糖質とは砂糖はもちろん、米・パン・麺・芋などで、これらを食べると血糖値が急上昇します。それを下げるために膵臓からインシュリンというホルモンが出てきますが、下がりすぎて一旦低血糖になります。すると今度はアドレナリンなどの興奮系のホルモンが出てきて血糖値を上げて行きます。しかしこれも上がりすぎて、またインシュリンが出る…という過程が繰り返されます。この乱高下に伴って歯ギシリなどの異常行動が出る場合があり、糖尿病でなくても糖質は控えなくてはなりません。歯ギシリは最終的に歯や人工物を壊す一番大きな原因で、マウスピースなどで解決できるわけではありません。栄養医学療法で積極的に改善して行きましょう。

専任のアドバイザーが担当
栄養は日常の食生活そのものですので、生活の改善が必要です。医学的なアドバイスに加え、生活面のカウンセリングをアンチエイジングアドバイザーとして活躍中の看護士を専任アドバイザーとして迎えます。

栄養医学療法は
このような症状の予防や改善に
大変有効です

  • 歯周病 歯肉炎 口内炎 口角炎
  • 歯肉の炎症が改善せず型取りができない
  • 手術後の治癒不全 不快症状
  • 歯ギシリと、それによる歯や人工物の破損 神経麻痺
  • インプラント周囲炎
  • 知覚過敏
  • 花粉症や鼻づまりで歯科治療ができない
  • 体調が悪く治療が続かない
  • 糖尿病による歯科疾患
  • 不定愁訴

不定愁訴とは
「だるい」「疲れぎみ」など、なんとなく体調が悪いのだけど、原因が不明でついつい放置しがちな症状「不定愁訴」と言います。このような方は隠れ栄養失調の可能性がたいへん高く、そのような状態で歯科治療を行っても思うような効果が得られません。
  • 体調不良で治療のキャンセルが続く
  • 30分程度の診療に耐えられない
  • ラバーダムが苦しい
  • 麻酔の圧力に負けて、針の跡が潰瘍になる
  • 単純な虫歯治療でも神経が損傷する
  • 外科的な治療をした後なかなか痛みが消えない

パンフレットのダウンロードはこちらから
    ↓   ↓   ↓
http://www.y-dc.org/_userdata/eiyouigaku.pdf


2015年12月28日月曜日

歯髄細胞バンクのセットが到着


iPS細胞の発見により、再生医療がたいへん現実的になってまいりました。で、その元となる幹細胞をどこから持って来るのかというと、実は歯の中にある神経「歯髄」が最も使いやすい事が解っています。特に良いのが、
  1. 乳歯
  2. 矯正治療で抜歯する小臼歯
  3. 親知らず
です。若ければ若いほど再性能が高いので、特に若い人におていは抜いて捨ててしまうのではなく、凍結保存をしてみてはいかがでしょう。今はまだどのような再生が可能なのかは未知数ですが、再生医療は明らかに、そして確実に進化いたします。

遠い将来、大きな病気や事故にあってしまったとき、治療のために体の一部を再生できる日が来ているかもしれません。その日のために、今から若い細胞を保管しておく価値は非常に高いと思います。

12月25日に、そのための送付キット一式が到着しました。まるでクリスマスプレゼントのようです。自分のために、お子様の将来のために「歯髄細胞バンク」というものがあることを、ぜひ覚えておいてください。

確かに使わずに済む事が一番良い事なのですが。

参考:歯科における再生医療
http://koyu-ndu.gr.jp/home/?page_id=456

2015年12月23日水曜日

読んでおきたいネタ・2



読んでおきたいネタシリーズの第2回目です。スタッフ間で共有されている最近の医療関係の話題を公開いたします。

第1回で書いたように、ここに挙げてある内容のすべてが正しいわけではありません。決して鵜呑みにせず、よく読んで自分で判断するリテラシーが必要という事です。信じる信じないはあなた次第です。

ただし、私たちはここにあるコンテンツを有力な 情報としています。さてあなたの意見はいかがでしょう?

***


「所得が低いほど栄養バランスが悪い」というニュース。しかし、これまでの推奨栄養バランスに照らし合わせると・・・

筋肉が溶けていく!?コレステロール降下剤、スタチンの怖い副作用

所得低いほど高い喫煙率、歯少なく肥満者多い

低所得者ほど米・パン摂取 厚労省調査、野菜・肉類は少なく

どれが本当なの?時代と共に変化する、アメリカの脂肪食品と健康に関する歴史

白砂糖は覚醒剤と類似するほど危険

セルフホワイトニング

南雲吉則先生の「命の食事プロジェクト」始動!

脂肪肝完治、薄毛解消も 「1日3個の卵」がカラダを変える

現代の咀嚼回数は弥生時代の6分の1

マンガで分かる糖質制限 第4回「コレステロールは悪くない!」

認知症「1000万人」社会がやってくる!〜人類史上かつてない異常事態。残念ながら、もう手遅れです。

糖質制限食で見事に改善なのに、止めろと言われた!?

「オリーブオイルはヘルシー」は大嘘!「本物」をうたった粗悪品が蔓延

「偏差値が高いだけの医師」はなぜ危険なのか

混合診療問題を蒸し返す「患者申出療養」は誰のための制度か

事実上の「混合診療」解禁、16年4月にスタートする「患者申出療養」とは?

白米中毒…白米は最も危険な「マイルドドラッグ」の一つ

糖質制限ダイエットは危険!死亡率増?脳卒中や糖尿病、内臓障害の恐れ

糖質制限中に食べてはいけない意外な食材・惣菜Best5

食生活で代謝は確実に変わる。代謝を上げる食習慣10か条!

鎧塚氏、なお美さんの病気にも触れ…「がんのえさ」糖質制限訴える

そのニキビ、砂糖が原因かもしれません

あなたは大丈夫? スイーツ食べ過ぎで認知症になるケース

食生活で代謝は確実に変わる。代謝を上げる食習慣10か条!

糖質制限メニューを探す

日本人は何もしないためなら何でもする

糖質制限食の危険性について再度考えてみました

新入社員と就活生に覚悟して欲しい「学生と社会人の違いって何でしょう?」

卵の黄身がコレステロール豊富なのは、ヒヨコの身体をつくるために必要だから

サラダ油は本当に危険!がんや糖尿病も 「油漬け」で子どもの糖尿病や脂質異常症増加!

川島なお美も実践した「代替医療」。ニセ医学に詳しい医師が、その功罪を明らかに

歯を削り、詰めて安心する日本人。しかし銀歯の下は虫歯菌まみれ。根本から違う日本人の虫歯の考え方。

今すぐやめて!健康に良いフリして実は体に悪い食べ物まとめ

果物

知的であるかどうかは、五つの態度でわかる。

くらし☆解説 「高齢者は注意!"フレイル"ってなに?」

スウェーデンにはなぜ「寝たきり老人」がいないのか

えっ、「お金がないと糖尿病になりやすい」ってホント!?

結局、全部企業の洗脳「本当は髪を洗えば薄毛になり、肌水をつければどんどん肌が弱くなって、歯は磨けば磨くほど虫歯になる。」

いま、なぜ生活保護レベルの『下流老人』が急増しているのか?

台所のアレを塗って流すだけ!風呂場の黒カビをたった5分で撃退する裏ワザ

がんより怖い“低栄養”…65歳以上の6人に1人!100日後生存率50%!

「献体」申し出た男性の覚悟、東北大の実習に密着

乳幼児、歯磨き中事故注意! =救急搬送、昨年40人―転倒口内けが、1歳児多く

「平成26年度近畿大学卒業式」 堀江貴文氏メッセージ

アルコール摂取後に取るべき栄養素

マンガで分かる心療内科・精神科in渋谷 第63回「『私、バカだから』と言う人の正体。

歯科衛生士、歯科助手についてのあるある

妊娠前からの糖尿病、胎児遺伝子に影響か…九大

医療保険制度を知れば、歯医者さんの費用が見えてくる!

歯科医のジレンマ。日本の保険診療が抱える闇と治療費の裏側

飲み物の糖分に関する強調表示の違い【微糖】【低糖】【無糖】

医療も産業だ! 常に患者の目線に立つ医師が「国民皆保険制度」を批判する理由

医療も産業だ! 常に患者の目線に立つ医師が「国民皆保険制度」を批判する理由

日本の医療のゆくえ

なぜ高額な最新治療に積極的に関わらないのか 天皇の執刀医Dr.天野篤の「危ぶめば道はなし」【12】

なぜ日本人は世界最長寿国でありながら、歯抜け・寝たきり大国になったのか。予防歯科を知らない哀れ日本人

医療費40兆円、12年連続で最高額を更新
 
 
 

2015年12月22日火曜日

良著3冊



面白そうな本が立て続けに発刊されております。最近の光文社新書は良いものが多いですね。年末で忙しいわ、電車は混んでるわ、読めずにたまって行く一方です (> <)…

  1. ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか 宗田哲男 http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038892
  2. 慢性病を根本から治す 「機能性医学」の考え方 斎藤糧三 http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038861
  3. 白米が健康寿命を縮める 最新の医学研究でわかった口内細菌の恐怖 花田信弘 http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038953
歯科界からは、ついに花田先生が登場です。今年中に読めるかな?早く年賀状ださなくては (-_-)…

2015年12月21日月曜日

栄養医学療法のパンフレットを造りました


栄養医学療法を口頭で説明するだけでは理解していただくのが難しいので、やっとですがパンフレットを造りました。完全オリジナル、すべて吉田の手製です。フリーの素材を集めて造りましたが、いかがなものでしょう。これでだいぶ説明が楽になりました。



春ころから40名以上の方に採血をさせていただき、食事記録と合わせて栄養解析をいたしました。すべての方で栄養の過不足は明らかでした。現在改善案を出して実施していただいているところですが、年末年始の食生活はちょっと危険ですね(^_^;

そろそろ二回目の解析に入る方もおられますので、改善がどのようなものかが楽しみです。

2015年12月20日日曜日

インプラント周囲炎の外科的治療の実際

先に「インプラント周囲炎の治療には外科的治療と内科的治療の併用が必要」と書きました。では外科的とは具体的にはどのような手立てになるのかを簡単にまとめてみましょう。


その前に、一般的なインプラント周囲炎の治療とは、具体的にどのような内容なのかを挙げてみますと、
  1. 歯科衛生士による徹底したブラッシング
  2. 歯科医師による噛み合わせバランス調整
  3. 歯肉内のインプラント周囲の超音波洗浄(金属製ではなくプラスチック製のチップが使われ、薬剤が入った洗浄液を使います)
  4. 抗生物質の注入と内服
  5. 以上を定期的に継続して行う
1と2は当然ですが、3と4はどうでしょう。残念ですが、焼け石に水です。

インプラント本体の表面は、骨と早く強力にくっつけるために「ヤスリのようなザラ目」になっています。そこには細菌が簡単に潜り込んでしまいます。

また「ネジ山」がありますので、器具を入れてもネジ山に当たってなかなか深くまで入りません。したがって、ちょっと洗った程度ではたいした効果はありません。

抗生物質は腫れた歯肉には効きますが、そもそもの原因であるインプラント表面にくっついた細菌には無力です。これは歯周病の治療が困難な事とまったく同じ理屈です。

インプラントは歯より複雑な表面構造をしています。歯でさえも難しいのに、インプラントでは、それ以上のことを考えてあげなくてはなりません。

**

では、私たちが行っているインプラント周囲炎治療の具体例です。まずはレントゲンから。


こちらの写真は、右下の第一大臼歯(6番と言います)のインプラント周囲炎のレントゲン写真です。


緑の矢印が骨が吸収している部分ですが、この程度の写り方であれば、まだ「軽度」と判断されると思います。しかしレントゲンの写りとは、実際より軽症に見える場合がほとんどで、それを見越して判断しなくてはなりません。下に示す通り、実際に治療中に骨を見てみると、骨の吸収量は確かにレントゲン以上です。




こちらはCTの画像ですが、頬側の骨がなくなっている事がわかります。

今一つ不可解だったのは、インプラント周囲に白いラインが写っており、まるで硬い骨(皮質骨)のように見える部分があることです。これは何だったのかは、後で解ることになります。

**

さてたいへん残念ですが、インプラント周囲炎の治療、すなわち感染源の徹底除去は、また手術が必要になります。

つまり、、、、麻酔をして、また歯肉を開かせてください、、、でないとぜんぜん届かないのです…

インプラント周囲のお掃除には、以下のように、そこそこの機材が必要です。
  1. エルビウムヤグレーザー
  2. 顕微鏡
  3. β-TCPパウダーと、その噴射器
  4. チタン製ブラシ
  5. PDT(光殺菌)
  6. PRF PRP CGF
この中でどうしても必要なのが、エルビウムヤグレーザーと顕微鏡です。

β-TCPパウダーは、できれば仕上げに欲しいところです。

チタン製ブラシは無くてもだいじょうぶですが、手術を早く終わらせるためにはあった方が良いと思います。

PDTは基本的に不要なのですが、手術でも手が届かない部分に補助的に用いる場合があります。

PRF PRP CGFはここでは詳しくは書きませんが、本人の血液を遠心分離して造られるもので、場合によってはあったほうが良いのですが、今回は使っておりませんので割愛いたします。

***

さて実例です。写真つきでちょっと怖くて申し訳ないのですが、インプラント周囲炎は大きな社会問題ですので、あえて掲載いたします。このような事実が多いという事なので、もちろんそうならない工夫が最初から必要です。

治療はすべて顕微鏡を用い、細部を拡大して行われます。なお写真は、顕微鏡から動画撮影されたものです。


上物(冠)を外すとこんな感じ、もちろん歯肉の上からでは中の骨の状態はわかりません。



麻酔をして歯肉は剥がし、骨を直接見てゆきます。この状況では解りにくいのですが、実はインプラント周囲に骨は無く、歯肉(本当はは結合組織って言います)に置き換わっています。



まずこれを除去するのですが、ここで使うのがチタン製ブラシです。歯肉がおおまかに除去され、インプラント体表面もある程度お掃除できます。早いです。

しかし実際には、本来くっついていたはずの骨とインプラント体の間にわずかに隙間があり、そこに歯肉が潜り込んでいるのが見えます。それをきちんと見て、取り残しがないよう確認するためにも顕微鏡が必要です。

顕微鏡で観察すると、骨の中に白い粒が入り込んでいるのが見えます。これは「骨補填剤」と呼ばれるもので、最初にインプラントを入れたときに骨が足りない部分の補充用に使われたものです。

補填剤は骨ではありませんが、それ自体が吸収され骨と置き換わる事が知られています。ただし100%置き換わるわけではなく、残ったままだったり吸収されたままで歯肉に置き換わる部分もあります。もしかしたらインプラント周囲炎が拡大する、一因だったかもしれません。レントゲンで白く写っていたのは実はこの骨補填剤が残留していたものでした。



エルビウムヤグレーザーは、ムシ歯を削るときによく使われるレーザーですが、骨の整形にも安全に使えます。30ミリジュールという一番低い出力で狭い隙間を拡大しながら、よけいな歯肉を除去して行きます。また同時にインプラント体の表面も洗浄除菌してゆきます。

広く骨が吸収されている部分は簡単なのですが、狭い部分はやはりたいへんです。昔は回転器具で削っていったものですが、振動がひどくて患者さんには負担がかかっていました。またインプラント体表面を傷つけてしまい、後で移植する骨とくっつく事が障害されてしまいます。現在はエルビウムヤグレーザーのおかげで処置はたいへん楽にできるようになり、しかも清掃の確実性が上がりました。

ただしレーザー用の先端チップは消耗が激しく、この治療だけで新品を使い切ってしまいます。



エルビウムヤグレーザーで清掃された後はこんな感じで、再生の障害となる歯肉の残存はありません。反対側はこのように鏡で確認します。



エルビウムヤグレーザーである程度骨の整形ができたら、β-TCPパウダーを吹きかけて洗浄します。洗浄が行きわたる形に骨が整形されている事がポイントです。狭すぎるところには、パウダーは入って行かないからです。

エルビウムヤグレーザーだけでも十分という意見もあるのですが、照射ムラは絶対にありますので、私は補助的に使っています。ただしレーザーが入らない部分はパウダーも入って行かないと思います。

さらに位置的にどうしても入らなそうな部分がある場合に限り、PDT(光殺菌)を併用しますが、今回は使っていません。



洗浄が終了したら、何もしないで閉じていた時代もあったのですが、現在はすべてのケースにおいて、ご自身の骨を移植します。ちょうど後ろ側(親知らずがあった所)から骨を採りやすかったので、丸く削って採らさせていただきました。



丸く採った骨を細かくして、インプラントの周りを埋めて行きます。



ほぼ埋めきったところです。最後は傷を縫い合わせて終了です。お疲れさまでした!


****

辛抱強くここまでお読みいただいた方、ご苦労様でした&ありがとうございました m(_ _)m

「こんな苦労、絶対にヤダ!」と思われた事でしょう。しかしこれでも解決する保証はありません。できる限りの事をしても、細菌感染は除去しきれたわけではありません。本当に除去したければインプラントを撤去し、骨を造った後で新しいインプラントを入れ直すしかありません。もちろん場合によっては、その方が良い場合もたくさんあります。どちらが良いかは、医学的な判断と患者さんのご希望しだいです。

さてインプラント周囲炎の治療で最も重要なのは「同じ過ちを決して繰り返さない」という事です。上記の治療は、複数の原因が絡み合って生じたもので、事前に解決できることは先行してやっておかなくてはなりません。そこに内科的はアプローチである「栄養医学療法」があるべきです。

私たち臨床家は比較実験というものができませんので、はっきりとした科学的根拠を示す事はできません。しかし骨が再生するために必要な栄養素は解っており、免疫力も含めて予め解決しておきたいものです。

インプラント周囲炎の治療は、喫煙や糖尿病があると厳しいのですが、そうでなければ早めに手を打てば間に合う可能性があります。しかし自覚症状がほとんどありませんので、手遅れになりやすいものです。進行するとこのような治療をして、やっとどうか?というものです。

ですからインプラントをご使用の方はきちんと定期健診を受け、たまにレントゲンで診断していただいてください。もちろん残っているあなた自身の歯も。そして残念ながらインプラント周囲炎ですと言われたら、その程度を訊き、原因解決を徹底し、今後どのような処置が必要かを必ずお聞きしてください。絶対に「しばらく様子を見る」など消極策にでないよう、ご注意ください。

《関連サイト》


2015年12月18日金曜日

口腔インプラント学会(岡山)に行ってきた・3 インプラント周囲炎と栄養医学療法

だいぶ遅くなりましたが、こちらからの続きです。


さてそうすると、インプラント周囲炎とは避ける事ができない現象のように思えます。インプラントの長期経過を調べてみると、5年くらいは平気なのですが、7年目くらいから周囲炎が目立ってくるという話もよく聞きます。

ではこれを防止するために、現在どのような事が行なわれているのでしょう。先に書いたように、当然歯科医院で行われるメンテナンスが必要です。もちろん、毎日の歯磨きができていての事で、その確認のためにも定期的に歯科医院でチェックしてもらう必要があります。できれば簡単な細菌検査をされた方が良いでしょう。

しかし、それだけで良いのでしょうか?それでも間に合わないかもしれません。ここらかは私たちの見解ですが、鍵になるのは「内科的」なアプローチであろうと思います。

噛み合わせを削って調整したり、歯ブラシで清掃する、時には分解掃除をする、これらはすべて歯やインプラントの外側から手を入れますので「外科的」と言います。

では内科的とは何か?それは体の内側から対策をして行きましょうという事です。

歯もインプラントも骨に支えら、歯肉に守られています。顎の関節で動きを制御され、脳の命令で筋肉が動きます。これら全ては、細胞にきちんと栄養が供給されつづけていなければ十分機能いたしません。

すなわち骨は細菌に負け、歯は噛む重さに耐えられず、インプラントは長く使う事が難しくなって行きます。骨や歯肉に十分な栄養を送り込み、本来人が持っている生命力を取り戻す、体の中からも支える新しい治療が必要になります。もちろん従来からの外科的な治療との併用が前提です。

また一見無関係に思えるハギシリによるオーバーローディングも、じつは糖質過多で発生している可能性が高く、食べ物や食べ方を変える事でインプラント周囲炎の予防はかなり現実的なものになると思います。

私たちの体は、昨日まで食べてきた物で出来ています。体は新旧が常に入れ替わっており、分解して処理される一方で、コピーが造られ刷新し続けています。そこに栄養不足があれば、何かしらの不具合がでてきます。さらに細菌による攻撃や荷重負担が加われば、何年か後でインプラント周囲炎になることは十分予想できます。

ほとんどの医療は「あなたは毎日問題ない食事をしており、 栄養は十分摂れている」という事を前提で進められていま す。しかし調べてみるとほぼすべての方に、タンパク質不足・ 脂質異常・糖質過多・ビタミンミネラル不足・ストレスや、飲酒による栄養の過剰消費など、何らかの異常が診られ、この状態を私たちは「隠れ栄養失調」と呼んでいます。

超高齢社会問題において対策の基本となるのは、細胞に十分な栄養を補給する内科的なアプローチです。インプラントにおていは、歯科医師が治してやってるような形ではなく、患者さんも何も考えずに従うだけでなく、自分で何ができるかを考えなくてはならない時代になっています。食べ物とは、それほどおかしな状況になっているのです。

インプラント周囲炎に限らず、歯科と栄養医学との関係は、まったく一般的な話ではありません。しかし今後間違いなく必要な健康の知識として定着するはずです。しかし行政がそこまで考えてくれることはありません。そのことについてはまた後日書こうと思います。

さて岡山で解った事、それは一般的なインプラント周囲炎対策の見解とは、まだまだ根本的なところまでは行っていないということです。すなわち栄養医学の応用をどんどん進めてゆく必要がある、それが改めて示された事でした。


2015年12月10日木曜日

肺炎に注意!

先ほど患者さんから、野坂昭如さんがお亡くなりになったとお聞きしました。ウェブを見ると、肺炎のためとありました。ご冥福をお祈りいたします。

高齢になると免疫は落ちるので、肺炎は当たり前のように考えられていますが、高齢者の肺炎はほとんどが口の中の不衛生が原因で、プラークが喉に持続的に流れ込んでゆく事が問題になっています。これを「誤嚥性肺炎」といいます。

したがって高齢になる前にきちんと歯を治し、正しい歯ブラシの習慣を身につける、そしてできるだけ炭水化物をエネルギー源としない、タンパク脂質を重要視した食生活に変えてゆく必要があります。

野坂氏の死を無駄にせず、我々はどうあるべきかを論じる事は大切だと思います。

合掌

2015年12月7日月曜日

DHstyle 12月号 ”見える”を手に入れよう


今年書いたものの中で一番長くてキツかったのがコレ、DHstyle 12月号(デンタルダイヤモンド社)の特集「”見える”を手にいれよう 拡大視野がもたらす憧れのハイジニストワーク」です。



オーバーコンテンツはお約束、しかし編集部は意地で規定ページに収めてきました。若干詰め込み感のあるレイアウトはそのせいです。

歯科衛生士がマイクロスコープやルーペを使い「見える」を手にして行く過程を、物語形式で綴ります。物語はピンクの枠で、全7話。そこだけ読んても楽しいと思います。時に真剣に、時にフザけ、しかしマジメに書いております(・_・)




もちろんマイクロスコープの説明もキッチリ、しかも日本顕微鏡歯科学会認定歯科衛生士取得の参考にもなる症例入り!

意外に守られていない「正しい姿勢」についても。これだけ中身をバラしますと、大切なのは、

 ・背筋を伸ばす
 ・重心を崩さない
 ・脇を締める

の3点です。メチャメチャな姿勢でマイクロスコープを使っている人ってかなり多いんです。もちろん、そうならざるを得ない時も多いのですが、できるだけマイクロスコープに合わせて体を動かす事がないように初めからクセをつけて行くことが大切です。


マイクロスコープの普及率は3%くらいらしいので、臨床で活用できる歯科衛生士はまだ少ないとは思います。しかし「ルーペ(拡大鏡)」もまた有用であり、マイクロスコープと競合するものではありません。得手不得手を把握し、適材適所で使いたいものです。巻末にはなんと、ルーペのミニカタログまで用意しました。

また最後には学会の宣伝までさせていただき、たいへん恐縮です。

マイクロスコープを使っている歯科医師は、一緒に働いている歯科衛生士にもマイクロスコープを積極的に使ってほしいと思っています。この記事を見て、一人でも多くの歯科衛生士が拡大視野に興味を持ち、臨床で患者さんを救ってもらえればなと思っています。


DHstyle 12月号は、デンタルダイヤモンド社から発売中です。売り切れないうちに、買ってしまいましょう。なおチラミしたい方、上記から立ち読みができます。

***

さて誌面に登場したMKさんはすでに退職しており、先日ついにお母さんとなりました \(^o^)/ そのため新しいスタッフを募集しているのですが、なかなか応募者が現れません。

この記事を見て、マイクロスコープって覗いてみたいなって思った衛生士さん、一度見学に来てみませんか?そして私たちと楽しいい診療時間を過ごしてみませんか?ご連絡は下記まで!

やっと飾りつけをしました






例年なら11月下旬には終えるクリスマスの飾りつけ、やっとやりました。いつものように、例のキャラクターが満載です!

忙しいというのは理由にならないとは言いますが、今年は診療以外にもいろんなイベントや原稿が集中しており、このブログもぜんぜん更新できず、、、、、

今週末にもう一山ありますが、そのあとはどんどんアップして行きます。それまでは、この画像で和んでください m(_ _)m