2015年8月18日火曜日

Cute 登場 ヨシダも参考出品 半導体レーザーの夜明けは近い!?

このBlog:歯界良好をお読みいただいてる方ならば、吉田が半導体レーザーの強力なファンである事をご存知と思います。

半導体レーザーは幾つかある歯科用レーザーの中では最も私の臨床スタイルに合っており、Er:YAGレーザーと共に世界的に普及しているレーザーです。しかしなぜか日本では鳴かず飛ばずで、炭酸ガスレーザーにばかり人気が集まっています。このガラパゴス化の理由はまるで判りません、、、

過去にPanasonicがそこそこ良い半導体レーザーを販売し、古参のオサダ社と競合する構図となるはずだったのですが、ご存知のとおりPanasonicは家電不況の影響をまともに受け、事業整理のために歯科用レーザーから完全に撤退してしまいました。同製品は一時期GC社がOEMとして狙っていましたが、行政が認可に消極的で待ちきれずに白紙となってしまった経緯がありました。

しかしここに来て流れが変わってきました。ついに新型の半導体レーザーの認可が降りたのです。その名も「Cute」です。


発売元は富士SLIという、聞いたことのない会社です。所在地は山梨、、、ここでピンときた人がいたら、かなりレーザーに詳しい人です。そう、20年ほど前にパワーパルスレーザーというかなり極端なピークパワーを誇るNd:YAGレーザーを出荷していた、今は無きSLTジャパン社と社名が似ており、そして山梨、、、

聞けば、会社の出資者には共通の方がおられるそう、レーザーに対する情熱は消えていなかったのです。素晴らしい!

さて製品ですが、見た目がキュートかどうかは微妙ですが、ベースはすでに獣医科用に出荷していた980nm 10W の機器を、歯科用に810nm 7Wに載せ替えてきたとの事です。


操作はタッチパネル、下のiPodのようなスイッチでも操作できるのですが、コレいらないですよね?何のためにあるのか分かりませんが、設計者の趣味なのでしょう。

さてスペックですが、ありがたい事にこの装置は断続波の設定を「出力時間 1m秒・休止時間 1000m秒」という極端な設定にまでできるようになっています。ですから7wくらい出ないと使い物になりません。連続波より、断続波の方が明らかに痛みがなく低侵襲なのです。


側面は当然の事ながら保安基準を満たす設計です。今となっては形骸化したものですが、これは仕方がありません。


背面はこんな感じで、表示を見ると中国の企業らしき名称が貼られています。製造は中国である事は間違い無いでしょう。

それから本品はバッテリーパック仕様となっており、下部が取り外し式のバッテリーになっています。ただし外すと機械は机に置いても倒れてしまいます。なぜ?

ファイバーは巻き取り式のリールが付いてますが、これは掃除機の電源コードのように引っ張れるものではありません。巻きつけるものです。無理に引っ張るとリールが回転し、ファイバーは根元から折れそうになりますので、注意が必要です。


製品名はあっけないステッカーです。今後のOEMも考慮しての簡素化でしょうか?せっかくの高額製品なのですから、もっとワクワクするようなカッコよさが欲しいと思うのは私だけ?

ハンドピースは海外の半導体レーザーでよくある、スリーブを装着する仕様で、使用後に破棄します。ファイバーは通常の長いタイプで、こちらも使用後に切断して行きます。

ここまで読むと、まぁ海外で普及している平凡な半導体レーザーと同じかなと思います。しかしCuteには、大きな隠し球があったのです。それは「加工ポッド」が付属している事です。

SLTジャパン社の流れを汲む同社は、半導体レーザーでもしっかりこれを用意していたのです。実はこれは製品カタログにもサイトにも掲載されてない「雑貨扱い」のものなのですが、簡単に言うとファイバーチップ先端を熱加工し、先端そのものをレーザーにより発熱体とするための粘土のようなものです。

半導体レーザーはチップ先端の状態で発熱量が刻一刻と変化するので、なんらかの加工を最初に行う必要があります。それをワインのコルクでやる人もいれば、私のように黒マジックや墨を使ったりする人もいます。

しかし基本的には先端だけが発熱体となるために点状の切開となりやすく、出力も集中しすぎて、過剰照射になりやすいのが欠点です。

この加工ポッドを使うと、ファイバーの先端から2~3mmは発熱体となる加工が手軽にできるので、過去パワーパルスの時代にはこれだけを欲しがる人もいたほどです。

今回は富士SLIさんのご好意で一週間ほど使用ささていただきましたが、装置の感触は概ね良好、ただしこの加工ポッドでの加工特性がよく把握できず、使用勘を掴むまでには至りませんでした。

この加工ポッドを有効に使う事で、オサダ社のLightSirge Square5のサファイア製チップのような抜群の使い勝手とまでは行かないでしょうが、相当近いところまでできるような感じです。定価¥1,800,000、実売¥1,600,000くらいとの事を考えると、かなり競争力のある装置と言えるでしょう。

しかし世界を見ると、出力を自動制御するあのAltaとは勝負になりません。各社がどのようにしてAltaの性能に追いつくかが課題となります。

そしてさらに、ここに来てさらに新たな半導体レーザーの発売が見えてきました。なんと炭酸ガスレーザーの売り込みにあれほど熱心だったヨシダ社が、東京デンタルショーで開発中の新型炭酸ガスレーザーと共に、共通のデザインの半導体レーザーも参考出品していきました。


どうやらハンドピースに照射スイッチがあるようですね。炭酸ガスレーザーと半導体レーザーを共用する事はちょっと疑問なのですが、しかし最大勢力の参入という事で非常に興味があります。

他の大手もおそらく半導体レーザーのプロトタイプくらいは当然持っていると思いますので、あとはトップがいつゴーザインを出すかです。半導体レーザーを出すという事は、他のレーザーが売れなくなる可能性があり、投入のタイミングを見ていたのでしょうが、ヨシダ社の決断は大手では一番で素晴らしいと思います。しかし弱小メーカーが先にチャレンジしたという事では、遅すぎたとも思います。

さてこのブログで再三とりあげているように、レーザーは大学教育がなく、メーカー主導の短絡的な知識だけで臨床に普及していった経緯があり、いまだに改善されていません。今回新たな勢力が登場し、興味を持つ先生が増えると思います。しかし売りたいばかりに安易な販売がされないか、それにより事故が起きないか大変心配です。

日本ではやっと半導体レーザーの夜明け迫ってきたような感触があります。しかしメーカーは安易な売り方をせず、安全許育をしっかりやった上で解っている人にだけ販売してもらいたい、特に大手は過去自分たちの売り方がどうだったかを振り返り、社員教育を徹底的にやって責任を持って販売してもらいたいものです。

レーザーは買ってすぐ簡単に結果が出せるような装置ではありません。歯科医師の先生方も営業マンの口に乗らず、理論や安全管理ができた上で臨床応用してもらいたいものです。

しかししかし、これからの半導体レーザーの普及、非常に楽しみです。

なお日本レーザー歯学会では11月29日(日)東京医科歯科大学にて教育研修会を行います。私も委員の一人として裏方をやっています。このような機会を逃さず、多くの先生方にレーザーを安全に有効に使って行ってもらいたいと願っています。