第12回顕微鏡歯科学会の話題の続きです。
先に書いたように、今回の目玉は厚労省歯科管理官の先生をお招きし、この4月から導入された歯根尖切除術に対するCTと顕微鏡への点数加算についてのお話です。
すでに一部の大学病院で条件付き実施されていた「先進医療」というものを、一般の保険診療に降ろして来た形となりました。CTと顕微鏡の併用は非常に効果が高い事が解っており、厚労省としても積極的に動いていたようです。時代はすでにCTと顕微鏡なしの歯根尖切除は考えられないという事です。しかし事は簡単ではありません。予想通り、点数はあまりに低すぎます。
現状を見てみれば、レーザーなどすでに導入されたものも非常に低い評価でしかありません。やはり日本の健康保険での歯科医療は、どれだけ努力してもとうていコストが回収できるレベルにないという事です。
興味深い事は、管理官の先生が「歯科は医科に比べ、先進医療が導入しにくい状況にある」と2回おっしゃった事です。日本の歯科保険医療の遅れを認めているという事です。
誰もが思うように歯根尖切除に少し点数加算するよりも、ラバーダムを必須とするなど現状の歯内治療のレベルをアップをさせてもらう方がよほど国民利益になるはずなのですが、残念ながらそのような発想は国には有りません。
私は先進医療導入を優先させる事には予算的にも問題があると思います。限られた予算内でやりくりするという事は、他の点数が削減されるという事だからです。
同じやるならばまず既存の医療技術(この場合は根菅治療)を少しでも世界基準に近づける事が必要で、その結果歯根尖切除術の適応となる患者さんを一人でも減らす事が健康保険の責務だと思うのです。
予算が¥6,500増えたところで、救われる人がどれほどおられるのか私には解りません。また一度このような点数がついた以上、今後常識的なレベルに改訂される事は考えらなくなりました。
これは「低医療費政策」のツケを国民一人一人が自覚しなくてはならない時代である事を再認識した瞬間でもあったわけです。
結論として「予防」が一番、そして患者さんには「自衛」と「医療の選択眼(≒リテラシー)」を高く保つ事が重要…って、今までと何ら変わる事はない、という事になります。
さて続いては歯科衛生士セッションのお話です。