3月30日(土)の日本顕微鏡歯科学会シンポジウム・1に向け、診療の合間を縫ってプレゼンを造っています。
実はこの演題は大会長の北村先生からいただいたもので、私が考えたものではありません。私は先輩なので二つ返事で「いいよ〜」と言ってしまったのですが、よくよく考えるととっても難しい演題です。顕微鏡とCTは確かに併用しているが、はたして「融合」までしてるのだろうか?
で、ずーーっといろいろ考えて、以下のような抄録を大会のサイトにアップしています。超高名な先生二人の後で何を話すか、ちょっとたいへんなのですが(汗…)ぜひ聴きにきてくださいね!
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顕微鏡とCTの融合は一般歯科診療に何をもたらしたか?
東京都中央区開業 吉田格
「従来見る事ができなかった現実を明らかにした」、顕微鏡とCTに最も共通している点はここにあると思う。
CTは診断に新たな基準を与え、顕微鏡はまた別の方向から診断を変えた。両者の融合は治療方針や術式に変革をもたらし、結果として適応症は拡大し難症例に新たな路が開ける。歯科医療の現実は大きく変わり、誰もが夢のような治療を自分のものにしたいと、明日の臨床に思いを馳せたのではないだろうか。
しかしその実現には三つのハードルがあるように思う。一つ目は使いこなす事ができるかだ。特に顕微鏡は使いこなせず手放す先生もおられる事からも解るように、誰もが有効に使えるようになれるわけではないようである。
二つ目は時間である。一般に言われている顕微鏡下での治療時間の延長に加え、録画データーやCTの膨大な情報を整理し、患者にもスタッフにも客観的で解りやすいデーターを共有するにはそれなりの時間が必要である。すなわち忙しい臨床家にさらなる労力を要求する。
三つ目はコストである。残念ながら我々の夢を後押しするべき医療制度が大きく変わる事は期待できず、高額機器導入による経営リスクは十分考慮しなくてはならない。
以上のように顕微鏡とCTの出現は、医療に対する「夢」と、経営という「現実」を高度にバランスさせるセンスが要求される時代をもたらしたという事かもしれない。言い換えれば、夢の実現により経営リスクを回避できるだけの技術や表現力も含めた経営手腕がなければ、結果として情報や技術を患者利益として還元することはできない。そして演者はその狭間で試行錯誤を繰り返している者の一人である。
本シンポジウムではそんな演者が行ってきた症例の一端を供覧いただき、かろうじて経営リスクを回避しながらも手にしたささやかな夢の実現過程や今後の課題についてお話したい。
【 供覧症例 】埋伏知歯矯正移動・仮骨延長術・自家歯牙移植・歯槽頂からの上顎洞底挙上・インプラント周囲炎