このBlog:歯界良好でも再三とりあげているように、日本はレーザー教育がまったく行われていないまま、機械だけが普及してしまいました。そしてそれを放置したまま健康保険に収載されてしまい、順序が完全に逆になっています。
工業でレーザーを使う人なら誰もがレーザーとは危険なものである事を知っており、できるだけ人に当たらないように安全教育訓練がなされています。
ところが歯科医療はモノではなく人に当てるわけですから、本質的に危険なわけです。さらにそこに教育がないということが、どれほど異常かお解りいただけるでしょう。
歯科用レーザー普及のしかたはインプラントによく似ており、メーカー主導の簡単な講習会だけで導入するケースがほぼ100%です。これでは何が起きるかわかりません。
私はたまたま学会で研修委員会というところに入れてもらいました。アメリカまで行って認定医をとってきたこともあり、何か貢献できないかとボランティアで参加しています。
ちょっとフライングなのですが、私のレーザー安全講習会の抄録を下に記します。もうお一方の先生もすばらしいお話をされますので、全レーザーデンティストに聴いていただきたい内容です。
神戸でお会いいたしましょう!
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日本レーザー歯学会 第5回歯科用レーザー安全講習会
歯科用レーザーの臨床応用とその基礎と安全・2
レーザー治療を成功に導くために
東京都開業 吉田格
レーザー治療に限った話ではないが、臨床を成功に導くための条件とは「目的を明確化する・理論的に正しい・過信しない」の3点に集約されると思う。
レーザー治療において「目的を明確化する」とは切開・蒸散・疼痛緩和などの結果だけではなく、何に作用させせどのような結果を導きたいのかという部分からはっきりさせておくことである。
またなぜレーザーを用いるのか、その優先順位や判断基準も明確化が必要であり、ただレーザーを持っているから使ってみたという漠然とした動機であってはならない。
そのためには当然「理論的に正しい」という基礎が前提にあるはずだが、レーザーについて大学教育を受ける機会がほとんどない我国の歯科医師は最初から大きな問題を抱えていることになる。そのような状況下でレーザ治療が保険収載された事に危惧するのは私だけではないと思う。
そして最後の「過信しない」は、「平常心で臨む」あるいは「誤った情報に振り回されない」と言い換えてもよいかもしれない。魔法の光のように言われた時代はとうに去り、夢を語りつつも現実を直視する強い意思が必要である。
昨今の口腔インプラント治療に対するマスコミ報道を見るまでもなく、医療の質や安全に対する取り組みはすでに衆目の管理下にあると言って良い。我々はインプラントにまつわるトラブルを他山の石とすべきである。
今回このような場を与えられた事を機に改めてレーザー治療を成功に導くために必要な条件について整理し、レーザー治療従事者は何をすべきかを考えてみたい。