2009年3月6日金曜日

12年前の洗濯機が教える、日欧の考え方の違い

吉田歯科診療室で動いている洗濯機は、今はやりのドラム型です。と言っても買ったのは12年前の1997年、その当時はまだ市場にドラム型洗濯機はほとんどなく、珍しい買い物だったようです。

開業当日から毎日大量のタオルや白衣をさばいているこの働き者が、先日突如乾燥がまったくできなくなりました。「マズイ、今度こそダメか・・・」

実はこの洗濯機が壊れたのはこれで4回目。またまた修理屋さんのお世話になったわけですが、その修理屋さんと話をしているとどうやらこの洗濯機、成り立ちにワケがあり、いろいろ考えさせられます。



今なぜドラム型洗濯機が売れているのかはわかりませんが、当時の私にはこれでなくてはならない理由がありました。

都心の診療室とはどうしても手狭で、レイアウトに苦労します。普通の洗濯機は上にモノは置けず、デッドスペースになるか乾燥機が占めてしまいます。

そこで目を付けたのがドラム型洗濯機。おかげで上には別の機械を置く事ができ、省スペース化に大いに役立ったのです。しかしこの洗濯機がキッチリ収まるスペースで周囲を造作したのが後々仇となってしまいました。

実は2回目の壊れた時に買い替えを決め、新機種を搬入までした事がありました。ところがいざ設置してみると場所の関係で排水管が入らず、泣く泣くキャンセルし電気屋さんに持って返っていただいた事がありました(電気屋さんゴメンナサイ)。つまり吉田歯科診療室にはこの洗濯機しか設置できないことが判明したのでした。しまった!

こうなったらもう意地でも直すしかありません。けっこうな金額を払い修理し続けて現在に至っています。何か損しているな〜

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さて12年物ともなると、部品在庫がなければさすがに買い替えです。ということは周囲の造作を全部壊して作り直し、、、それはやりたくないなぁと心配しつつ修理屋さんに聞くと「あぁ、この機種は大丈夫です。部品は無くなりませんョ」。エッ、どういう意味ですか?

この洗濯機はシャープの ES-E60 という国産なのですが、実は中身はスウェーデンのエレクトロラックスのもので、国産なのは外側だけなのだそうです。

しかもその中身となった製品は今も販売し続けており、部品はまだ暫くはなくならないのだそうです。

エレクトロラックス社は大型洗濯機メーカーとしては老舗で、コインランドリーなどに行くとここの製品が多いそうです。12年前、日本のメーカーはどこもドラム型洗濯機のノウハウがなく、当時シャープがエレクトロラックス社の中身を利用し発売したのが私が使っているものなのだそうです。

修理中に中身を見せてもらうと、なんと骨組みにコンクリートが使われていたりと尋常ではありません。そのせいで重さが100Kgを超えているのだそうです。

その後シャープはこの製品からいろいろな事を学び、今日の製品に活かしているのだそうです。私は「なるほどなぁ」と修理屋さんの話しにしばし感心していたのでした。

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それにしてもこの日欧の考え方の差は何でしょう?頻繁にモデルチェンジを繰り返し買い替えを促す日本型と、武骨なまでに作り込み修理しながら長い間使い続けてもらおうとするヨーロッパ型。

日本の新しい機種は確かに静かで省エネで、最近は除菌やシワとりまでやってのけます。エレクトロラックス社の製品にはそんなものはありません。

今まで修理代はそこそこかかってしまいましたが、廃棄ゴミも出さず愛着を持って長い間使って行く事の価値を感じる事ができます。12年間使え、まだこの先も使えるようで良かったなと安心します。

その一方で日本製品はすごく進化しています。今新しく買おうとするとエレクトロラックス社の優位性は、ブランド力やデザイン以外に何があるのかは解りません。家電とは日本人にとって技術を追求しつづけるものなのでしょう。そして日本人はすべての基準がそこにあるように感じているように思います。新しい物は良いと。

歯の治療はある意味物造りと似ています。吉田歯科診療室の考え方は、良い物を時間をかけて造り、メンテナンスしながら長い時間使って行くというものです。これをヨーロッパの古い街並みなぞらえて患者さんにお話しています。しかし皆様最初はピンと来ないようです。

新しい歯の治療技術が登場しても、それは洗濯機のような静かさも省エネも関係ありません。除菌能力などあればいいなと思いますが、まず実現しないでしょう。エレクトロラックスの洗濯機のように武骨なまでに造り上げて行き、メンテをしっかりし壊れても直し何十年と使って行くべきでなのです。

私にはこのあたりの感覚の違いが、日本人が歯の治療を安易に考えている事ととてもよくリンクしているなと思うのです。あとどれくらいこの洗濯機を使うかは解りませんが、買い替えをしなくて良かったなと思うのです。もう少しこの洗濯機とつきあって行こうと思います。